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悩む前に動いてみる
みなさん、おはようございます。
kindle作家のTAKAYUKIでございます☆彡
過日。僕はお昼休みにチンラを食べに行った。
「嗚呼…久しぶりの親子丼に感謝します」
なんて普段言わない事まで言いながら、僕は親子丼を完食しました。
会社に向かって歩いていると、小さな公園のベンチに後輩の鯖木くんがうつむいて座っていた。
「さばきくん、昼休みだというのにしょんぼりして、一体全体どうしたんだい? チンラを食べ過ぎたのかい?」
僕は鯖木くんの隣に腰をおろした。
すると鯖木くんが顔をあげた。
「嗚呼…TAKAYUKIさんでしたか。実はまだチンラ………ランチは食べてません。食欲が無くて」
いつもの鯖木くんの声ではなく、声量も80代のおじいちゃんみたいだ。
「鯖木くん、悩んだところで全ては天命。答えは天のみ知っているんだョ。だから悩むだけ時間の無駄なんだョ。僕はネ、そう学んできたんだ。とは言っても、本当に深刻な悩みだったら話は別だけどネ」
そう言った僕はベンチから腰を上げた。すぐそばに自動販売機があったので、冷たい微糖の缶コーヒーを買って再び鯖木くんの隣に腰をおろした。
「空腹時にコーヒーを飲むと胃を悪くするので、あとで頂きます。すみません、気を使っていただいて」
昼休みもあと15分しかない。あと5分で鯖木くんをいつもの状態に戻せるのだろうか。僕は話し上手でも聞き上手でもない。いつも平々凡々と揺曳して生きているのだ。身の丈以上の悩みだった場合、僕にはどうすることもできない。その時は、そっと立ち上がって、しれっと会社に戻るしかあるまい。
すると、鯖木くんが手に持っていたスマートフォンに視線を落とした。
「実はTAKAYUKIさんの言う通りで、僕はとても悩んでいます。相談に乗ってもらってもいいですかあ」
今から? 僕は単純にそう思った。だからネ、鯖木くん。お昼休みはあと15分を切っているんだョ。時間管理も仕事の一環なんだョ。
「どうぞ。僕が天に代わって答えようではないか!」
僕は微糖の缶コーヒーを開けると、一気に飲み干した。
「あ、ありがとうございます。実は僕、好きな子がいまして………」
要約すると、鯖木くんは先週の休日に友達たちとディナーを楽しんでいた。すると奥の席で3人組の女性たちもディナーを楽しんでいた。そこで鯖木くんたちが声をかけて、結果3対3の合コンみたいな感じになった。
結果、鯖木くんは目の前に座っていた鯵子さんに一目惚れをしてしまったのである。
それで今、鯖木くんは鯵子さんをデートに誘おうか迷っているのであった。
「なるほどね。まあ老婆心ながら言えば簡単だよ。今すぐ鯵子さんに電話をすればそれで解決じゃないか」
僕の返答に、鯖木くんが小さなため息をついた。
「TAKAYUKIさん、事はそう簡単ではないのです。電話なんてできませんョ。だからこうしてメールで誘おうとしているんです」
ちょっとだけ、鯖木くんが不貞腐れた。これはこれで可愛い奴だと僕は思う。
「そうか。ちょっとその文面を見せてくれるか?」
鯖木くんが僕にスマートフォンを渡してくれた。僕と同じアンドロイドだ。画面の中にはびっしりと文字が書かれていた。僕はkindle作家として鯖木くんの恋文を黙読した。およそ1000文字は超えているだろうその恋文から、僕は確かに鯖木くんの熱量を感じ、それが僕にも伝染した。
「鯖木くん、君はいまフリーなのか?」
「モチロンですよ。だから彼女が欲しいんです」
「本当だな?」
「本当です。マジですから!」
「最後の文面を訂正しよう。食事に誘うだけでは具体性に欠ける。こうしよう。今度、美味しいパスタ屋があるので行きませんか?って、書いてくれるかい?」
僕の言葉に対し、鯖木くんは素直に従ってくれた。鯖木くんは両手を使ってあっという間に書き込むと、僕にスマートフォンを渡してくれた。
これはもう、僕に絶大なる信頼をおいている証拠ではないか。
「鯖木くん、悩む時間ほど、人生に於いて無駄なことは無いんだよ。それを今、僕が証明してみせるから」
そう言うと僕は、先ほど鯖木くんにアドバイスして書いてくれた、「今度、美味しいパスタ屋があるので行きませんか?」の文面以外をデリートした。
そして送信ボタンを押してから、鯖木くんにスマートフォンの画面を見せた。
「ち、ちょっと、TAKAYUKIさん。何をしたんですか? ええええええッ。メール送ったんですか? いやいやいや、あり得ない。嘘でしょ。ってか、もう既読がついたじゃん。ハハッ。TAKAYUKIさんも見て下さいョ。確かに既読がついていますよね?」
高低差の激しいテンションとなった鯖木くん。先ほどの悩みはどこへやら。満面の笑みを浮かべてスマートフォンの画面をガン見している。
ここで僕は最後の手段に出た。
通話ボタンを押したのである。
「ああああああッ…TAKAYUKIさん、そ、それはダメですよォ」
鯖木くんがそう言った時、通話開始のタイマーが画面に表示された。
「あッ………。こ、こんにちは。鯖木ですけど、鯵子さん、この前は楽しかったです。あの………メール見ました? そうなんです、美味しいパスタ屋を発見したので、よかったらと思いまして。はい。はい。マジですか? ぢゃあ、あとで空いている日を教えてください。はい。お疲れ様です」
電話を切った鯖木くんは、いつもの鯖木くんに戻っていた。
「ちょっとTAKAYUKIさん、マジで勘弁してくださいョ。ちょー焦ったじゃないですかあ」
鯖木くんの額に汗がにじんでいる。
「だから言ったろ? 悩むだけ時間の無駄なんだ。悩む前に行動に移せばそれで万事うまくいくんだョ。ヨシ、会社に戻るゾ」
僕と鯖木くんは早歩きで会社に戻ります。
「ところでTAKAYUKIさん、美味しいパスタ屋はどこにあるんですかあ」
「知らん。急ぐぞ、鯖木くん」
最終的に僕と鯖木くんは、ダッシュをして何とか間に合いましたとサ。
【了】
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