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九九暗唱をゴールにすると算数嫌いが生まれます

2学期も後半にさしかかりました。
2年生は今必死に九九を覚えている頃ではないでしょうか?

九九免許
九九検定合格証
九九メダル
などを目標にして取り組ませている学校などもあります。

そもそも九九って絶対に暗記しないといけないの??
こうした疑問をもつことすら許される雰囲気がないのが今の学校教育です。
明治時代の学制発布以来、ほとんど変わっていません。
九九の暗記は3年生以降の計算の学習において大変有効であって、あったほうがいいと思います。
ですが、暗記することが目標であってはならないと言いたいのです。
上の例でいうなら、九九免許が欲しいために頑張って九九暗唱の練習に取り組んでしまっているわけです。

ですが、九九の暗記はあくまでも計算処理ツールです。
言い方を変えれば電卓さえあれば、計算処理は簡単にできてしまいます。
つまり暗記してなくてもいいわけです。

算数の学習で大切なことは、多様な見方考え方をベースに、未知の問題と出会ったときに、既習事項を活用しながら、工夫して解決できる能力を身に付けることです。

例えばこんな子はいませんか?
九九を忘れている子
苦手な段の九九があり、かけ算やわり算で計算ミスする子

どうしてつまづいているのか?

以前、算数障害の記事にて

10の合成分解が自動的に行われるのは、その後の計算の学習に不可欠ですが、量として捉えずにただ答えだけ暗記してしまうのは危険です。
だから、必ずブロック操作をさせてください。
このブロック操作をたくさんしたかどうかが、中学年以降の算数の学習の肝になります。

算数障害って何?⑤より

と10の合成分解の自動化の危険性について考察したことがありました。

つまり、数を量として捉えずに、答えだけを暗記しようとしているのです。
記憶に頼りすぎた結果、ワーキングメモリーが低めの子は、九九を忘れてしまいます。
同時にこのような子たちは、聴覚(耳から聞こえてくる情報)を使って理解することも苦手です。

2年生の時できたのに…
ってつぶやく子もたまにいます。

しかし、合格させることをゴールにしてしまったため、九九(いわゆるかけ算)の本質的部分の理解が欠如したまま、上の学年に進級してしまっているのです。

では、九九を完璧に暗記さえしていれば大丈夫か?
そうとは言い切れません。

文章題を解くためには、問題文を順序立てて理解し、必要な情報を整理する必要があります。
問題文を順序立てて理解していないと、必要な情報を見落としたり、誤った解答を導き出したりしてしまう可能性があります。

暗記の力に頼っている子は、文章題を解く場合、問題文に出てくる数値のみ取り出して意味を考えずに立式する傾向があります。
これまでの暗記という成功体験から、問題文を順序立てて理解する必要性を感じない脳の仕組みができあがってしまったのです。
これを九九暗唱脳と勝手に名付けています。

九九暗唱脳の子はそうでない子以上に、文章題を解く際には、問題文を順序立てて理解する練習をすることが重要です。

具体的には、以下のようなものが有効です。

  • 問題文を声に出して読んで、大事だと思う部分に線を引く

  • 分かったことと分からなかったことを書き出す

  • 図や表にあらわして考える

算数では、考えることを中心に学習を組み立てていきながら、算数の楽しさを実感させていかなければいけません。
九九暗唱をゴールにしてしまうと、算数嫌いが生まれます。

これは、算数障害ではない大多数の子にいえる大きな問題といえます。

九九は本当は全部暗記しなくてもいいんだよっていう指導がされていれば、よかったのです。

じゃあ、どうしたらいいの?
それは近々、お話ししていきたいと思います。

それではまた!






「だったら、先生どうするの?」
となるはずです。
「九九には秘密があるんだよ」
「えっ!どんな秘密?」
と、暗記が苦手な子でも興味をひきつけるような授業に展開していけばいいだけです。

では、どうすればよかったの?
①記憶にたよらない指導が必要です。
そのためには、かけ算の意味を確実に理解させ、九九とは何かを理解させることです。
|〇〇|〇〇|〇〇|(おだんごが1皿に2つ、それが3皿ある)
1つ分の数×いくつ分=全部の数
 2   ×  3 =  6
答え 6個
これが小学2年生で学習するかけ算です。
この問題場面では、2×3としないといけません。
3×2は違います。
「もし、2×4の答えがわからなかったらどうしたらいいと思う?」
「おだんごのお皿が1つふえるんだから、6+2で8だよ」
という考えを引き出していくのです。
そうすれば、九九の答えを忘れてもなんとかなることを学びます。
暗記にたよっていると、答えがわからなかったら、適当な答えをだしてきます。

②視覚的情報を活用する
九九を暗記できない子はおそらく聴覚優位ではなく、視覚優位の子が多いかと思います。
そこで、1の段から9の段までの計算式と答えが一覧となって見れるような表を作成し、教科書やノートにその表をはらせ、わからなくなったらいつでもみてよいことにしておけば、答えを忘れてしまったときに有効です。
しかも、一覧になっているため、かけ算のきまりなども見えてくるようになり、数学的な見方考え方も養えます。

暗記だけにたよって、力ずくで九九を暗記させても、ワーキングメモリーが低い子たちはいずれ忘れます。忘れたら3年生以降の算数の学習に大きく影響してきます。
3年生くらいから算数が苦手という子が増えることが多いです。
その理由の一つに無理やり計算を自動化させようとしたことが原因と考えられます。

たのしく、問いをもたせながら算数の学習をすすめていくことが大切ですね。
そうすれば、大人になったとき、自分に課された課題と向き合い、これまでの経験を生かしながら、課題を解決することができるのです。
課題を解決する過程で、人に伝える力(いわゆるプレゼン力)も身に付きます。


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