英語&翻訳解説【Midnight Ravers】
まず曲を理解する
アルバムCatch A Fireの中で一番難易度が高い歌詞です。翻訳者泣かせの「暗号のような言葉」で構成されています。
でもヒントがまったくないわけじゃありません。「解読」の手助けになるキーワードが3つ散りばめられています。
この3つとボブが考え出したパワーワードmusical stampede(「暴走する音楽」)がどう繋がっているのか?そこを理解するのが大事です。
曲のモチーフは1970年代初めにボブが大都会ロンドンで体験したナイトライフです(詳細は「Midnight Raversに関するあれこれ」で解説)。
あれこれ問題が多すぎる(Too much problem)タフでハードな現実から逃れるために、毎晩のようにディスコに足を運んでしまう不満を抱えた男ボブ=midnight raver (深夜パーティの常連)。
目の前で繰り広げられる過激で退廃的な光景に呆れつつもDon't let me down (「がっかりさせるなよ」)と心の中で念じながら自分も暴走する音楽(musical stampede)のビッグウェーブに乗って朝まで踊り狂うワイルドなパーティの参加者となる・・・
この曲は奔放なロンドンのナイトライフに反発しながら、同時に強く魅かれてしまっているボブの錯綜した感情を映し出す鏡に思えます。
経験者なら覚えてると思いますが(苦笑)、ディスコというのは「別世界」「罪悪感」「陶酔」「虚しさ」なんかを味わう場所でした。
英語表現と訳し方
Tell A from B
「AとBを区別する」「AとBを見分ける」という意味の慣用句です。ここでは「男性と女性を見分ける」なので「男か 女か 見分けがつかない」と訳しました。
Midnight ravers
Raversは「raveする人」です。日本語にもなってるレイヴパーティのraveですね。テクノ系の音楽にあわせて朝まで踊り明かすあれです。
そういったワイルドなパーティに参加する人をraversと呼びます。
Don’t let me down
Let~downで「~をがっかりさせる」「~を落胆させる」という意味です。
Don't let me downと言えば、The Beatles(ビートルズ)がそのままの形で名曲のタイトルにしてますね。
Ten thousand chariots
そのまま訳すとten thousandは1,000 x 10=10,000ですが、ここでは数は問題じゃないです。「すごく数が多い」という意味で使われています。
なので「一万もの」ではなく、「ものすごい数の」と訳しました。
Chariotsとは、ローマ時代に使われた二頭立ての戦闘用の馬車です。
Chariots以外にもボブの曲には聖書由来の言葉がたくさん使われています。
ここでは戦車ではなく、ディスコに集まるものすごい数の人たちのことを言ってるんだと思います。
Without horsesというところは「パートナーなしで(単独で)」と言う風に解釈できますが、ボブが言いたかったことはナゾです。
Make out
Make~outは「~を見分ける」「~を識別する」という口語的表現です。
例えば、I can’t make out what you wroteと言えば、「あなたが書いた字が読めません」という意味になります。
Musical stampede
Google検索してもまったく使用例が出てきません。間違いなくボブによる造語です。
英和辞典でstampedeを引くと「家畜の群れなどが驚いてどっと逃げ出すこと」「大暴走」という説明が出てきます。
イメージとしてはこんな感じです。
Stampedeにmusicalをつけて「音楽の大暴走」です。歌詞の内容と合わせるため、前後入れ替えて「暴走する音楽」と訳しました。
Ride on
Kinky Reggaeでもリフレインで使ってましたね。ここでは「乗って進んで行け」ではなく、ride on music(音楽に「乗れ」)っていう意味です。
韻を踏んでる箇所
3箇所あります。
翻訳する上で悩んだ箇所
耳に残る印象的なパワーワードmusical stampedeと曲のタイトルになっているmidnight raversをどう訳すか悩みに悩みました。
どちらも日本語として無理のない言葉に置き換えるのがすごく難しかったです。
どうやって「ボブによるひとり語り」とその他の部分(=音楽の向こうから聞こえてくる「誰か」や「説教師」の声+ガッカリしたくないボブの叫び)を識別できるようにするか?ここも悩みどころでした。
一番オーソドックスなやり方で後者を「・・・・・・」という形でカッコに入れてみましたが、もっといい方法があるような気もします。
視覚的にベターな形を思いついたら、将来的には手直ししたいな~と考えています。
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