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葉山 葵々(Kiki)
2022年4月10日 22:06
土は、美しい緑を育む。生きとし生けるもの全ての源となりて明日をつくる。その柔らかい恵みに手を沈め、一掴み握って指を擦り合わせると、土は、はらはらと散る。いくらか黒ずんだ手は当然の如く洗い流される。その夜、燃え尽きた魂は灰となる。熱狂した人々は一人二人と去り、静まり返ったその地において風に吹かれて舞い上がる。魔女を焼いたのだと、誇らしげに語り家路につく彼らをボクは遠巻きに眺める。彼ら
2022年4月24日 22:20
誰かの脚に絡まって転んだボクは起き上がり、ジンジンと痛む膝にめり込んだ砂を手でこすり取る。その脚の主は大して気に留めた様子もなく、ボクを睨み付けるまでもなく遠ざかって行く。 人々の怒声、肌に感じる湿度、赤い松明の炎。歩を進める度にはためく粗末な服の裾では小さな砂粒が舞っている。蹴られたり揉まれたりしながら、ボクは大人たちの脚の間を縫って走り、隙間から向こう側をのぞいては叫んだ。「母さん!
2022年5月15日 21:21
「なぁ、寄り道してもいいか?」 道が南北に別れる分岐点の手前で唐突にロージャが言う。「寄り道? どこに?」「乳酒が欲しいんだよ」 一応伺いは立てたもののロージャに相方の返事を聞く気はない。当然ダーウィも同意するものと、迷いなく北の道を行く。ダーウィがあからさまに溜息をつくとロージャは自分の三倍はある荷物を持ち直し、ニヤリと笑った。彫りの深い鋭い目元が柔和に和らぐ。「お前、荷物多い
2022年5月26日 18:30
――数時間前。「おいお前、ここの隊長はどこにいる」 シワのない制服をきっちりと着こなした男に突然声を掛けられたアントスはびくりと肩を震わせた。男のすぐ後方に視線を投げると、小馬鹿にしたようなもう一つの視線とかち合う。「う、裏手に。そこの、三番棟の。昨日、配管が壊れたから」 洗濯から戻ってきたばかりで手足ずぶ濡れのままのアントスは不安げにカゴを抱え直し、答えた。まだ泡の残るシャツや