空井恒

大学院生です。本の要約や感想、あとは考えたこととかを書きます。 記事は自分の考えをまと…

空井恒

大学院生です。本の要約や感想、あとは考えたこととかを書きます。 記事は自分の考えをまとめる最初のところを書いたものなので、正確でなかったり、論旨が一貫してなかったりします。

マガジン

  • ハイデガー『カントと形而上学の問題』ゼミノート

    『カントと形而上学の問題』の訳文と、自分なりの理解など。ゼミの予習ノートです。

  • ニーチェ『悲劇の誕生』訳と読解

    『悲劇の誕生』を細々と訳し、解釈をつけていきます。

最近の記事

#1. ニーチェ『ツァラトゥストラはこう言った』

Zarathustra's Vorrede. ツァラトゥストラの序説 § 1 Als Zarathustra dreissig Jahr alt war, verliess er seine Heimat und den See seiner Heimat und gieng in das Gebirge. Hier genoss er seines Geistes und seiner Einsamkeit und wurde dessen zehn Jahre nich

    • §34-2ハイデガー『カントと形而上学の問題』ゼミノート(24.4.30分)

      ペーパーバックで買いました。今まではPDFで見ていたけど、授業中にタブレットでこれと邦訳と『純粋理性批判』の参照箇所を見るのが大変だったので。やっぱ紙に書き込むのはいいですね。 190b:純粋直観は純粋自己触発である 前回までの箇所(すべての表象は内感に属する・内感の形式は時間である→すべての表象は時間の自己触発的な構造に準拠する)を踏まえて、「認識の有限性」が直観の有限性に根付いていることが明らかになり、再び直観の有限性に話を戻そうということを言っています。そもそもこの

      • §34-1ハイデガー『カントと形而上学の問題』ゼミノート(24.4.23分)

        わけがわかりませんが、わからないなりに頑張ります。 § 34. Die Zeit als reine Selbstaffektion und der Zeitcharakter des Selbst 純粋な自己触発としての時間と自己の時間性格188c:時間が対象の表象の概念を触発するとは? ここではもっぱら問いを立てるだけです。 この問題は以前にも登場しています。62 ページ。でもそんなに関係ないみたいです。 カントは「触発する」のは時間と空間の両者だと書いていますが、ハ

        • カント『純粋理性批判』ゼミノート(24.4.22分)

          位置付け 超越論的原理論/超越論的論理学/超越論的分析論/概念の分析論/純粋悟性概念の演繹について 22節 カテゴリーは、経験における対象に自らを適用する以外のいかなる認識上の使用法も持たないこの節全体として、このタイトルの命題を証明しようとしています。 この引用箇所の最後の部分は文の切れ目ではないのですが、一回ここで切ります。この範囲は特に問題はないでしょう。有名なカントの認識論(認識は直観と概念の結合によって成り立つ)が確認されているだけです。 一つ前の引用箇所を概

        #1. ニーチェ『ツァラトゥストラはこう言った』

        • §34-2ハイデガー『カントと形而上学の問題』ゼミノート(24.4.30分)

        • §34-1ハイデガー『カントと形而上学の問題』ゼミノート(24.4.23分)

        • カント『純粋理性批判』ゼミノート(24.4.22分)

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        • ハイデガー『カントと形而上学の問題』ゼミノート
          3本
        • ニーチェ『悲劇の誕生』訳と読解
          3本

        記事

          ハイデガー『カントと形而上学の問題』ノート(序論〜#1)

          引用においては、「有」を「存在」、「有るもの」を「存在者」などと断りなく変更します。 序論 研究の主題とその構成要点:ハイデガーはカントの『純粋理性批判』を「形而上学の根拠づけ」として読もうとしている。そして、「根拠づけ」ということを分析することで、本書の方向性を提示している。 ハイデガーは、この本を通して『存在と時間』で行っていた基礎的オントロギー(存在者を存在者たらしめる「存在」の意味を解明する視座としての現存在の分析)を、実はカントが『純粋理性批判』という書物の中で

          ハイデガー『カントと形而上学の問題』ノート(序論〜#1)

          #1. キリスト教は嫌いだけどイエスは大好きだ! byニーチェ「天国とは何か」

          ニーチェといえばキリスト教の批判者として知られているけど、実はイエス本人に対してはむしろ肯定的な評価を加えている…このことがどの程度人口に膾炙しているものなのかはわからないけど、この記事ではまさにそのことを書いています。 題材をニーチェの著作とか遺稿全般にしたらそれはそれで面白いのだと思うけど、そうすると本当にキリがなくなってくるので、ニーチェの晩年の作品(生前に出版はされていない)である『反キリスト者』から肝心要になりそうな文言をいくつか抜き出して自分なりの解釈をつけていき

          #1. キリスト教は嫌いだけどイエスは大好きだ! byニーチェ「天国とは何か」

          #2 ゼロから始める修論計画(24.2.25~3.3)

          今週の目標主要二次文献リストアップ完了→前回からの引き継ぎ。若干のみ ニーチェ研究なら読まなきゃいけないものをリストアップ。 現時点でリスト化している文献のオーバーヴュー→前回からの引き継ぎ 15ほどあげている。序文、書評、訳者解説などで内容や主張の概要を掴む 『反時代的考察』第一部『デーヴィットシュトラウス』を読む→完全に引き継ぎ ドイツ語 単語帳、DWを読む、リスニング教材からわからない表現をノートに書く、(中級文法書を読む) 研究以外にやらなくてはいけないこと就

          #2 ゼロから始める修論計画(24.2.25~3.3)

          #1 ゼロから始める修論執筆(24.2.14-2.21)

          今週の目標主要二次文献リストアップ完了 ニーチェ研究なら読まなきゃいけないものをリストアップ。 現時点でリスト化している文献のオーバーヴュー 15ほどあげている。序文、書評、訳者解説などで内容や主張の概要を掴む 『反時代的考察』第一部『デーヴィットシュトラウス』を読む ドイツ語 単語帳、DWを読む、リスニング教材からわからない表現をノートに書く、(中級文法書を読む) 研究以外にやらなくてはいけないこと演劇 23日に本番、18日から小屋入り。稽古はかなり多い。 就活

          #1 ゼロから始める修論執筆(24.2.14-2.21)

          『悲劇の誕生』3節第二段落

          Wer, mit einer anderen Religion im Herzen, an diese Olympier herantritt und nun nach sittlicher Höhe, ja Heiligkeit, nach unleiblicher Vergeistigung, nach erbarmungsvollen Liebesblicken bei ihnen sucht, der wird unmuthig und enttäuscht ihne

          『悲劇の誕生』3節第二段落

          『悲劇の誕生』3節第一段落

          まとまった量訳してませんが、なんとなく投稿します。区切りのいいところで『悲劇の誕生』シリーズにまとめます。 第一段落 Um dies zu begreifen, müssen wir jenes kunstvolle Gebäude der a p o l l i n i s c h e n C u l t u r gleichsam Stein um Stein abtragen, bis wir die Fundamente erblicken, auf d

          『悲劇の誕生』3節第一段落

          『罪と罰』人物紹介・あらすじ

          『罪と罰』の台本を読むときに、「この人どんな人?」「この場面はどんな流れの中にあるの?」ということが少なからずあるので、自分の理解の刷新も兼ねて簡単な人物紹介とあらすじを書いてみたいと思います。 *途中ですが、長くなるので、公開して徐々に修正していきます。 人物紹介ラスコーリニコフ(ロジオン・ロマーヌヴィチ・ラスコーリニコフ) 父親をはやくに亡くし、一家の希望としてペテルブルクに移って大学の法学部(超絶エリート)に学ぶが、少し前に家庭教師の仕事ともども大学も辞めてしまう

          『罪と罰』人物紹介・あらすじ

          読みたい本というか知りたいこと 「LGBTQの権利(同性婚とか)を認めたら、ペニスのある奴が女子トイレとか女湯に入ってくるじゃないか」は正しいのか 「マイノリティは現実を見れずに声がデカい」は正しいのか

          読みたい本というか知りたいこと 「LGBTQの権利(同性婚とか)を認めたら、ペニスのある奴が女子トイレとか女湯に入ってくるじゃないか」は正しいのか 「マイノリティは現実を見れずに声がデカい」は正しいのか

          いま読んでみたい本のリスト 23. 11. 29

          暇つぶしに書いてみます。「読みたい」というのは、「内容的にめっちゃ面白そうなんだけど読むのにえげつない体力とられそう…」みたいな踏ん切りのつかない気持ちを含んでいます。 1, 小野寺拓也, 田野大輔『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか』岩波書店, 2023年 最近noteでこの本の感想文を見て読みたくなりました。ナチスはアウトバーン作って失業率改善させたんだから、良い点もあったんだよみたいな言説の検証ですね。こういう逆張りに対してデータで反論するという本は一番「蒙を啓か

          いま読んでみたい本のリスト 23. 11. 29

          読んだふり感想文『ドストエフスキーの詩学』(ミハイル・バフチン)

          「読んだふり感想文」では、本文は読まずに解説とか序文、後書きからどんな本なのかを予想したり、疑問点を挙げたり、感想を書いたりします。本文を読む前に先入観を持っておくと、本文も結構真剣に読むことができると考えています。自分の先入観を修正したり、疑問をクリアにできたりします。また、本の議論全体をあらかじめ俯瞰できるので本文の細かい議論の中で迷子になることが少なくなるかなと思います。 今回はミハイル・バフチンの『ドストエフスキーの詩学』(望月哲男/鈴木淳一訳, 筑摩書房, 199

          読んだふり感想文『ドストエフスキーの詩学』(ミハイル・バフチン)

          11/11【今日のやること】 ドイツ語:単語帳(最後まで確認、分からんメモp.60まで)リーディング最後まで, リスニング最低6 ニーチェ:ClarkのWM解釈を書評や1990で確認、その次にKaufman

          11/11【今日のやること】 ドイツ語:単語帳(最後まで確認、分からんメモp.60まで)リーディング最後まで, リスニング最低6 ニーチェ:ClarkのWM解釈を書評や1990で確認、その次にKaufman

          僕の思う『罪と罰』のココがすごい

          ここでは僕なりの『罪と罰』のここがすごいを書いていきます。今度知り合いと『罪と罰』台本を読むので、それに向けて、「なぜ『罪と罰』を演劇でやりたいのか」を紹介したものです。 単純なモデルでありながら十分に複雑な人物を生み出している ドストエフスキーは『白痴』の第四章の冒頭において唐突に作品論を展開します。主張の要旨はこうです。小説の使命とは、現実には存在しないかもしれないが、時代の人間性を反映した人間をモデルとして提示することである。僕はこの箇所を読んだときに我が意を得たり

          僕の思う『罪と罰』のココがすごい