英語&翻訳解説【Duppy Conqueror】
まず曲を理解する
この曲のテーマは「勝利」です。
俺は悪霊に打ち勝った男だ。俺には神さまがついている。だから俺のジャマはするなという曲です。
Conquerorというパワーワードをサビの部分に使って、神の力によって自分の心の中にあった恐れを克服し、抑えつけよう、支配しようとする者にうち勝つことができたんだと歌っています。
英語表現と訳し方
Deh
Thereという意味のパトワ(ジャマイカ式クレオール語)です。
We deh a-street againを英米スタイルの英語に直すとWe are there on the street againになります。
「俺たちはまた街にいる」という意味です。すなわち「街に戻ってきた」と歌っています。
「拘束された状態から解放された」わけです。
ご参考までにパトワ(PatwaまたはPatois)と標準英語がどのぐらい違うのか例文を使ってわかりやすく教えてくれる動画を貼っておきます。
発音や単語だけでなく文法も大きく異なり、アメリカやイギリスの英語に親しんだ人たちにとっては「ほとんど外国語」の世界です。
Most High
「最も高い」という意味です。
Highの最上級はhighestですが、宗教的な文脈でのみ定型表現としてmost highが使われます。文法上の例外です。
「いと高き」、あるいは「至高の」と訳すのが一般的です。
すぐ後ろにGodが隠れています。省略せずに全部書くとthe Most High Godとなります。
Turn ~ loose
「~をゆるんだ状態にする」、つまり「~を開放する」とか「~を自由にする」という意味でよく使われるフレーズです。
同じ意味でcut looseというフレーズも使われます。Cut looseには「関係を断つ」という意味もあります。
She cut herself loose from her familyという風に使います。
Cork ~ up
「~にコルク栓をする」、転じて「~を阻止する」という意味です。
どちらかと言うとBritish Englishです。American Englishの話者はあまり使いません。
Cork up one’s emotionsで「自分の感情を抑える」という意味になります。
Mount Zion
ボブは英語話者なので「ザイオン」と歌ってますが、日本では一般的に「シオン」と表記されます。
エルサレム (Jerusalem)旧市街の東南の丘を指します。「聖なる丘」と訳されることが多いです。
ラスタは自分たちの価値観に基づいて聖書を「解釈」して読む人たちです。彼らがMount Zion、あるいはZionと言う場合、エルサレムの丘ではなく、エチオピア(Ethiopia)のことを指します。
ユダヤ教、キリスト教、そしてラスタファリを信じる人たちは象徴的な意味でもZionという言葉を使います。その場合、「天国」という意味です。
Bull-bucka
Bully(いじめっ子)という意味のパトワです。
Duppy conqueror
Duppyもパトワです。「悪い霊」(evil spirit)のことを指します。
Conquerorとは、conquer(うち勝つ、征服する)人のことです。
したがって、duppy conquerorは「悪霊にうち勝った人」、すなわち「悪霊の撃退者」となります。
Cold ~ up
標準的英文法では、coldには動詞形がありません。
パトワ独特の用法で、「~に屈辱を与える」、「~のプライドを傷つける」という意味です。
Set ~ free
「~を開放する」、「~を自由にする」という意味です。
ご存じな方も多いと思いますが、Motownの女王Diana Rossが在籍していたThe Supremesのヒット曲You Keep Me Hangin’ Onの出だしがまさしくこのフレーズです。
ほかの曲でもよく耳にする「知っていて損はない」重要表現です。
韻を踏んでいる箇所
以下の4箇所で軽めに韻を踏んでいます。
翻訳する上で注意した点
曲タイトルのduppyを始めとして、パトワがかなり多く使われています。訳者泣かせの歌詞のひとつです。パトワの意味に気をつけて、ひとつひとつネット検索した上で慎重に訳しました。
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