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元統合幕僚長河野克俊講演会

 日本会議兵庫第24回総会・講演会で行われた河野克俊講演会に行ってきた。冒頭の総会は安倍晋三リスペクトの感が強く、少々薄気味悪かったが、河野克俊の講演は非常に有意義なものであった。
 安倍政権下で統合幕僚長を務めた方なので、多少の安倍リスペクトはあったが、総会の時ほど違和感はなく、むしろ安倍がシビリアン・コントロールの意味をよく理解し政治家と自衛隊の垣根をなくし距離を縮めた功績を改めて知らされた。以下、講演会で印象的だった事。
 自衛隊と旧日本軍には継続性がないので、陸海軍の廃止(昭和20年)から自衛隊発足(昭和29年)の間、日本には断絶が存在する。それは遺骨収集が防衛省ではなく厚労省が戦死者遺族に対する厚生事業となっている事に現れている。一方アメリカでは遺骨収集は国防総省が戦友を一人残らず祖国に連れ帰るという方針でやっている。
 ロシアが大勢の予想に反してウクライナで上手くいかないのは、プーチンやFSBの見通しの甘さとロシアの指揮系統が統一されていないから。ワグネル以外にも軍事会社は存在するが指揮系統はバラバラ。特別軍事作戦という建前があるので正規軍を投入しづらい状況になっている。さらに完全勝利が望めないがゆえに戦争を止められなくなっておりNATOは長期戦を見据えている。
 核不拡散体制(NPT)は、5つの核保有国が大人だから成立したが、事実上崩壊しており、世界は核を恐れて何もしないアメリカを見ている。日本はロシア・中国・北朝鮮という核保有の専制国家と対峙しなければならない。
 非核三原則や核廃絶は大切な事だが、核の脅威から国や国民を守る事も政治家の責任。日本唯一の核対策はアメリカの核であるが、ウクライナ戦争を見る限りそれが信用できるかどうか疑問である。これにより韓国では独自の核武装論が盛り上がりアメリカを慌てさせた。
 毛沢東が中国を建国した時に台湾を攻めなかったのは海軍がなかったから。鄧小平の頃までは中国は大陸国家であり海軍に関心はなかったが、その間にウイグル・チベットに対する侵攻や大躍進政策(失敗)や文化大革命が行われ多くの犠牲を出した。その後、鄧小平による改革開放路線で経済改革が行われ欧米は期待したが見通しが甘く、経済的に発展した中国による海軍力の強化と海洋進出を招いた。経済的に発展した国家が海洋進出するのは歴史上の必然である。
 習近平はアメリカと対峙しなければならない中国を率いなければならず、また自身の4期目以降の政権基盤固めをする必要があり、そのポイントは香港・台湾・尖閣である。すでに香港は陥落しており、尖閣はアメリカが介入するので手を出しにくい事から、当座の目標は台湾となる。次の台湾総統選挙から、次の全人代あたりの間に行動を起こす可能性が高い。
 自衛隊の違憲論・合憲論はどちらも間違い。違憲だから解散というのは国民がついてこないし、将来的にはというのは憲法違反になる。合憲論も新型ミサイルや空母やイージス艦は最低限の装備の範疇を超えているので間違い。ゆえに憲法改正が必要である。また9条改正が進まないのは、共産・社民・立民の3党が反対しているからではなく、9条があっても自衛隊はちゃんと活動できているから「まあいいじゃないか」というまあいいじゃないか保守がいるから。姑息な憲法改正ではなく国家の形としての憲法改正をとして話を締めくくった。
 他にも、金正恩は中国を信用しておらず在韓米軍の駐留を望んでいる。理由は在韓米軍がなければ中国が朝鮮半島を制圧するから。自衛隊は警察組織の延長線上という扱いになっているが、国防というものはあらゆる手段を用いなければならないという話もあった。わかりやすく丁寧に(若干寒い)ユーモアも交えながら、2時間近い時間を感じさせず熱をもって聞いた講演であった。

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