英語&翻訳解説【Guiltiness】
まず曲を理解する
ひとつ前の曲So Much Things to Say同様、「やつら」のことを歌った曲です。
「やつら」とは、弱者の犠牲の上に成り立つ間違った社会体制の側にいる人間のことです。「やつら」は小さくて弱い者を食い物にしようといつも狙っています。
そんな間違った生き方をしている「やつら」ですが、同時に「後ろめたさ」も感じています。
自分たちは正しくないことをやっていると自覚しているからです。
「やつら」は生まれながらの悪党ではありません。ボブは「やつら」を敵とは呼ばずに哀れんでいます。
歌詞にはありませんが、あんな風になっちゃ駄目だというメッセージが感じとれるナンバーです。
英語表現と訳し方
Guiltiness
形容詞guiltyの名詞形です。
「罪の自覚」とか、「罪深さ」を指します。
Guiltyの名詞形にはguiltというのもあります。
こちらは「罪」、「罪があること」、「有罪」という意味です。
Guiltには二種類あります。
Crimesとsinsです。
前者は法律上の犯罪、道徳的、宗教的な罪悪を指します。
ボブの歌に出てくる罪はsins、神の教えに背くことです。
Pressed on ~
Press on~で「~に押しつける」、「~を圧迫する」です。
ここでは「良心を圧迫する罪の自覚」という意味になります。
これでは分かりにくいのでナチュラルな言葉に置き換え、語順も変えて「後ろめたさは良心を締めつける」と訳しました。
Conscience
「良心」です。
良心の呵責はpricks of conscienceと言います。
良心に従ってはaccording to one’s conscienceです。
False pretense
False(誤った) + pretense(見せかけ)で「偽りの口実」という意味です。
He got money from us under false pretensesと言えば、「彼は我々からお金をだまし取った」という意味です。
Materialize ~
「~を実現する」という意味の動詞です。
願望(desires)や計画(plans)を実現するという時に使います。
「物質化する」というのが本来の意味です。
硬い響きがありますが、日常会話でも使う言葉です。
たいていの場合、realizeという単語に置き換えることができます。
Woe to ~
Woe unto ~という形で旧約聖書にたくさん出てくる表現です。
Untoはtoと同じ意味です。
旧約聖書のいろんな箇所に登場しますが、一番多いのはイザヤ書(Book of Isaiah)です。
日本語聖書新共同訳ではto以下が「災いだ」と訳されています。
ひとつだけ例を上げておきます。
Woeは「悲しみ」という意味の文語です。
「災いだ」では聖書に親しんでいない人にはわかりにくいので、「哀しい」と訳しました。
Downpressors
辞書には出てきません。ラスタ用語です。
IyaricとかDread Talkと呼ばれるものです。
Peter Toshのこの曲で有名になった言葉です。
Oppressors(迫害者、弾圧者)という名詞のアタマのopをdownに置き換えています。
Opは発音がup(上方向)と似ている、upはポジティヴな言葉だ、でも迫害者はネガティヴな存在だ、というロジックでopをdown(下方向)に変えることで「発音」と「意味」を一致させています。
Word, sound and powerと呼ばれる言霊的ラスタ思想です。
参考までにほかの例も上げておきます。
ラスタは会話で説明なしにこうした単語を使います。そのため標準英語話者には何を言っているのかすぐに分からないことが多いです。
Bread of sorrow
詩篇127(Psalm 127)からの引用表現です。
日本語聖書口語訳では「辛苦の糧」と訳されています。
そちらに寄せて「苦いパン」と訳しました。
Sad tomorrow
直訳すると「悲しい明日」です。
「将来味わう悲しみ」という意味です。
歌詞の内容に合わせて「これから涙を味わう」と訳しました。
韻を踏んでいる箇所
次の2か所で韻を踏んでいます。
翻訳する上で難しかった点
表面だけ見ると「やつら」を批判していますが、掘り下げるとメッセージが浮かび上がってきます。訳し過ぎないように注意しながら奥にある意味が感じとれる歌詞にするのが難しかったです。
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