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九九暗唱の危険性「多様な見方考え方の欠如」

前回の記事の続きです

問題
家族でスシローに行きました。たろう君はサーモンのお寿司を4皿食べました。1皿にはお寿司が2個ずつのっています。全部で何個ありますか。

式 2×4
答え 8個

となります。
この文章題では、式が4×2は✖になります。

毎年、11月~12月頃、SNSで、なぜ4×2は✖なのか??
意味わからん!!
という投稿を見かけます。

要は答えあってるなら、
やり方なんかどうでもいいじゃん論争です。
思考のクセが偏ってしまっていますね
これでは思考が偏ってしまうと本質が見えてきません
視点が1つしかないとどうしてもこのような議論っておきやすいです。
他にも
「ICT VS 板書」
も同様です

全国の2年生は2学期になると、九九の学習が算数のメインです。
だからよく、この時期に話題になります。

大人はこの問題文を理解し、8個なんだからどっちでもいいじゃんってなります。
ですが、子ども達は違います。
問題文などは読まずにでてきた数値の順番通りにただかけ算しただけなのです。
どうして問題文を読まずに答えが出せるのか?
それは九九を扱った文章題しかでないからです。

では、学校の先生はなぜ✖にするのか?

学習指導要領をもとに指導しているからです。

先生の思考が柔軟性に欠けているわけではありません。
むしろその逆で、多様な見方考え方を育てる指導をしているです。

学習指導要領解説「算数編」第2学年の内容には、次のようにあります。

小学校学習指導要領解説「算数編」

答えだけあってればいいじゃん論は、
(エ)の九九をマスターしているところだけは達成していますが、
それ以外の能力は身に付いていません。

例えば
「イ)の乗法が用いられる場面を式に表したり、式を読み取ったりすること」
に関わる実際の指導について考えてみます。

問題
2×4と4×2の式になる問題をつくりましょう。

こうなったらどうなりますか?
答えは8だからどっちでもいいじゃん論は通用しなくなります。
どっちも答えは8なので…

というより、そもそも、これはもう計算問題ではありません。
2つの式の違いがわからないとできない問題ですね。
問題文の理解が必要になってきます。

わかりやすく、同じ場面で問題を作成してみます。

2×4の問題
家族でスシローに行きました。たろう君はサーモンのお寿司を4皿食べました。1皿にはお寿司が2個ずつのっています。全部で何個ありますか。

4×2の問題
家族でスシローに行きました。たろう君はサーモンのお寿司を2皿食べました。1皿にはお寿司が4個ずつのっています。全部で何個ありますか。

となります。

4×2の問題場面は実際の日常体験から考えるとおかしいですよね?

回転寿司で1皿に4貫サーモンがのってるなんてありえません。

このような活動が、
「場面を式に表したり、式を読み取ったりする」活動です。

こうした活動を通して、多様な見方考え方を育てていきます。

文章題と計算問題はそもそも違います。
計算問題としてであれば、2×4も4×2も答えは8となり、どっちで計算したって問題はありません。

ですが文章題は違います。

文章題を解くには、順序があります。
その順序を確認していきましょう。

①問題文を読み、内容を理解する。
②理解したことを図に表し視覚的に捉える。
③式を立てる。
④計算する。

文章題を苦手にしている子どもはたくさんいますが、どの段階でつまずいているのかを分析する必要があります。
そしてそのつまずきに合わせて支援しなくてはならないのです。

子どもたちに
「算数のテストの時、文章題の文をきちんと読んでる?」
と訊くと、
「あんまり読んでない」
「数字だけ見てやってる」
「かけ算のテストのときはかけ算になるから、でてきた数字かけちゃえばできる」
などなど…目が点になるような返答がすぐにかえってきます。

なぜか?
問題文を読まなくても答えがでてしまうからです。
九九学習の弊害です。

九九暗唱に力を入れすぎるあまり、覚えること自体はよいことなのですが、無理やり計算を自動化させただけで、九九さえできていればなんとかなるという思い込みから、算数の問題場面と素直に向き合うことができなくなってしまっているのです。
このような思考回路になっている状態を

「九九暗唱脳」


と名付けました。

なので、①②をとばして(問題文をよくに読まず、図に表すこともせず)いきなり式を立て始めてしまうのです。
数を量として捉えずに暗記にたよった結果とも言えます。

九九暗唱完璧=算数できる
という勘違いが生じるのです。

九九暗唱が完璧なのは、よいことではありますが、算数の本質ではありません。
九九の答えは忘れてもなんとかなります。
むしろ、大切なのは、忘れたときにどうやって解いたらいいのかが、わかることなのです。

さて、本当に個別支援が必要なのは、このような子たちではありません。

文章題を読んでも問題場面を想起できなかったり、「2こずつ」「1人あたり」といった言葉の意味がわからなかったりする子には支援が必要です。
こうした子はASD傾向が強く、語彙力も少なく、言葉から想像することを苦手にしていたり、抽象的な言葉が理解できない子たちです。
わかりやすい言葉に置き換えたり、具体物を使って場面を示したりしてあげる必要があります。

また、意味は理解しているけれども、読み飛ばしてしまうのはADHD傾向のある不注意な子たちです。
読み飛ばさないよう、1文ずつ読めるように残りの文章を隠すなどして確実に読ませる支援が必要です。
このようなミスをうっかりミスと簡単に片づけてはいけません。

もしお子さんが、先ほどのような問題で、2×4としなければいけないところを、4×2としていた場合、どうして4×2にしたのかを必ずきいてあげてください。
子どもの成長のためにも、テストの結果(〇か✖)だけで評価をしないようにしましょう。



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