英語&翻訳解説【The Heathen】
まず曲を理解する
「やつら」三部作のラスト曲です。
表面上、歌詞は旧約聖書の時代エルサレムにあったソロモン神殿を異教徒から守ろうとしたユダ王国の人々の物語です。
でもその裏でボブは現代に生きる我々の心の中で繰り広げられる戦いについて語ってます。
後者における異教徒とは「迷い」とか「諦め」とか「疑い」といったネガティブな心のあり方です。「やつら」は何度でも繰り返し襲ってきます。
壁を越えて侵入してくる「やつら」は強敵です。でも主は何度でも「やつら」を壁に押し戻して我々に挫折から再起する機会を与えてくれます。
同じフレーズの繰り返しによって逆境と厳しい戦いが長期間続くことを暗示している重苦しい曲です。でも果てしなく思える暗闇の先には輝かしい勝利の光が待っています。
英語表現と訳し方
The heathen
「異教徒」という聖書以外ではあまり見かけない言葉です。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教以外の宗教を信じる人たちのことです。
ここではソロモン神殿(Solomon's Temple)を破壊しようと城壁の外から攻撃を仕掛けてくる異教徒、そして壁を越えて心の中に侵入しようとする「迷い」や「諦め」や「疑い」を指しています。
ダブルの意味を持たせるために「侵略者」と訳しました。
The heathen back deh ’pon the wall
主語が完全に抜け落ちています。
ボブのコンサート映像を観れば分かりますが、Jah put the heathen back deh ‘pon the wallというのが正規の歌詞です。
Back deh ’pon the wallはパトワです。
英米式の英語に直すと、back there on the wallです。
主語を入れて英米式に変換すると、Jah put the heathen back there on the wallとなります。
「主は侵略者を壁のあたりへと押し戻した」という意味です。
Fallen fighters
Fighters は「戦う人」です。
通常「戦士」とか「闘士」と訳します。
Fallenは「落ちた」とか「倒れた」という形容詞です。
「堕落した」という意味もあります。
Fallen angels(堕天使=悪魔)のfallenです。
Take your stance
Stanceは「態度」や「姿勢」や「構え」を指します。
Take an antiwar stance(反戦の態度をとる)という風に使います。
Take a neutral stanceだと「中立的立場をとる」です。
’Tis
古い時代に使われたIt isの短縮形です。
こんなことわざでも使われています。
Where ignorance is bliss, 'tis folly to be wise.
「知らぬが仏」という意味です。
As a man sow, shall he reap
倒置してあります。
本来の語順だとA man shall reap as he sowsです。
新約聖書ガラテヤの信徒への手紙6章7節(Galatians 6:7)からの引用句です。
旧約聖書でも繰り返し出てくる「蒔いたものを刈り取る」はボブお気に入りのことわざです。
Trench Town Rock、Bend Down Lowといった曲でも使用しています。
Talk is cheap
「口で言うだけなら簡単だ」という慣用句です。
似た表現にeasy to say, hard to doというのがあります。
「言うは易し、行うは難し」ということわざです。
Easier said than doneという言い方もあります。
The hotter the battle
A the sweeter Jah victory
「戦いが激しくなればなるほど、勝利は素晴らしいものとなる」という意味です。
The Bible and Bob Marleyの著者で研究家のDean MacNeilによると、ペンテコステ派に伝わる古い讃美歌の一節だそうです。
歌詞はこうです。
ペンテコステ派クリスチャン(ボブもそのひとりでした)が多いジャマイカでは定番の賛美歌のようです。
いろんなアーティストが自分の曲に取り入れています。
韻を踏んでいる箇所
次の2か所で韻を踏んでいます。
翻訳する上で難しかった点
曲タイトルになっているキーワードheathenの訳し方が難しかったです。訳語を「侵略者」に決めるまでかなり悩みました。