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夜に散歩した日の話。

いくつになっても夜道ってやっぱり怖くて
誘拐されたらどうしよう、とか
お化けが出たらどうしよう、とか。

そして、そのまま死んじゃったらどうしよう
って妄想にいつも行き着く。
そんなことそうそう起こらないのにね。

まず、誘拐犯かお化けか分からないけど、
交渉して最後の言葉を残す妄想をする。
最後なんです。だから、誰かにLINEだけ
送らせてください、ってね

でもいつも、足掻いてSOSを出すか
誰かにメッセージを送るかで迷う。
だってもう死んじゃうかもしれないんだから。
私の命運がかかってるんだもん。

SOSを出すなら
暗号を送ってみようか、
でも消されちゃうかもだからかな、とか
ベタに縦読みで、たすけてがいいかな、とか
どうせ死ぬことを前提に
実験しようとする自分がちょっと怖い。

誰かにメッセージを送るなら
その人に感謝を伝えたいかな。
私はわがままだから
今まで色んな人に迷惑をかけてきた。
だから最後くらい素直に
ありがとう、だとか伝えるべきなのかな。

でもね、
私、死ぬのは怖くないんだ。
みんなに忘れられるのが怖いだけで、
私が居なくなるとこで
みんなにちょっとだけ苦しんでほしいだけ。

こんなことを言うと誤解をされそうだけど
ただ、時々私のことを思い出して
ちょっとだけ寂しく思って欲しいだけ。

世界の小さな歯車ですらない
私の存在を認めてほしい。
忘れないでほしい。

だから全員に認められる必要もないし、
誰か一人にしか送れないなら
私を忘れないで欲しい人に送りたい。

多分焦ってる緊急事態に
1人だけにしか送れないなら
たぶん私はあの人にする。

私が忘れられないあの人。
私がこの世で一番信頼していて、
この世で一番大好きな人。

そんなあの人に何を送ろう。
私の人生で、
あの人に伝えられる最後の言葉。

さようなら、なんて意味ありげなこと
送ったところで後悔しそう。

好きだったよ、は言い足りないし
自分に言い聞かせてるみたいで死にきれない。

長々と思い出を綴ってもいいけど、
そんなの誘拐犯もおばけも
きっと待ってはくれない。

私にとってあの人は特別で、
あの人にとっても私は大切だ、って
自惚れられるくらいには
私たちは互いを信用してると思う。

だからきっとあの人は
私のことを忘れたりしないと思うけど、
私なんて忘れて悲しまずに
知らない誰かと幸せになって欲しい。
そんな良い子の私がいる。

だってもう何年も前に
一度好きだって伝えたことはあるから。
あの時から多分
あの人のことを忘れられなかったけど、
友達に戻ってくれたあの人の
優しさを再び崩したくなかったから。

でももう最後だから
我慢しなくてもいいよね。
あなたなら迷惑かけてもまた
笑って許してくれるよね。

あなたの切れ長の目も、
私より少し高い背も、
あなたが気にしてるくせ毛も、
ちょっとだけダサい服も、
頭が良くて理屈っぽいところも、
面倒くさがりなところも、
意地悪ばっかりしてくるところも、
何だかんだ私を甘やかしてくれるところも、
挙げだしたらキリがないけど
全部大好きだなんて
そんなことを語るのは野暮でしかない。

それに、私じゃない誰かと幸せになって
私を忘れるなんてやっぱり悲しいから、
どこかの漫画の話みたいに
この世で最も歪んだ呪いをかけたいと思う。
















愛してるよ。

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