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女三代。映画『紀ノ川』

こんばんは。きなこもちです。

私は女性に産まれて、好きだったものが男の子が好むようなものが多かったので、幼い頃はなんで男に生まれなかったのかなと思ってました。ただ、その当時は女性だから恵まれていると言える部分があまりわかっておらず、今は男に産まれないほうが私には向いてたのかなぁと思っています。

今回は時代によって求められる女性像が変わっていく様子を一人の女性を通じて追いかける映画『紀ノ川』を紹介します。

あらすじ

紀本花は当時の女性としては珍しく女学校に通い、非常に器量もよかった。母の豊乃はいろいろと難癖をつけて縁談を断ってきたが、ついに和歌山県六十谷の真谷敬策の元に嫁ぐことになった。紀の川を船の行列で下る越し入れで、白無垢の花嫁が真谷家に向かうのだ。

敬策はとても頭の切れる夫で、花との相性もとてもよかった。そのうち、文緒という女の子にも恵まれた。花は文緒にも学を付けてもらおうと女学校に通わせるが、そこでは女性参政権運動が活発におこなわれており文緒も感化されて運動に参加するのだった。

明治、大正、昭和を生き抜く女性の物語

明治時代生まれの女性としては非常に珍しく高い教養を身に着けた女性・花が主人公です。ただし、そういった学を身に着けているという話が直接的に出てくるシーンは映画の中ではほぼなくて、敬策の弟・浩策との会話で「あ、この人、頭いいぞ」と気づくように作られています。明治生まれの女性だと女に学をつけさせる必要はないとされていましたが、花の母・豊乃が頑としてその価値観を受け入れず、女学校に通わせた結果なのです。

ですから文緒も豊乃の方針と同じく女学校に通わせるわけですが、その時には花の時よりももっと激しく女性の権利を求める人々が増えており、花には想像できないほど文緒が活発な女性に育っていきます。大正デモクラシーです。

なんやかんやあって文緒も結婚し、文緒の娘で、花の孫である華子が誕生します。そして、私の中でもっとも印象に残った、花が死ぬ前に華子から投げかけられた無邪気な質問がラストを飾ります。これはぜひご自分の目で確かめてください。ものすごく心に迫るものがあります。

この流れを非常に淡々と語る映画なのですが、これがすごくいいのです。花から見える明治、大正、昭和の強い流れと動きが静かに、時に激しく、文字通り川のように語られていく。見る文学といった感想を持ちます。

女性の権利が確かになかったかもしれないが、花は幸せそうだった

私の感想はこれに尽きます。女性参政権がなく、夫を陰で支え、娘の問題のときには学校まで頭を下げに行く。その姿が文緒からすると古臭くて仕方ないのもわかるのですが、花はそういう生き方しかできないし、できないからといって不自由なわけでもないのです。

ぶっちゃけ夫の敬策がめちゃくちゃ優秀なので、困ってないとも言えますw でも言いなりではなくて、言うことはちゃんと言えてるんです。文緒のことが心配で、いろんなことを自分なりに調べますし、根回ししたりもします。抑圧された女性では決してありません。

抑圧され、姑にいびられ、夫の言いなりになり、娘にもバカにされるという話だったら、この映画を紹介しません。豊乃が花に知恵を授けようとした時点で、同時代のほかの女性よりも恵まれていたのかもしれないのですけど、それでも社会の大きな流れに飲まれつつ飲み込まれすぎず生きていく強い女性の話で、反発する以外にもこういう生き方があるのだなと素朴に思える映画です。

まぁだからこそ華子の花への質問が心に突き刺さるとも言えます。。。

おわりに

強い女性というと、今だと物理的に強い女性や男勝りで男性に直接立ち向かっていく姿が思い起こされるかもしれませんが、この映画の花のように静かな芯の強さをいろんな人に知って欲しいです。

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