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Turn Your Lights Down Lowに関するあれこれ
ソウルの香り
ドラムスのパターンがルーツレゲエのそれとはまったく異なるTurn Your Lights Down LowはIsland Records時代にボブが作った曲の中でも最もソウルフレーバー濃厚なナンバーのひとつです。
控えめに泣くマーヴィンのギターとジャズの香りがするダウニーのピアノ、そして次の曲Three Little Birdsへのブリッジの役目を果たす小鳥のさえずりを模した女声コーラス、ソフトでメローな前曲Waiting in Vainのすぐ後に配置されたおかげで違和感はありませんが、かなり意欲的なチャレンジだと思います。
批判と反論
ストレートに愛を歌ったこの曲、アルバムExodus発表当時、ボブのファンの間で物議を醸しています。
レゲエのサウンドを武器に社会の矛盾や既成のシステムと闘う新しいタイプのアーティストとしてボブをリスペクトし、愛していたリスナーたちは、男女の恋愛をテーマにしたこの曲を革命家(revolutionary)の変節だ、堕落だと批判しました。
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でもボブ自身はそんな声はまったく気にしてませんでした。彼にはこの作品を世に出す理由があったからです。
「俺は闘いや不満や捕らわれの身について歌い続けなければいけないのかい?プライドにかけてそうし続けるべきだって君は思うのかい?大切なのは、終わりにすべき時が来たらそういうことは終わりにしないといけないってことさ」
「銃撃事件のことをあれこれ考えるのが嫌になったんだ。心を軽くして別のことをやろうと思ったんだ」
「いったい俺はいつまで同じ歌を歌わないといけないんだ?たまにはひと休みして、Turn Your Lights Down Lowを歌って、女性と関わり合って、レディに話しかけないといけないのさ。わかるだろ?」
そうボブは音楽ジャーナリストVivien Goldmanに語っています。
かけがえのない存在
彼が言うレディとは前曲Waiting in Vainを捧げたガールフレンド、シンディ・ブレイクスピア(Cindy Breakspeare)のことです。
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当時ボブにとってシンディがどれほど大切な存在だったのか?
それは銃撃直後、心を立て直す大切な時間を共にした相手がシンディだったという事実が証明しています。
安全のためジャマイカから出国したボブは最初の目的地バハマで妻リタではなくシンディと落ち合ってカリブ海の隣の島国で心の傷を癒しました。
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それからボブはロンドンに向かう訳ですが、そこで長い時間を一緒に過ごしたのもロンドンを拠点にしてミスワールドの務めをこなしていたシンディです。
ちょうどボブが欧米でその名を知られ始めた頃にシンディがミスワールドに選ばれたため、ドレッドロックのラスタと世界一の美女の交際としてタブロイド紙の格好のターゲットとなったふたりはオープンな形では付き合えませんでした。
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「Natural Mysticに関するあれこれ1(ターニングポイント)」でも書いた通り、ボブはチェルシー地区の4階建て高級タウンハウスをロンドンでの住居兼活動拠点としていましたが、1~3階はウエイラーズのメンバーやジャマイカから旅してきたラスタ仲間やロンドンで知り合った友人たちに開放された共同スペースで、最上階だけがボブのプライベート空間でした。
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ボブの美学
ボブとシンディはそこで愛を確かめ合ったたわけです。
シンディはすぐ近くの別のタウンハウスに滞在していました。
「あの曲(Turn Your Lights Down Low)は私が住んでいたOakley Street 356番のタウンハウスの外階段で書かれたのよ。この曲は100%私の曲だって断言できる。彼は私のタウンハウスの裏階段に座ってこの曲を書いたの。その時、私は家の中にいたのよ。そしてドアのわずかな隙間から彼が歌うのを聴いていたの」
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「ボブはそういう人だった。家の入ってきて、横に座って、君のために曲を書いたよなんて言う人じゃなかった。行間を読ませるタイプって言うのかな、これみよがしに振舞わないタイプだったのよ」
Vivien Goldmanにシンディが語った彼女だけが知るエピソードです。興味深いですね。
冷たい共存関係
1977年当時、ボブの妻リタは子供たちを連れてアメリカに行き、移民としてデラウエア州ウイルミントン(Wilmington)に住んでいたボブの母セデラ(Cedella)と暮らしていました。
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コーラスパート録音のため、ボブから声がかかった時だけロンドンに飛んでいたと言われています。
レコーディングを密着取材したVivienによると、シンディとリタは別々の日にスタジオに来て顔を合わせないようにしていたそうです。
ロンドンに到着してからTurn Your Lights Down Lowの歌詞を知ったリタは激怒してコーラスパートのレコーディングを拒否しました。
ジュディ・モワット(Judy Mowatt)も不在だったせいで、この曲ではマーシャ・グリフィス(Marcia Griffiths)がひとりで3人分のパートを歌ったと言われています。
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ちなみにロンドンで同時期に作られた2枚のアルバムExodusとKayaではアイスリーズ(I-Threes)の3声コーラスは聴けません。
リタとボブの夫婦間の問題だけでなく、出産間近だったジュディがジャマイカを離れることができなかったためです。
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話をシンディに戻します。
2年後の1980年秋にボブは闘病生活に入りましたが、シンディはリタと共にボブを看病し、残された時間を彼と一緒に過ごしました。
リタが許可したという話になっていますが、おそらくボブ本人の強い要望をリタがどうしても断れなかったんだと思います。
リタとシンディの冷たい共存関係はボブが天国に召されるまでの期間限定でした。
国葬となったボブの葬儀にリタはシンディを招きませんでした。
それだけではありません。
事実より伝説作り
来週日本公開になるリタの長男ジギー(Ziggy Marley)プロデュースの伝記映画「ボブ・マーリーONE LOVE」でもシンディとの熱愛はほぼ無かったかのように扱われていると言われています。
リタとシンディにしか分からない長年の確執があるんでしょうが、事実を無視した「伝説作り」はやはり問題だと思います。
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シンディとのロマンスが無ければ不滅のラブソング3曲(Waiting in Vain、Turn Your Lights Down Low、Is This Love)は誕生し得なかったという事実は重いです。
ボブの人生や音楽を語る上でシンディは絶対に欠かせない存在です。
以上、今回はボブから愛の歌を捧げられた彼のミューズ(女神)シンディに関するあれこれでした。
それじゃまた~