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#0099【不動産投資】不動産賃貸事業と財務諸表

不動産投資をはじめて戸数が少ないうちは文字どおり不動産という対象に投資したという感覚で株式投資と同じように金融商品を買ったのに近い管理でも足りると思います。しかし、所有する戸数が増え、規模が拡大してくると、対内的には決算や税務申告をするための管理、対外的には金融機関や税務署などの視点でも数字を見て、次の打ち手を考えていくことが求められます。よく言われることですが、もはや不動産投資と言っても単なる「投資」ではなく不動産賃貸「事業」としての感覚が近くなります。不動産賃貸事業を行っていく上で不可欠な財務データの視点について説明します。なお、法人の財務データを前提に説明しますが、個人の方であっても損益計算書は収支計算書と読み替えれば同じことが当てはまります。

【損益計算書】
会計上の期間損益計算を行うことです。会計の数字は税務申告を行ううえでの土台となります。なぜならば、税務申告は会計帳簿の記録に基づき、税務上の調整をして行われるからです。損益計算書は1年間の経営成績を報告する財務諸表(財務データ)です。不動産賃貸事業の事業規模はトップラインの賃料収入(売上)の推移が重要です。段階損益としては営業利益、経常利益、税引き後の当期純利益が安定して出ているか、意識しながら経営をしていくことが重要です。過度に経費を使って損失になっていたりすると印象はよくないので、もしそういった法人は注意してみて下さい。

【貸借対照表】
これは一時点の財政状態を表す財務諸表です。複数時点の情報があれば増減比較ができます。まずは借方の資産の部です。金融機関が見ているのは、総資産がというよりも、内容です。換金性のある現預金の残高、有形固定資産のうち、担保性の高い資産、具体的には土地を保有しているかです。区分所有マンションも評価されない訳ではないですが、投資家の皆さんが思っている以上に評価は低いです。ローンでたくさん区分所有マンションを所有されている方は資産の評価が低く、いわゆる信用毀損の状態にあることが多く、所有物件が区分所有マンションだけの場合、債務超過状態のことがほとんどです。価格などでのサラリーマンの不動産投資の取り組みやすさは区分所有マンションは高いですが、あとあと、一棟マンションを買おうとしたら金融機関から門前払いを受けたという話を聞いたことがあります。純資産の部を実態ベースで見られていることを意識するといいかもしれません。
貸方の負債の部については借入の内容を金融機関はみます。担保評価に対して借入余力があるか、担保に先順位の抵当権者がいるか、金利水準や返済期間、毎月の返済額、返済方法なども見られます。

【キャッシュフロー(計算書)】
これはプライベートカンパニーであれば作成することはないと思いますが、考え方は把握しておく必要があると思います。たまに賃料収入から直接の運営経費、借入の返済を引いてキャッシュフローがいくらいくら出ていると言っている方を見かけます。税金費用の支払いまで織り込んで計算していないと、意外とお金が増えていないことに気づいていない方がいます。法人から個人に給与や役員報酬を支払っている場合は、社会保険料なども考慮すべきです。冒頭にも問題提起したように、不動産賃貸「事業」であることを意識するといいと考えます。

【最後に】
不動産投資の本をたくさん読んでいると、会計、税務、経営の知識が重要と説いている投資家さんが意外と多いのは今回のテーマのようなことが背景にあると思います。皆さんも是非、知らないことが出てきたら、吸収していくよう心がけてみて下さい。最後までお読み頂きありがとうございました。

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