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35歳のNZ留学【ミュージカルふたつ】

クラスメイトの友達に「ねぇこれ一緒に見に行かない?」と誘われた。
携帯の画面には、Kinky Bootsと書いてある。日本でも何度か上演されたブロードウェイミュージカル、キンキーブーツである。返事はもちろんイエスしかない。行くと言うと友達はすぐにネットでチケットを購入し、直後メールでQRコードが送られてきた。
近年のテクノロジーの進歩についてくのも楽ではない。便利でもありそれが苦手な人にとっては不便でもある。今回は友達がチケットを取ってくれたおかげで、いとも簡単にチケットを手に入れた。しかも私は現在スチューデントなので、学割が効くのである。すごい。舞台が上演される場所は、オークランド中心部でクイーンストリートにあるシビックシアターという劇場である。外観からして、見上げるほど大きく歴史的な雰囲気が漂っている。文化遺産になっているらしい。普段、入り口のドアは閉ざされているので、中はどんな風になっているのかといつも気になっていた。今回はその場所でNZ版キンキーブーツが見れるのだ。

上演日まではまだ数日あるので、話のあらすじを少し頭に入れておくことにした。何しろ舞台は前編英語。あらすじを知っておけばきっと役に立つはず。

キンキーブーツ。イギリスの紳士靴工場の実話に基づいたストーリー。伝統的な紳士靴工場を営む父親の急逝により後を継ぐことになった息子チャーリー。ふたを開けてみれば店は倒産寸前。経営の手腕もなく悩むチャーリーだったが、ある夜ドラァグ・クイーンのローラと出会う。ローラのショーをみたチャーリーは、ショーで彼女(彼)たちが履いているハイヒールが体重を支えきれないていないことに気づき、キンキーブーツを作ることを思いつく。…
と概ねこんなストーリーである。

いよいよ当日。
劇場の前はたくさんの人でごった返している。
期待が募るなか初めて劇場に入る。途端にその内装にすっかり目を奪われてしまった。私はどこか宮殿にでも来たのだろうか。天井には大きなシャンデリアがあり、壁にはお釈迦様や象の彫刻がある。インドのような感じも受けるが、今までの人生でこんなに立派な建物の中には入ったことがないので何と表現すればいいのやら、言葉も思いつかない。一通り友達たちと写真撮影を済ませ、階段を上り二階へと進む。二階にはバーカウンターがありお酒を買うことができる。ジュースもある。ロビーを見下ろせるテーブル席では、すでにワインを飲みながら談笑する人の姿もあった。私たちは圧倒されっぱなしで何も買わずに客席のある会場に入った。無論、会場に入る際にはQRコードの画面を用意しておき係のお兄さんにさっと見せた。お兄さんが宮殿の遣いの様な格好をしていて素敵だったので、そのお兄さんとのツーショット写真も撮っておいた。

会場もまた立派である。
天井の高いこと…
椅子の一つ一つには何やら紋章が施されているし、
足を伸ばして座れる席まである。
ビール片手に…!
それから車椅子が十分に出入りできる席も。

開演後あっという間の第1部が終わり、英語が分からないなりに楽しむことができている。舞台のセットや演者の表現によって感情や情景がちゃんと伝わってくる。
さて、休憩時間にトイレを済ませなくてはならない。トイレの前には行列。と、一人の女性が列を無視して中へ入って行こうとした。並んでいた一人がそれを止めると、女性はフンっとして迷うことなく男子トイレに入って行った。嫌なムードになり日本人の私には少し緊迫した状況。しかし列のどこかから「She’s gone a man.」(※恐らく)とジョークが聞こえ、列に並ぶ人々の笑いを誘った。
…海外だなぁ。
それにキンキーブーツでは男性が女性を演じているわけだから、彼女は男になってしまった(※私の和訳が正しければ)というジョークはとても秀一だったのではないか、と後になり思った。

第1部を楽しめたことで気が緩んだので、第2部ではアイスを食べながら見ることにした。とてもリッチな味わいの高価なアイスだ。リラックスモードで楽しく観覧し、クライマックスでは拍手喝采、最後はスタンディングオベーションやら叫び声やら大盛況のうちに幕を閉じた。

シビックシアター #kinkyboots

ー番外編ー
ミュージカルの開演は夜7時半。終わったのは10時くらい。急がないと最終のバスに間に合わない。もうあと10分もない。バス停は劇場沿いの急な坂を登り切った先にある。やるしかない。きっと心臓破りの坂よりもずっと急であるその坂をダッシュで駆け上がる。ミュージカルの余韻に浸るのはバスに乗ってからだ。今はとにかく走って走ってこの坂を登らないといけない。あまりにも急で全然前に進まない。とにかく足を前へ!息を切らして坂をやっと登り切ったところで、
あぁ!バス停にバスが来ているのが見える…!
こうなったらプラン変更、バスが人々を乗せ信号で止まっている(であろう)間に次のバス停まで走る。走る走る。走れぇえ!!!!

これが何と成功した。ギリギリのところで間に合った。喉の奥で血の味がする。咳き込み膝は震え、へろへろになりながらシートに座った。
間に合った…

(筆者のひとり言)
ふたつぶんのミュージカルを書こうと思っていたのに、思っていたよりも随分と文が長くなってしまいました。2200字ですって!ふたつのうちのもうひとつ。
それはまた次回に。


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