週刊「我がヂレンマ」<8月12日号>

 暑いだの汗が耐え難いだの、書き記すこの頃にあって、いくらなんでも本を買い過ぎている。
 それはもう暴走も甚だしく、今日も買ってしまった。
 名づけて『ブック・バーサーカー』そのまま過ぎて、失笑、笑止千万。理由を考えれば、たった一つ。本来、8月5日に新しい自転車を購入する予定だったがキャンセルしたのだ。これにより、空気入れを含めて4万円の支出が消えた。
 それが驚くべき書籍代に繋がる。
 昨日と今日で、16,000円。
 阿呆が。
 ど畜生め。
「てやんでえ、こちとら千葉県民よ。宵越しの金は本と決まってらぁ」
 どどん。おあとがよろしいようで。
 後悔はない。
 それにしても私は本当に良い客だ。訪問すれば必ず購入し、冷やかしなどあり得ず、毎回6千円から1万円買っていくのだから。この時期の汗が噴出する時期など、汗を拭き、引くまで待ち、雫の落下による本の濡れを防ぐ気の遣いよう。
 それはそうと今週のコンテンツ。
<メモについての解説と考察>
<購入した書籍の紹介>
<マンデーひとり歌会>
 昼寝明けのぼんやりが残存するなかで書く。
 夕刻。それは夜の足音が耳に入る時間帯。
 洒落たことを書こうとして、それは途絶。もういこう。

<メモについての解説と考察>

「ゴーストライターのゴーストライター」
 書籍や記事、脚本などの代作を生業とする著作家のことである。なお、変名を使い正体を明かさない作品を発表する覆面作家とは異なる。
 の、ゴーストライター。
 これが連なっていくとすれば、誰かが書いた原稿をリレーしていることになる。何故、何の為に。そもそも彼らは人間なのか。知らぬまにゴーストライターになってしまう恐怖。

「佐藤竹善」
 1963年5月5日生まれ。日本のシンガーソングライター、キーボーディスト、音楽プロデューサー。ロックバンド『SING LIKE TALKING』のフロントマンで、ボーカル・ギター・キーボードを担当しており、小田和正との共同ユニットPLUS ONEと塩谷哲とのユニットSALT&SUGARのボーカルでもある。血液型はО型。青森県青森市出身。
 小山田圭吾氏への言及のあったYouTube動画で存在を知る。

「陰間茶屋(かげまちゃや)」
 とは江戸時代中期、元禄(1688‐1704)年間ごろに成立した陰間(男娼の総称)が売春をする居酒屋。料理屋。傾城屋の類。
 京阪など上方では専ら「若衆茶屋」、「若衆宿」と称した。
 陰間茶屋を舞台にした悲喜こもごも、そんな作品があったら読んでみたい。へたな男女よりドロドロしていそうで、当時の男色の扱いも気になる。

「帰還者トーマス」
 機関車トーマスのモジり。戦争から帰還した人にトーマスさんはいたでしょう。そんなタイトルの本もあるかもしれません。だから、何だ。と言われても思い付きであるから、責任はとれない。
 別段巧いわけでもないが、幾らか引っ掛かりがある。しかし、使用することはないと思う。

「田(でん)という名字」
 坂上田村麻呂の子孫、田村忠助が略して田を名のったとされる。ほか中臣鎌足が天智天皇より賜ったことに始まる氏(藤原氏)利仁流、佐伯氏などにもみられる。千葉県、東京都、新潟県、富山県など東日本に多く見られる。
 めずらしい名字。
 下の名前が「次郎」なら「でんじろう」
 科学パフォーマンス、得意そうです。

「お前はすでに殺されている」
 発想のメモ。
 相手は気づいてない模様。幽霊でしょうか。もしくは、人格データがコンピューター上にアップロードされ、肉体は殺され失った<ゴースト>か。
 ショートショートのタイトルにも見える。ただし、死亡についてはバラされているので、頭を捻る必要がある。ここを納得できる形にしないと、単なるでっち上げになってしまう。
 良作と駄作の分岐点は、発想の初期段階で決まるように思う。

「世紀末、バス拾う、乗せていく」
 発想のメモ2。
 砂嵐が吹き荒れ、今にも倒壊の危険のあるビル群、枯れて折れ朽ちた木々、人の気配はなく閑散とした世紀末。痩せこけて、ボロボロの服が頼りなく風に靡き、窪みかけた眼には僅かに生気が残っていた。
 男は、前方に比較的綺麗な路線バスが目に入る――。
 その後、生き残った人々を乗せていく。
 動くはずのないバスに。
 動くはずのない。死後の世界でしょうか。

<購入した書籍の紹介>

「重力の虹[上]」
                         トマス・ピンチョン
                            佐藤良明/訳
『全米図書賞受賞作』

「さいだいの かいぶつが あらわれた_」

『世界文学史の最高峰に屹立する伝説の傑作が
 その真の相貌を現す待望の新訳。』

「一筋の叫びが空を裂いて飛んでくる。」
 V2ロケットが超音速で落ちてくる。突然の死をもたらすナチの新型兵器の恐怖が覆うロンドン、1944年。
 その調査に当たる主人公のスロースロップが作成するのは謎のナンパ地図。やつは予知が出来るのか、それともロケットが呼ばれるのか。
 因果の逆転、探求の始まり。
 キーワードは・・・・・”勃起”!
 ロケットはペニスか。バナナはロケットか。
 歴史小説?科学小説?ミステリ?ポルノ?ギャグ?SF?ファンタジー?
 カテゴリーなど飛び越えて、物理数学工学などほんの序の口、神話に宗教、経済学に心理学、革命に暴力に陰謀史観、セックス・ドラッグ・ロックンロールのカウンター・カルチャーに女装や男色、ボンデージ、フェティッシュ鞭にロリータ超能力やら降霊術、自動書記に怪盗スパイに海賊アナキスト・・・・・
 天才作家の百科全書的な知の坩堝から立ち昇る、「虹」の彼方には何が見えるのか――?

「重力の虹[下]」
                         トマス・ピンチョン
                            佐藤良明/訳
『ピューリッツァー賞受賞拒否作』

「じんるいに ひかりを あたえますか?」

「読解不能」「猥雑」と賞の授与を拒否された
 超問題作の謎を解きほぐす快訳。

「30万語、日本語原稿2,900枚」
 名のある登場人物だけでも400人超の弩級ヘヴィメタル・・・・・・
数百ページを離れて呼応する人物たち、メッセージ。
「ピンチョンの創作姿勢がもたらす『不幸』については記すまでもない。何冊もの文学作品の内容が、複雑に絡んだものを読まなくてはならない。
 しかもこの語り手は物を知りすぎている。
 まるで百科事典が語り手を務めているかのようなところもある。時に語りは散文詩のようになって、一語一語が重くなり多重なイメージが響き合う。
 あまりに長大、あまりに重厚、(言い古されたダジャレを使えば)何回読んでも難解で、何度読んでも難度は落ちない」(解説より)。
 そこで訳者が付したは膨大な註。数は総計2,000超、総文字数で11万字!
 ピンチョン研究の第一人者が渾身の力を振り絞った目から鱗、ハタと膝を打つ7年の訳業、40年の集大成。

「ロボットの夢の都市」
                         ラヴィ・ティドハー
                             茂木健◎訳『世界幻想文学大賞作家が贈る、どこか懐かしい未来のSF物語』

太陽系を巻き込んだ大戦争から数百年
長い眠りから目覚めた戦闘用ロボットと人間たち、
そして1本のバラが、砂漠の街の片隅で出会う・・・・・・

太陽系を巻きこんだ大戦争から数百年。宇宙への脱出を夢見て時間膨張爆弾の殻の買い手を探しているジャンク掘りの少年、それ自体がひとつの街のような移動隊商宿で旅をつづける少年、そして砂漠の巨大都市の片隅で古びた見慣れぬロボットと出会った女性。
 彼らの運命がひとつにより合わさるとき、かつて一夜にしてひとつの都市を滅ぼしたことのある戦闘ロボットが、長い眠りから目覚めて・・・・・。
世界幻想文学大賞作家が贈る、どこか懐かしい未来の、ふしぎなSF物語。

「母を失うこと 太平洋奴隷航路をたどる旅」
                       サイディヤ・ハートマン
                             榎本空/訳
『第十回 日本翻訳大賞受賞!』

歴史が個人の物語になるとき、ソウルを揺さぶる一冊になる
                        ――ブレイディみかこ

かつて多くの奴隷が運ばれた大西洋奴隷航路をたどり、ルーツであるガーナの地を旅した著者が綴る「不在との出会いの物語」。歴史を剥ぎ取られ母を失った人々の声をよみがえらせる、紀行文学の傑作。

わたし、消滅した人々の残余を発見するという目的とともに、ガーナに降り立った。
(…)奴隷制という試練がいかにして始まったのか、理解したかった。いかにしてひとりの少年が綿布二メートル半やラム酒一本と、そしてひとりの女性がかご一杯の宝貝と等価になったのかを、了解したかった。
 類縁と他者を隔てる境界を越えたかった。
 名のない人々の物語を語りたかった――奴隷制の餌食となった人々や、捕囚を免れるために辺鄙な、荒漠とした土地へと追い込まれた人々の物語を。
                       (「プロローグ」より)

「文鳥・夢十夜」
                              夏目漱石
                         カバー装画:加藤隆
                        カバー印刷:錦明印刷
『ヨルシカ×新潮文庫 コラボレーション限定カバー』

『夢十夜』について
夏目漱石の見た描き出した十編。
明治期の新聞に掲載されたこの漱石の夢たちは、時に神秘的に、時に洒脱に、時には怪談的に読み手の心を震わせる名短編集として、今も親しまれ続けている。
                       n‐buna(ヨルシカ)

『新潮文庫の100冊』

「外套・鼻」
                            ゴーゴリ 作
                            平井肇  訳

 ある日、鼻が顔から抜け出してひとり歩きを始めた・・・
 写実主義的筆致で描かれる奇妙きてれるなナンセンス譚『鼻』。
 運命と人に辱められる一人の貧しき下級官吏への限りなき憐憫の情に満ちた『外套』。
 ゴーゴリ(1809‐1852)の名翻訳者として知られる平井肇(1896‐1946)の訳文は、ゴーゴリの魅力を伝えてやまない。

<マンデーひとり歌会>

「五・七・五・七・七」「季語はいらない、使用可」で自由に詠っていく企画です。言葉磨きのため、畑違いの短歌をはじめてどれくらい経っただろう。いちいち調べる気はないが、まぁ、数カ月は経ってるかな。
 効果の実感はない。
 そこそこ楽しいので続けてる、それが現状。どこへ向かおうとしているのか、散っていく隘路。光りの届かない暗闇で、只、呟いているだけの私。
 なんでしょうね、木枯しが吹いてますよ。季節外れの。

〇甲子園白球追いし若者は仲間信じて聖地駆け抜け

〇夏休み そろそろもう終りゆく時の移ろい如何に捉えて

〇大地震 いつか来るけど腹は減る危機感わすれ横臥する部屋

〇君のため隠す本音は誰の為はいよろこんでギリギリダンス

〇閑散と静まり悶え面構え溶かす時間は風と共にね

〇嘘ついた思いはきっと本当で誰かを傷つけ守る夕暮れ

〇僕ひとり都会を歩くアスファルト奥へ行っても終らぬループ

〇いい加減真面目なフリ止めにして 壊す合図でコケるとんちき

〇さわやかに軽やかな日々青い春妄想ですね知らぬが仏

〇打ち砕く希望絶望ハードコア企み知って萎える暇なし

〇怒り湧く暴言坩堝汚いよ口にださない貯まるたんつぼ

〇おきらくにどうも煉獄何もなし虚空みつめて泳げ幻

 尿意をこらえて、あとがき書いてる寒い冷房。
「買っちゃったよ――トマス・ピンチョンの『重力の虹』上下巻」
 自慢は止めて短歌について語って終わろう。
 背中で語ります。
 穴の空いた、チャコールグレーでヨレヨレの、肉屋の白人のTシャツを着た若干肩幅広めのオッサンの。
 何か聞こえましたか。
 聞こえたら幻聴か耳鳴りなんで、病院に行ってください。
『短歌』ってなんでしょうね。よくわかりません。知りたくもないけど。
 知ればルール縛られて、嫌気がさして止めてしまうかも。
 ああもう、あれですよ。頑張りますよ、明日から。
「明日から、とか言い過ぎです」
 言う。表現の自由。
 粗忽(そこつ)で駘蕩(たいとう)たる短歌を詠むのさ。
 上記のやや難しい単語は各自調べてください。また明日。

 


 
 
 
 


 
 
 

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