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私を好きだと言って

自己紹介の延長として。私の忘れられない恋について、書いてみようと思う。

葉山葵々。二十年生きて、恋が実ったことはない。恋人いない歴=年齢。片思い、片思い、片思い。葉山葵々、少しイタイ人間。

片思いを振り返ってみる。想いを告げた恋が二つ。告げなかった恋が三つ。

転校生の男の子に恋をした。小学六年生のとき。
快活な笑顔の彼を好きだと思った。中学一年生のとき。
幼馴染みの彼をなんだか素敵だと思った。中学三年生のとき。
留学生の彼に憧れた。高校一年生のとき。
必修クラス全部一緒の彼を少し良いなと思った。大学一年生のとき。

でも本当は、私はずっと、あの人のことを考えている。
ちょっと癖毛で、目が大きくて、穏やかで、明るくて、私と同じ泣き虫。

小学校三年生のときに出会って、中学校のときは一緒にサックスを吹いて、
別々の高校に進学したら、それからなんとなく疎遠になって。
成人式で久し振りに顔を会わせた。春休みに遊ぼうねと言われたけれど、会えるのかな。

忘れられない、中学校三年間。
涙が出るほどに、胸が苦しくなるほどに、思い出し、考える。

葉山葵々、私は女。私は男の人が好き。恋する彼に触れたいと思い、声を聞くと心が躍り、人並みに未来の想像をしたりする。私は女。私は女である自分が好き。

それなのに、私は彼女のことが忘れられない。

手をつないで歩いたあの道。ハグしたときの温もり。匂い。毎日一緒にいた中学校のあの日々を、五年たっても鮮明に思い出す。

一緒に歩いていると私の手に指を滑り込ませるのはいつも彼女が先だ。彼女の家に遊びに行って、リビングのソファにくっついて座って、私の肩に頭をもたせてくるのは彼女だ。

周りの人はいつでもどこでも一緒にいる私たちを「仲良しなんだね」と言った。


なんでこうなったのか、考えてみる。
思い返せば、中学校生活は辛かった。
部活の顧問とはしょっちゅう喧嘩した。勉強にも悩んだ。

一年生の秋。
私は男子たちに胸を揉みたいとからかわれて、泣いた。
その中には笑顔が好きだと思っていたあの彼もいた。
学年中の問題になった。
普通に「友だち」だった男子はみんな離れていった。葉山さん、ってよそよそしく私を呼ぶようになった。用事があるときだけ。幼馴染みの彼を除いては。
女子はみんな慰めてくれた。心配してくれた。「大丈夫?」「気にしない方が良いよ」って言ってくれた。

彼女は何も言わなかった。
慰めの言葉なんて惨めになるだけだからってこと、彼女は良くわかっていた。

好きには二つの意味があると知った。
その人が好きと、
身体が好き。

私はこの事件を一生忘れない。

考えてみる、彼女とのこと。
思春期真っ只中の“気の迷い”。
あんなことがあったから、女の子に熱を上げるようになって。

でもやっぱり、それは違う。
彼女と一緒にいると安心する。居心地が良い。
私には彼女だけなんだと、私は思う。
私は彼女の話す言葉が好きだ。彼女の体温が好きだ。
キスしたいなんて思わないけど、きっと私は彼女の身体も好きだ。

高校の時も、大学生になった今も、手をつないだり、ハグをする友だちはいる。
でもみんな彼女の代わりにはならない。

成人式で、会いたいねとLINEして、一枚だけ、写真を撮った。手をつなぐ時間も、ハグをする時間もなかった。
私も彼女も、別の女の子と一緒にいた。

離れていくのが惜しかった。彼女もそんな目で私を見た。春休みに遊ぼうねと言われた。
でもそれ以来連絡していない。私もしないし、彼女からも来ない。

今も昔も、私は自分をレズビアンだとは思わない。バイセクシャルでもない。恋人は男の人が良い。

付き合いたいとか、そんなのじゃない。そうじゃないのに、
この苦しくて愛おしくてもどかしい気持ちを、思い出をなんて呼んだら良い?

あんなに「仲良し」なのに、何かが怖い。

それを形容する言葉は、

私は「恋」しか知らない。

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