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英語&翻訳解説【One Love】


まず曲を理解する

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あまりにも良く知られたレゲエを代表する一曲ですが、内容はストレートなゴスペルです。

神の名を賛美し、神の愛に感謝し、心をひとつにして苦しみや悲しみを生み出す「悪魔」と闘いながら共に生きて行こうと歌っています。

人はひとりでは生きていけない。愛し合い、助け合い、「ひとつ」になるしかないんだというのがこの曲のメッセージです。

生きづらさを抱えている人、愛のない場所でひとり苦しんでいる人はますます増えています。社会に問題がある限り、この世界に闇がある限り必要とされる心に愛の光をもたらす名曲です。

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英語表現と訳し方

One love, one heart

先行訳では直訳式アプローチで「ひとつの愛」、「ひとつの心」と訳しているケースが多いですが、そんなわかったようでわからないファジーな言葉ではありません。

「愛でひとつになる」、「心をひとつにする」という意味です。

わかりやすい文章にすると、Let love unite us and make us feel as one(愛によって我々を結び付け、一体になれたことを実感させてください)となります。

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たった4つの誰でも知っている単語を並べただけでこれを伝えるのはやはり天賦の才です。ボブの非凡さを物語るフレーズです。

Get together
「集まる」という意味でよく使われるやわらかい表現です。

「団結する」という意味もあるので「ひとつになる」と訳しました。

Feel all right

Bob feeling all right

Feelは「感じる」、all rightは「大丈夫」とか「問題なし」です。

そのままつなげて「大丈夫だと感じよう」でもいいんですが、それでは大事なポイントがぼやけてしまうんで意訳しました。

Hear the children crying
主語を省略するのはボブの癖です。

抜け落ちている主語Iを入れるとI hear the children cryingとなります。

「子供たちの叫びが聞こえる」という意味です。

Saying
すぐ前の「子供たちの叫び」の説明です。

全部書き出すとTheir cry says(叫びはこうだ)になります。

説明的になり過ぎないよう「声が聞こえる」と訳しました。

Give thanks and praise to the Lord and I will feel all right
全体にかかる主語Iが後ろに配置された変則的な文です。

普通の形に直すと、I give thanks and praise to the Lord and feel all rightです。
 
Thanks and praiseは神に祈る時にクリスチャンが使う言葉です。

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ボブも歌詞で多用してます。

Give(捧げる)をつけて「主(Lord)に感謝し、主の名を賛美する」という意味です。

And以下で「そうすれば私は安らぎを感じる」と説明しています。

Pass
Passは「通り過ぎる」、「通過する」という動詞です。

Let them pass ~はLet’s pass ~ と同じです。

ここでは通過させるのが「汚い言葉」なので「汚い言葉は無視しよう」と訳しました。

Remarks
「発言」とか「意見」とか「論評」という硬めの単語です。

「演説の言葉」もremarksです。

いろんな意味をカバーするように「汚い言葉」と訳しました。

Hopeless sinner
Hopelessは「希望がない」です。

もうアカンわ・・・

日常会話では「駄目な」と言う時によく使います。

「あいつは駄目だ」という時に、He (She) is hopelessと言います。

Hopelessly in loveは「愛される望みがないのに愛してしまった」です。

Sinnerはsin(罪)を犯す人=罪人です。

Sinとは道徳的、宗教上の「罪」を指します。

What about ~ ?
「~はどうなんだ?」という意味でよく使われるフレーズです。

あるものに関する説明のすぐ後で「それじゃ~はどうなんだ?」と別のものについて尋ねる時に用います。

What about me?と言うと、「私はどうなるの?」、What about you?と言えば「そう言う君はどうなの?」という意味になります。

In the beginning
「初めに」です。

一般的なフレーズですが、この曲での使い方は聖書に基づいています。

In the beginning, God created the heaven and the earth.

Genesis 1:1(King James Version)

初めに、神は天地を創造された

創世記1章1節(新共同訳)

キリスト教の世界観では、すべてに始まりと終わりがあります。

この世界にも終わりが来るという考え方です。

世界の終わりはend of the worldと言います。

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One more thing
「もうひとつだけ言っておく」という口語です。

きちんと文章化するとThere is one more thing I want to say、またはI have one more thing to sayになります。

Another thingも同じ意味で使われます。

Holy Armageddon
「ハルマゲドン」としてそのまま日本語になっていますが、Armageddonとは「世界の終わりにおける善と悪の勢力による最終戦争」を指します。

100%キリスト教用語です。

Holyは翻訳不要ですが、訳すなら「聖なる」になります。

核戦争による世界の破滅を指すnuclear Armageddonという言葉もあります。

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When the Man comes
The Manは救世主イエス・キリストのことです。

Jesus Christと呼ぶのを意識的に避けています。おそらくボブはエチオピア皇帝ハイレ・セラシエを救世主だと信じる他のラスタを刺激したくなかったんだと思います。

When Jesus Christ comesで「キリストがまたやって来る時には」です。

「天に上げられた救世主イエスがこの世界の終わりに天からもう一度地上にやって来る」という信仰を表した言葉です。

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ちなみに世界の終わりにイエス・キリストが再びやってくることをSecond Coming(再臨)と言います。

Doom
「破滅」という言葉です。

同じ意味で使われるdestructionruinよりも強い言葉です。

「運命的」なというニュアンスがあります。

ちなみにこの世界が終わる日のことはdoomsdayと言います。

Doomsday clockという単語もあります。

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世界が終わるまでに残された時間を示す時計のことです。

Pity
「哀れみ」や「同情」という意味の名詞です。

Have pity on ~ で「~を哀れむ」、「~に同情を示す」です。

Pityには「残念なこと」という意味もあります。

「それは残念だ」と言う時はWhat a pityと言います。

Chances
「見込み」とか「勝ち目」とか「可能性」のことです。

Good chancesと言えば「十分な見込み」、no chanceと言えば「勝ち目ゼロ」という意味になります。

ちなみにボブはこんな曲(Chances Are)も書いてます。

Hiding place
「隠れる場所」です。

これも聖書から採られた言葉です。

Thou art my hiding place; thou shalt preserve me from trouble;
Thou shalt compass me about with songs of deliverance.

(Psalm 32:7 King James Version)

あなたはわたしの隠れが。
苦難から守ってくださる方。
救いの喜びをもって
わたしを囲んでくださる方。

(詩篇第32篇7節 新共同訳)

「避難場所」というニュアンスで使われる言葉です。

Refugeと言い換えることができます。

Father of Creation
Creationとは「天地創造」のことです。

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天地創造の父=創造主です。

God of Creationと言い換えることができます。

大文字始まりのCreatorも同じ意味です。

韻を踏んでいる箇所

韻を踏んでいる箇所はありません。

翻訳する上で難しかった箇所

キーフレーズになっているfeel all rightの訳し方がとても難しかったです。考えうるあらゆる候補を試してようやく納得がいく訳語にたどり着きました。 

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