英語&翻訳解説【So Much Things to Say】
まず曲を理解する
「言いたいことが多すぎて語り尽くせない」という曲ではありません。
「やつら」は延々と空虚な言葉を発し続けている。そんな雑音には耳を貸さず、幸せに生きるために戦い続けるんだと言うのがこの曲のメッセージです。
「やつら」とは、正しくないことを考え、間違った考えを行動に移してしまうような人の心に住み着いている邪悪な霊のことです。
差別や憎しみや怒りや物欲なんかがそうです。
真理を覆い隠し、それを探し求める人に届かないようにするために、「やつら」は今もひたすら我々に語りかけています。
Jahに感謝と賛美を捧げ、祈りを力にして「やつら」と戦うんだ、そうボブは歌っています。
英語表現と訳し方
They got so much things to say right now
Theyは「悪いやつら」です。誰の心にも入り込む可能性がある邪悪な霊を指します。
So much things to sayは、「言うことがたくさんある」という意味ですが、ここでは真理を覆い隠すために「やつら」がひたすら発し続ける空虚な言葉のことです。
最後のright nowには特に意味はありません。
歌いやすくするために便宜的に入れてある言葉です。
No way
絶対的な否定を意味する口語です。
「ありえない」という意味です。
Neverをさらに強めるために入れてあります。
Crucify ~
「~を十字架にかける」という意味です。
日常会話では使われないとても語感が強い言葉です。
Put ~ on the crossでも同じ意味になります。
They sold Marcus Garvey for rice
この場合のsellは「売り渡す」です。
必要なものを手に入れるために別のものを売ると言う意味です。
ここで言うriceとはアフリカ系ジャマイカ人の主食rice and peasのことです。
食べるために(=生きていくために)マーカス・ガーヴェイ(Marcus Garvey)をFBI(合衆国連邦捜査局)に売り渡したBagga Wireという人物が実在したそうです。
この話はレゲエ・ナンバーにもなっています。
Turn their back on ~
「~に背中を向ける」、つまり「~を見捨てる」という意味の慣用表現です。
この箇所のTheyはMaroonsの心に住み着いた邪悪な霊を指します。
Maroonsはお金のためにポール・ボーグル(Paul Bogle)を捕まえ、植民地政府当局に差し出したと言われています。
その結果、極貧の生活や人種差別に抗議するため立ち上がったアフリカ系ジャマイカ人の英雄ボーグルは絞首刑にされました。
Third Worldの代表曲96 Degrees in the Shade はMorant Bay rebellion(モラント湾の暴動)として知られるこの事件をモチーフにした曲です。
Come to fight
直訳すると「戦うためにやって来る」です。
Come toの後ろにthe world が隠れています。Come to the worldで「この世に生まれてくる」という意味になります。
Flesh and blood
そのまま訳すと「肉と血」です。
「血が通う肉体」、つまり「生身の人間」という意味の慣用句です。
Spiritual wickedness
Spiritual(霊的な)+ wickedness(邪悪さ)です。
Evil spirits(邪悪な霊、悪霊)と言い換えることができます。
日本語聖書共同訳では「悪の諸霊」と訳されています。
Give Jah thanks and praises
ボブのファンにはお馴染みの頻出フレーズです。
Jahに「感謝と賛美を捧げる」という意味です。
Justified by the laws of men
Justifyは「正しいと証明する」という動詞です。
Prove 〜 rightと言い換えることができます。口語ではこっちを使います。
Laws of menは「人が作ったルール」のことです。
Jury
陪審員制度における「陪審」です。陪審員の集合体です。
この曲では「人を裁く人たち」という意味で使われています。
Find ~ guilty
Guiltyは「有罪の」です。
Find ~ guiltyは「~に有罪判決を下す」というよく使われる定型表現です。
The jury found him guilty of murderと言えば、「陪審は彼を殺人罪で有罪とした」という意味になります。
Prove ~ innocence
Innocenceはguilt(罪)の反対語で「無罪」と言う意味です。
Not guiltyも同じ意味です。
Proveは「証明する」です。
Prove the pointと言えば「主張の正しさを証明する」です。Prove my alibiは「自分のアリバイを証明する」です。
Labbering
Labberはカリブ海の旧イギリス領の島々で使われるスラングです。
「ペラペラ喋る」、「ムダ話をする」という意味です。
同じ意味の標準英語動詞blabberから変化したものだと考えられます。
ジャマイカではlaba-labaという形でパトワにもなっているようです。
They don’t know what they’re doing
新約聖書ルカによる福音書23章34節からの引用です。
十字架の上で息を引き取ったイエス・キリストの最後の言葉です。
ルカによる福音書(King James Version)ではthey know not what they do となっています。ほぼ同じです。
日本語聖書新共同訳では「自分が何をしているのか知らないのです」と訳されています。
韻を踏んでいる箇所
次の3か所で韻を踏んでいます。
翻訳する上で難しかった点
Theyが意味するもの、ボブが伝えようとしたメッセージの把握が難しかったです。メッセージがぼやけてしまわないように足りない言葉を補って意訳しました。
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