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英語&翻訳解説【Slave Driver】

まず曲を理解する

Slave Driver(奴隷監督)というタイトルからも分かる通り、「奴隷たち」による「反乱」がこの曲のテーマです。別の言葉にすると「蜂起」とか「反抗」ですね。

彼らはもう「立ち上がって」います。「よく聞け、もうお前たちの好きにはさせないぞ」っていう支配者に向けたメッセージソングです。

英語表現と訳し方

Slave driver 
自由を奪われ、アメリカ大陸やカリブの島々に連れて来られたアフリカ出身の奴隷たちはMasterとかSirとかMr.XXXという言葉で支配者であるご主人様や監督者に呼びかけるように強要されていました。でもこの曲では一貫して自由を取り戻した対等な人間としてSlave Driver(奴隷監督)と呼びかけています。

英語では通常相手の名前を呼びます。呼ばないところに明確な意思が感じられます。歌詞全体から判断すると「お前たちに言っとくぞ」という一方的通告の意味合いもあるので、歌詞にはない「聞け」を加えて「奴隷監督よ 聞け」と意訳しました。 

The table is turned
この表現はTurn the tables (形勢を逆転する)という慣用句の受け身です。
支配する者と奴隷たちのストーリーなので「立場は逆転した」と訳しました。

この受け身の英語表現、学校で教える標準英語文法ではThe table has turned、またはThe table has been turnedとなります。 

Catch a fire
通常は~ catch fireという形です。主語(~)に 「火がつく」という意味です。

主語なしで命令形で使うのはこの曲以外では見たことがないです。

個人的な解釈ですが、たぶん自分たちで火をつけたんでしょう。それを「誰かがやった」あるいは「勝手に起きた」ことのように相手に伝えてます。なので「火がついたんだ」と訳しました。

Crack of a whip
ムチ(whip) がしなってビシっと人や床なんかに打ちつける鋭い音(crack)を表す慣用表現です。

ガラスが割れたり、銃が発する音もcrackです。 
 
Blood runs cold
これも英語の決まり文句で「冷えた血が全身を駆けめぐる」という意味です。

英語では血の温度がすごく重要です。いのちと結びついてるからかな?

形容詞のhot-blooded (熱烈な)やcold-blooded(冷酷な)は非常によく使われます。

韻を踏んでる箇所

以下の2か所、語尾で音をそろえてます。

Everytime I hear the crack of a whip
I remember on the slave ship

Only to be chained in poverty
Good God, I think it's illiteracy
It's only a machine that makes money

翻訳する上で悩んだ箇所

この曲以外では見たことがない命令形Catch a fireの訳し方がやっぱり難しかったです。

よく似た表現でset fire(火をつける)というのがあるんですが、あえてcatch a fireという言葉を選んでるような気がするんで、そこにどんなボブの意図があるのか、判断が非常に難しかったです。

欧米でのマーケティングを意識して使ったのかもしれません。見慣れない/聴きなれないフレーズなんで初めてレゲエに接した人にはサウンドと同じぐらい強いインパクトがあったと思います。だからこそアルバムタイトルにもなってるんじゃないでしょうか。

追記(詞としての美しさ)

Every time I hear the crack of a whip
My blood runs cold

最後に書いておきたいんですが、この部分、ポピュラーミュージックの歌詞のレベルを超えてると思います。詩として本当にカッコいいです。英語が好きな方は声に出して美しい音の流れをぜひ味わってみてください。

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