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市場動向の確認と経済ニュースの注目点

割引あり

<マーケットチェック>


今週はFOMCや日銀の決定会合などのイベントがありました。市場関係者の注目度は高かったわけですが、基本的にはコンセンサス通りであったと理解しています。それよりも私が気になったのはフランス株式の下落とともに対ドルでユーロが大きく売られた事です。
フランス総選挙は6/30に第1回投票、7/7に決選投票が予定されています。現在優勢と見られている極右の「国民連合(RN)」は電気料金の値下げ、ガスの付加価値税(VAT)引き下げ、公共支出の拡大を公約に掲げています。
日本も7/7は都知事選挙ですが、今年は世界的に選挙が多い年なので政治動向は注目されます。
 

株価


株価は上値の重い展開が続いていますが、海外を見てみると、堅調なNASDAQでも上昇しているのは一部の銘柄に偏っており、下落している銘柄の方が多くなっています。上昇しているのは半導体関連中心で、その他周辺銘柄への物色も限定的となっています。米国はインフレの鎮静化がはっきりと表れていますが、景気もそれなりのスピードで鈍化しているとの懸念も広がっています。ここまでモメンタムが良かった銘柄もAI関連は好調な一方で、シクリカル株に関してはアンダーパフォームする場面が目立ってきました。
ただ、今週注目されたCPIとFOMCを総じて言えば、株にとってたいへん都合が良い状況になっている言えると思います。経済指標は、強弱まちまちではあるものの、ひどい状況に陥るとは考えにくい一方で、インフレに関してはやっと鎮静化が見てて来た感があります。インフレ鎮静化が「データで進展が示されている」以上、Fedが無理に株の上昇を抑える理由はなく、株にとっては、景気が失速しきらないのに、金融政策はハト派になっていくというとても良い状態に見えます(市場は景気鈍化を織り込んできていますが、、、)。米金融当局の発表は一見タカ派に見えますが、いつでも転換できるオプションを持っていることも伝わって来る内容で、過度に警戒する必要はないように見えます。
 

金利


日銀金融政策に関して記者会見はタカ派な印象でした。私は前回の時から思っていたのですが、前回の発言がハト派と見られて為替が円安に進んだことで、タカ派な金融政策を取る事へのお墨付きを得られた感じになっています。25bpへの利上げが7月か9月かという事は専門家にとっては議論の対象かもしれませんが、投資家からすると上昇は決定づけられていると思います。
また国債買い入れ減額は「相応の規模」と表現しました。つまり、この額が不透明なので、7月31日の会合まで、金融機関は安易に長期債が購入できず、動きが鈍る可能性が高いと考えられます。
今回面白かったのは、今後1~2年程度という長期の削減プランを示すとしたことです。Fedのように、QTはオートパイロット的に運用し、金融政策は短期金利でアクティブに運用するのでしょうか。これで市場のボラティリティを低下させることが出来れば日銀の狙い通りということなのだと思います。
 

為替


日銀のスタンスは金融引き締め方向に動いており、日本は金利引上げ方向、米国は短期的には利下げが先延ばしになっていますが、いずれにしても米国は金利引き下げ方向という見方は変えていません。
為替の関係者は未だに金利差の話ばかりをしていますが、これまでも述べている通り、為替には安定した価格決定理論はなく、一度関係が崩れると動きが急速に大きくなることには注意しておいてください。米ドルだけでなくユーロの状況にも気を配るべき状況になっています。為替以外の市場を見ていると、日本最悪シナリオとはなっていないように見えます。
 
 

<注目したニュース記事>


6/9日経 外国人で初、山陰合同銀行の社外取締役候補

<要約>
山陰合同銀行で初の外国人社外取締役に就任予定のアイルランド出身者が、地方銀行の取締役になりたいという夢を叶える。彼は日本が好きで、地方の課題を議論し地域での役割を継続する方法を考えたいと語る。
アナリスト時代に日本全国の地銀を訪れ、地域の産業や歴史を学んだ経験があり、山陰合銀の「地域の課題を自力で解決しようとする姿勢」に共感している。
2023年10月に都内でコンサルティング会社を立ち上げた彼は、流ちょうな日本語を操り、日本人との気が合うことを強調する。座右の銘は「やりたいことはやってみる」。

<河北コメント>
株主総会の季節ですが、アクティビストの株主提案だけでなく、社外取締役にどの様な人を登用しようとしているのかは注目です。思い切った人材の登用はその会社が変わろうとしているサインとして注目したいと思います。
 

6/11日経 ネット銀、預金伸び大きく

(要約)
インターネット銀行の預金量が大幅に増加し、2024年3月末の主要6行の預金残高は約34兆円で、前年比18%増となりました。楽天銀行やauじぶん銀行などは預金金利の引き上げやポイント付与などを通じて顧客を獲得しています。主要6行の平均預金残高は5.7兆円で、第一地銀の平均を上回っています。

楽天銀行は、預金が10兆5402億円に達し、普通預金金利を引き上げて口座数も増加しました。auじぶん銀行やPayPay銀行も預金金利を上乗せするサービスを提供しています。これらのネット銀行は、ポイント付与も活用して預金を増やしていますが、ポイント負担や高金利の提供が費用増加に直結しています。

一部のネット銀行は住宅ローンに依存しており、低金利が続くと収益悪化の可能性があります。ネット銀行は海外でも拡大しており、ブラジルのヌーバンクは利用者が増加しています。ネット銀行の成長理由として、生活に密着した金融サービスの提供が顧客を引きつけているとされています。

<河北コメント>
金利の上昇に関して、市場では預金金利よりも貸出金利の上昇が大きいと見て利鞘の拡大を織り込んでいます。
 しかしながら、ここから資金需要が膨らんでくるので預金獲得力も重要になって来るでしょう。また住宅ローンに関してはこれを上げて行く事は容易ではないと考えられます。ネット銀行の戦略と従来型の銀行の競争は金利上昇が上昇に転じたことで新局面に入ったといえるでしょう。各社の戦略を注意深く見てみる必要があります。
 

6/11日経 NTT株、踏ん張れるのか

<要約>
NTT株が下げ止まらず、10日の東京株式市場で一時150円を割り、連日で年初来安値を更新しました。この下落の主な原因は、25年3月期の連結純利益が前期比14%減の1兆1000億円との見通しが発表され、増配率が過去最小であったことです。さらに、自社株買いの表明もなく、株主還元が期待に応えなかったためです。

NTTは高配当株として個人投資家に人気があり、4月の新NISA経由の購入額は149億円で個別株の中で首位でした。しかし、個人投資家の一部が損切りを行う一方で、多くは「下がりすぎ」と見て買いを続けています。

今期の減益は、前期の資産売却益計上の反動が大きいものの、NTT東西の地域通信部門の売上減少や、固定電話とIP電話の契約減少が懸念されています。さらに、携帯通信部門も低価格プランへの移行がARPU(1契約あたり月間平均収入)を圧迫している状況です。

機関投資家の間ではEPS(1株あたり利益)の成長不安が広がり、今期と来期の純利益予想がそれぞれ約1400億円下方修正されています。しかし、悲観論ばかりではなく、地域通信部門の改善や法人向けサービスの伸び、中期的にはデータセンターや次世代通信基盤「IOWN」による成長が期待されています。

NTTは2023年に株式分割を行い、新NISAの影響で個人株主が増加しました。長期的には個人投資家が株価を支える役割を果たすかどうかが注目されており、通信最大手としての底力が試されています。

<河北コメント>
NISAでは個別株ではなく投資信託に資金が流入すると思っていたので、意外にも個別株に資金が向けられているのは意外です。今年の証券会社の口座推移を見ていると、特定口座からNISA口座への資金シフトが見られます。もちろんNISAには税制メリットもあるわけですが、一方で損益通算できないなどの注意点もあります。また、複利効果を得るためには配当や分配金がないものの方が効果的なので個別株は今まで通り特定口座で行ってもよいと思うのですが、これらの動きはやや心配です。
NISAの使い方に関しては8月に出版予定の著書の中で解説しています。

6/12日経 アサヒ、ビールより高いレモンサワー

<要約>
アサヒビールは、11日に世界初の缶酎ハイ「未来のレモンサワー」を発売しました。この製品は、蓋を開けると輪切りレモンが浮かび上がるという独自の消費体験を提供し、ビールよりも高価格で売り出しています。

「未来のレモンサワー」は2種類の味があり、関東甲信越の1都9県で限定販売されます。この商品は、缶の蓋が全開するデザインを採用し、開栓するとレモンが浮かぶ仕組みです。価格は298円で、通常の缶酎ハイの約2倍、主力ビール「スーパードライ」よりも3割ほど高い設定です。

アサヒビールは、価格競争から距離を置き、唯一無二の価値を提供する戦略を採用しています。開発に3年半をかけ、本物のレモンを使用するための技術的課題を克服し、乾燥レモンを使用することで品質と管理の両立を実現しました。

ビール市場の縮小に伴い、缶酎ハイ市場に注力する企業が増えていますが、アサヒビールは特に缶酎ハイ市場での地位向上を目指しています。競争相手であるサントリーやキリンも、海外市場での展開を強化しています。

アサヒビールは、若年層が高単価な酒を選ぶ傾向を利用し、消費者に独自の体験と高価格の価値を理解してもらうことを重視しています。最終的には、消費者が納得し、価値を感じてもらえるかが成功の鍵となるでしょう。

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