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⑤算数「整数の性質 指導」~偶数・奇数の新発見!~

5年生の2学期の算数に「整数の性質を調べよう」という単元があります。
この単元では、偶数・奇数、倍数・約数について学習していきます。

偶数・奇数という用語は日常生活でも登場することもあることから、その名前自体は知っている子がほとんどです。
また、チャレンジや公文、塾に通っている子などは、すでに学校で習うことは知っている状態で授業を受けています。

なので、
「先生、今日は、偶数と奇数やるんでしょ?」
といったことを言ってくる子は結構多いです。
言わない子でも
「偶数と奇数って簡単!」
などと、心の中で思っている子もいることでしょう。

全体指導では、年度初めから常に、
「先に勉強して知っていることはいいことだけど、知らない人もたくさんいるから、その人たちが不安にならないように、今日これから習うことは、初めて習うつもりで話をきいてほしい」
と伝えます。

多数派の子たちは理解し、余計なことはこれで言わなくなります。
しかしこれでは授業は楽しくありません。

知っていることをだまって聞いているだけだからです。
当然退屈します。
退屈な理由は、授業に問いが生まれてこないからです。

そこで、知っていると思っていることを揺さぶり、知らないことに変換していくのです。

それが授業の工夫です。

この揺さぶりがあることで、問いが生まれます。
既知→未知
それが「めあて」につながります。

それでは、

整数の1時間目の授業

「あるなしクイズ」から始めます。

子どもたちに「あるなしクイズ知ってる?」
ときいたところ、誰もしりませんでした…
テレビのクイズ番組でも使われているので、知ってる子がたくさんいるかと思いきや、意外でした。
ここは丁寧に説明していきます。

1~10までの数字カードを適当に黒板にはりつけます。

T:あるなしクイズをやります。
T:ルールも何もわからないと困るので、はじめは先生が1枚だけおくよ。

「3」を「ある」の所に置きます。
T:次に「4」は「なし」です。
T:なんとなくわかってきたかな。3にはあって4にはないものだよ
C:「あっ!」

つぶやいた子は隣の子と相談を始めます。

T:この続きを、だれかやってみたい人いない?
C:はい
T:10はどっちに入るかやってみてごらん

10を「ある」に入れてきました。

T:どうしてあるに入れたの?
C:3にも0にも円い線があるから
T:なるほど、面白い考えだね。確かにその理由だったら、「ある」だね。でも今日から、整数の勉強だから、見た目じゃなくて整数の性質について何かあるかないかを考えてごらん。

T:ちなみに10は「なし」だよ。
C:えっ

と驚く子が数名。

T:7はどっちに入るかわかるかな?近くの人と相談してごらん。
T:あるだと思う人?なしだと思う人?

意見は割れているが、あるの方が多くなってきた。
このあたりで、偶数・奇数の学習をしている子たちは頭の中で分類を始めていきます。

T:これまでのところ、3と7は「あり」で、4と10が「なし」だよね。いったい3と7には何があるんだろうね。
T:何があると思うか近くの人と相談してごらん

ここで、必ず習っていない言葉を使わずに相談させることを徹底します。
そうでないと、偶数奇数という言葉だけ使って終わってしまうからです。
数学的な見方考え方が育っていないと、この言葉から抜け出すことができなくなります。
ですが、育っていくと、別の視点からこの2種類の数字を見るようになります。

あまりという言葉が出始めるのです。

C:あまりと関係ある気がする。
T:じゃこの続きはみんなでできそう?
C:できる。できる

ここからは、子供たちをどんどんあてていき、あるなしクイズを完成させる。
表は偶数・奇数で分けられているけども、何があって、何がないのかはまだ???がついている子がたくさんいます。

T:今日はこの「ある・なし」の理由について知りたいと思わない?
C:思う、思う!
T:どうすれば理由わかるかな?
C:何かきまりが見つかればわかりそう。
C:じゃあ、今日はどんなめあてにする?
C:「あるなしクイズのきまりをみつけよう」がいいです。
T:でもこのままだと、バラバラにはってあるから、見えにくくない?

あるなしクイズ

C:たしかに…
T:もっと見やすくするにはどうする?
C:ならべる
T:どうやって?
C:小さい順に

という言葉の後に、「ある」・「なし」を表にして並べる。

T:このようなもの、何か見たことない?
C:グラフ?
T:おしい!グラフの勉強ででてきたものだけど、グラフじゃなくて、漢字1文字だよ。
C:あっ表だ。
T:正解。表にすると、この整数のきまりを調べられそうだね。

T:この表をみて気付いたことをノートに書いてみよう

見通しがもてない子もいるので、ヒントを出しながら、同じ土俵にあげていきます。

2分後

T:誰か発表したい人いますか。
C:どちらも2ずつ増えてる。
C:なしのほうは2の段の答えになってる
C:なしの数に1足した数が、つぎのあるの数になっている。
C:たてに見ると差や1になってる

T:表は縦に見たり横に見たりするといろんなことがわかるよね。あるとは、あまりがあるというところまではわかったけど、じゃ今度はそれを式にあらわしたらどうなるのかな?
C:……

難しい発問だったので、修正をいれます。

T:□を使った式で、このあまりありの整数とあまりなしの整数をあらわすとしたらどうなると思う?例えば、「なし」のほうの整数の性質はさっき表で気づいたことを活用すれば、きっとできるよ。2の段の答えになってるんだったよね。
C:あっ。2×□
T:だったら、「あり」の方は?さっき、なしの数に1足した数が次のありの数になってるって言った人いたよね?ということは…
C:2×□+1だ。
T:みんなで、はじめは分からなかった、「なし」の整数と「あり」の整数を式で表すことできたね。この2×□で表すことのできるなしの整数のことを偶数といいいます。偶数は2でわりきれます。そして、2×□+1であらわすことのできるありの整数のことを奇数といいます。

T:じゃ「0」は偶数?奇数?近くの人と相談してみよう。

ここで、はじめにあえて出さなかった「0」をだします。

C:偶数です。
T:どうしてそう思ったの?
C:2とびになっていたから、2からもどって2とびしたら0になるから。
T:なるほど、表を使って考えたんだね。
C:偶数なら2で割り切れるので、0÷2=0で割り切れるので偶数です。

0を偶数と理解できない子が結構います。
あまりという視点で分析していくと、2,4,6,8,10と同じ仲間と分かります。

意外と理解するのは難しいので、丁寧に指導することが大切です。




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