マガジンのカバー画像

366日紡ぐ【夜のうた】

366
運営しているクリエイター

2023年12月の記事一覧

366日紡ぐ【夜のうた】304日目 12月3日「小さな月」

366日紡ぐ【夜のうた】304日目 12月3日「小さな月」

夜になりたくて
部屋を真っ暗にして
目をつむり
心にある光を
小さな月にする

366日紡ぐ【夜のうた】305日目 12月4日「想像」

366日紡ぐ【夜のうた】305日目 12月4日「想像」

星が鍵盤だったなら
どんな音が鳴るのだろう
月を椅子にして
星を弾く
私にしか聴こえない音が
夜に響く

366日紡ぐ【夜のうた】306日目 12月5日「夜は鳴いた」

366日紡ぐ【夜のうた】306日目 12月5日「夜は鳴いた」

夜が来なくなった
あのきれいな夜が
あのうつくしい夜が
もう来ないのか
もう現れてくれないのか
代わりに私の心が闇に包まれたように
重くなる
もう一度見たい
もう一度私の窓へ来て
お願いだよ

少しして 夜は鳴いた
私の家の屋根の上で
首をかしげている

366日紡ぐ【夜のうた】309日目 12月8日「誕生日」

366日紡ぐ【夜のうた】309日目 12月8日「誕生日」

ホールケーキに蝋燭をさしていく
音のしないやさしさが手に伝わってくる
蝋燭に火を点けて 電気を消して
夜もケーキに近づいてきて
今日の主役が火を吹き消すのを見て
火の灯りの居場所を
僕のだというふうに奪っていく

電気をつけると部屋にいた夜はいなくなり
お祝いと拍手と笑顔で
明るくなる

おめでとう 今日は君の日だ
おめでとう
おめでとう

366日紡ぐ【夜のうた】311日目 12月10日「淡い」

366日紡ぐ【夜のうた】311日目 12月10日「淡い」

ノートの隙間に挟まれている
私の心は朝日が出る前の色
電気を付けない薄暗い夕方が
良く似合うよ

夜引き出しに閉まって
眠ってもらう

いつまでもそのままでいてほしいけど
いつかには目を覚ましてほしい
そして
変わっていく

366日紡ぐ【夜のうた】312日目 12月11日「百円玉」

366日紡ぐ【夜のうた】312日目 12月11日「百円玉」

月がみえないから
百円玉を夜空にはめて
銀色の月を作った

これで今日も
迷わずに済む
夜の迷路に

366日紡ぐ【夜のうた】313日目 12月12日「豆腐」

366日紡ぐ【夜のうた】313日目 12月12日「豆腐」

豆腐屋さんで豆腐を買って
夕食に冷ややっことして並べる
蛍光灯の光を浴びて
きれいにつるんとひかっている
なんだか月みたいだ

366日紡ぐ【夜のうた】314日目 12月13日「双子」

366日紡ぐ【夜のうた】314日目 12月13日「双子」

ひとつ卵を割ったら黄身がふたつ
銀色のボウルに黄身がふたつ
銀色の夜に月がふたつ

うれしいねって笑い合って
銀色の夜の中でふたつの月を混ぜて
塩という細かい星屑を入れて
また混ぜて
フライパンの上に
流して広げて焼くんだ

そうすると
薄くて美味しそうな
大きな月ができる

私たちも月になれるかな