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「新型コロナに対するmRNAワクチン、ブースター試験の位置づけは?」

2021/06/27


TONOZUKAです。


新型コロナに対するmRNAワクチン、ブースター試験の位置づけは?

以下引用

 新型コロナウイルス感染症の発症予防として世界中で接種が進むmRNAワクチン。先行した米Pfizer社/ドイツBioNTech社のBNT162b2と米Moderna社のmRNA-1273については、ブースター試験の検討が進んでいる。通常の2回接種から半年後に3回目の追加接種を行って有効性を検証するものだ。
 2021年5月5日、米Moderna社は、同社が開発した新型コロナワクチンmRNA-1273もしくはベータ変異株(南ア株、B.1.351)のS蛋白質の配列に対応するよう一部改変したmRNA-1273.351を使ったブースター試験の結果、有望な結果が得られたと発表した(5月6日にはプレプリントサーバーであるMedRxivでも公開)。

 Moderna社の新型コロナワクチンmRNA-1273は、およそ600人を対象とした第2相試験、3万人を対象とした第3相試験で2回接種による発症予防効果が示されている。ブースター試験とは、この2つの臨床試験に参加した一部の患者を対象に、2回目接種から5.6~7.5カ月後に、3回目としてmRNA-1273もしくはmRNA-1273.351を追加接種し、ベータ株、ガンマ株(ブラジル株、P.1)に対する中和抗体価を検討するものだ。

 その結果、mRNA-1273の2回接種からおよそ半年後、従来株に対する抗体価は低下していたが、それ以上にベータ株、ガンマ株に対する中和抗体価は低下していた。しかし、mRNA-1273もしくはmRNA1273.351の追加接種により、追加接種前に比べてベータ株やガンマ株に対する中和抗体価が20~40倍に高まることが確認された。mRNA-1273による追加接種でも変異株に対する抗体価は上昇しているが、mRNA-1273.351による追加接種による変異株に対する中和抗体価の上昇は、mRNA-1273の2回接種後の従来株に対する抗体価と同等まで上昇すると考えられた。Moderna社ではmRNA-1273とmRNA-1273.351を1対1で混ぜた多価ワクチンmRNA1273.211の開発を進めているほか、mRNA-1273.351について米国国立衛生研究所(NIH)に提供し、傘下の国立アレルギー感染症研究所(NIAID)が第1相試験を進めているところだ。

 米Pfizer社/ドイツBioNTech社の新型コロナワクチンBNT162b2については、2021年5月にカタールからBNT162b2の接種効果が報告され、2回接種から14日後以降のB.1.1.7株(アルファ株、いわゆる英国株)に対する有効性は89.5%だったが、ベータ株に対する有効性は75.0%と、アルファ株よりも低い可能性が示唆されている。なお、重症化や死亡を抑制する効果は変わらず、97.4%と高い効果(いずれの株での発症による重症化・死亡の抑制効果)が確認されている(NEJM,DOI: 10.1056/NEJMc2104974)。両社は2021年2月、このBNT162b2の2回接種から6~12カ月後にブースターワクチンを追加接種する臨床試験を開始すると発表している。この試験では、変異株に対応するBNT162ba.B.1.351を追加接種するケースも含まれているようだ。

 ワクチン接種が進んでいる米国においては、米疾病対策センター(CDC)が、米国におけるワクチンを2回接種した後のCOVID-19感染(ワクチンブレークスルー感染)による入院・死亡例の蓄積を開始しており、6月7日時点で1回接種した1億3900万人のうち入院・死亡となった3459例がCDCに報告されている(CDCのサイト)。

 新型コロナに対するmRNAワクチンは非常に高い発症予防効果が証明され、少なくとも2回接種の6カ月後まで中和抗体価が維持されることは確認されているが、さらにその先の予防効果は今後の検証を待つ必要がある。また、一部の変異株に対しては中和活性が低いことも指摘されている。ワクチン接種によって多くの人に免疫が付与された後はどうなっていくのか。今後、2回接種した人におけるCOVID-19感染例の発生動向の追跡と追加接種により感染例がどう推移するかを検証するブースター試験の結果が注目される。



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