英語&翻訳解説【Waiting in Vain】
まず曲を理解する
一目ぼれした女性が振り向いてくれるのをひたすら待っている男性が主人公です。
ボブがIsland Recordsに残した最高に切ないラブソングです。
歌われている女性はかなり以前からに冷えた関係になっていた妻Ritaではなく、アルバムExodus制作時、ボブとホットな恋愛関係にあった最愛の人Cindy Breakspeareです。
生まれも育ちもまったく違うふたりは1975年にボブが移り住んだキングストンの高級住宅街Hope Roadで運命的に出会い、すぐに意気投合し、激しい恋に落ちたと言われています。
ボブがこの曲を書いた前年(1976年)、ジャマイカ代表としてMiss Worldの栄冠に輝いたCindyは海外で過ごす機会が増えていました。アルバムRastaman Vibrationをリリースしたボブもツアーのため長期間ジャマイカから離れていました。
愛する人と会えない時間に味わった切ない自分の気持ちを片想いのストーリーに昇華させてボブが書いたのがこの曲です。
隣人愛、人種差別、聖書の教えなどをテーマとしたナンバーだけでなく、こんなピュアでソフトなラブソングを書ける人間的な幅があるからこそ人はボブをone and onlyと呼ぶんだと思います。
レゲエという枠を越えて数多くのアーティストにカバーされ続ける永遠の名曲です。
英語表現と訳し方
Wait in vain for your love
Waitは「待つ」、in vainは「無駄に」、「むなしく」です。
For your loveは「君の愛を」という意味です。
直訳すれば「君の愛をむなしく待つ」となります。
これでは硬すぎるので、やわらかい言葉を使って「待ってがっかりする」と訳しました。
I rest my eyes on ~
ネット上の歌詞紹介サイトではI blessed my eyes onとなっていますが、明らかに聴き取りミスです。
Rest eyes on ~で「~に目を留める」という定型フレーズです。
「君に目を留めた」では詩的に響かないので「君に目を奪われた」と意訳しました。
Follow through
Followは「追いかける」です。
Throughをプラスして「最後までやり遂げる」というニュアンスを加えています。
テニスなんかでラケットを最後まで振り切る動作もfollow throughと言います。
Way down on your line
Way downは「ずっと下」という口語表現です。
反対はway up(ずっと上)です。
Lineは「順番を待つ人の列」を指します。
Way down on your lineで「君を待つ列のずっと後ろ」です。
少しアレンジして「君のリストのずっと下」と訳しました。
A puppet on a string
A puppetは人形劇に使う人形のことです。
On a stringは「ひもにつながれた」です。
A puppet on a stringは操り人形と言う意味でよく使われるフレーズです。
A marionetteと言い換えることができます。
Do my thing
直訳すると「自分のことをする」です。
Do one’s thingで「やりたい通りにやる」という意味になります。
似た表現でdo the right thingというのもあります。
「正しいことをやる」という定番フレーズです。
Dumb
「馬鹿な」、「愚かな」という意味でよく使われる形容詞です。
Stupidと言い換えることができます。
It’s summer is here
文法的におかしいです。
It’s summerとSummer is hereという同じ意味の短い文がふたつ一緒になってしまっています。
歌詞で大切なのは文法じゃない、中身なんだよというボブのメッセージが託された一節なのかもしれません。
Like I said
「前にも言ったように」という定番のフレーズです。
「こんなこと何度も言いたくないんだよ」という意味を込めて使います。
It’s been three years since I’m knocking on your door
ここも文法的におかしいです。
正しくはIt’s been three years since I began knocking on your door、あるいはIt’s been three years, but I’m still knocking on your doorです。
どちらの形でも「君のドアをノックし始めてからもう3年だ、でもまだノックし続けてるよ」という意味です。
Feasible
「実現可能な」という意味の硬めの言葉です。
ほとんどの場合、possibleという単語に置き換えることができます。
Is it feasible?は言い換えるとIs it possible for you to love me?という問いかけです。
少しアレンジして「俺にチャンスはあるのかな?」と訳しました。
Grief
死別、苦痛など特定の不幸による深い悲しみのことです。
ほぼ同じ意味でgreat sorrowを使うことができます。
Relief
様々な意味を持つ名詞です。
文脈によって「軽減」、「安楽」、「救済」、「解放」などと訳します。
ここでは「救済」、「救い」という意味です。
Tears in my eyes burn
Tears in my eyesは「目の中の涙」です。
それがburn(燃えるように熱く感じる)という詩的な表現です。
「涙で目が焼けるように熱いんだ」と訳してみました。
Wait on
On以下のことが起きるのを「待つ」というフレーズです。
ここではyour love がon以下に相当するので「君の愛(が実現するの)を待つ」という意味です。
Run from
From以下から「走り去る」、「逃げる」です。
「遠くへ」という意味のawayが入ってrun away fromという形になることもあります。
同じ意味でescape fromも使えます。
韻を踏んでいる箇所
次の7か所で韻を踏んでいます。
翻訳する上で難しかった点
I don’t wanna wait in vainの訳し方が難しかったです。「むなしく待ちたくない」→「待ちぼうけなんて嫌だ」→「振り向く気はあるのかい?」と様々な訳を試してみましたがどれもうまくはまらず、かなり悩みました。最終的に一番ナチュラルな気がした「待ってがっかりしたくない」を採用しました。
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