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読書ログ_小説「夏美のホタル」

森沢明夫さん著書の小説。
5年ほど前に映画化もされていたんですね!映画は疎いもので、なかなかこういうことを小説を読んだ後に知ることもあったり(苦笑)

夏らしさを感じたくて選んだ1冊です。

あらすじ

写真家志望の大学生・相羽慎吾。卒業制作間近、彼女の夏美と出かけた山里で、古びたよろず屋「たけ屋」を見付ける。そこでひっそりと暮らす母子・ヤスばあちゃんと地蔵さんに、温かく迎え入れられた慎吾たちは、夏休みを「たけ屋」の離れで暮らすことに。夏空の下で過ごす毎日は、飽きることなくシャッターを切らせる。やがて、地蔵さんの哀しい過去を知った慎吾は、自らできることを探し始めるが…。心の故郷の物語。

読んでみて

今の自分の心境にぐいぐい刺さる言葉がたくさんあって、

人間ってのは、何かと何かを比べたときに、いつも錯覚を起こすんだって。だから、自分と他人をあまり比べない方がいいって。(中略)他人と比べちゃうとさ自分に足りないものばかりに目がいっちゃって、満ち足りているもののことを忘れちゃうんだってさ。

周りに比べて遅れをとっていたことを焦る主人公にとって、この言葉はまさに「魔法の言葉」だったそう。

周りと比べるくせ。私もそうだ。そうやって自信を失っている。常に錯覚を起こしていたということなんだな。そう、足りないものばかりに目がいきすぎていたんだと思う。

この言葉にはハッとさせられた。

「才能ってのはな、覚悟のことだ」
「どんなに器用な人間でもな、成し遂げる前にあきらめちまったら、そいつには才能がなかったってことになる。でもな、最初に本気で肚(はら)をくくって、命を懸ける覚悟を決めて、成し遂げるまで死に物狂いでやり抜いた奴だけが、後々になって天才って呼ばれてるんだぜ」

続けることが才能だなんてことを聞いたりもするけど、最初に覚悟を決めるっていうのもすごく大切なことだな。そう、だらだら続けるんじゃだめだ。肚くくって本気でやるからこそ才能に昇華していくんだ。それが本物だ。

これも主人公が言われた言葉だけど、私にもぐさっと来た言葉。私には覚悟はできているのか?


・・・とここまで書くと、すごく自己啓発本なの?って思うかもしれないけど、ひと夏の出会いからの心の交流の物語です。
優しい・あったかい世界が広がっています。
とにかく、山里で暮らす人々みんなあったかい。一見ぶっきらぼうな仏師(仏像を彫る人)も出てくるけど。でも本当に”一見”ってのが後でわかります。

強張った身体とか、心とか、そういうのがじんわりとほぐれていくような、”読む温泉”のような一冊。

あと、タイトルにもある「ホタル」のシーンが本当に大好き。
山里の様々な自然の描写が本当に頭でイメージできるぐらい、素敵な描写ばかりなんです。
で、その中でもホタルを観に行って、「ホタルブクロ」という花の中にホタルを入れるというシーンがあるんです。
あまりの幻想的な綺麗さに思わず夏美も

「なんだか、妖精が使う照明器具みたい・・・」

って言っていて◎

なんて素敵な例えなの・・・!!!夏美に思わずキュンキュンしてしまったし、でもその後で慎吾自身も「それは少しも大袈裟なものではなかった」って言っているぐらいだから、本当にそれぐらい素敵なものなのだなと。

あぁホタル見たい・・・!自然をたっぷりと味わいたい。

心ほぐれる優しい世界が広がる小説でした。

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