君野てを

詩人。白い静寂に鉛を擦る。いつまでも。366日紡ぐ「夜のうた」完走致しました。物語など…

君野てを

詩人。白い静寂に鉛を擦る。いつまでも。366日紡ぐ「夜のうた」完走致しました。物語なども書きます。

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    今まで書いた140字小説をまとめています。有料記事です。

  • 366日紡ぐ【夜のうた】

    366日間夜の詩を書きました。

  • 誰かの言の葉まとめ

    2017年頃から物語の中で誰かが言っている台詞のように言葉を書いてTwitterに投稿していたもののまとめです。

最近の記事

  • 固定された記事

物語「祈りという約束」

その犬は知っていた。 自分は天国に行けるということを。 その犬はとある夫婦に飼われることになった。 綺麗な白い犬で、まるで天使のように見えたそうだ。 犬はあまり吠えたりもしないし、人や物を噛んだりもしない。 夫婦にとっては本当に天使のような存在だった。 それもお利口で、新聞をポストから取ってきてくれたりもする。 本当にいい子だ。私たちにはもったいないね。なんていわれて。 でも本当は、そうではないのだ。 犬は死んだら天国に行けることを知っているから、 いい子を演じているのだ

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      布を撫でる言葉

      • 詩「卵ごはん」

        死がなければ生がないということを忘れてしまう。忘れすぎてしまう。生きていると。生きることになれてしまうと。でもその、繰り返しが、きっと人生。

        • 一行詩「どうしたら、」

          意味があることと無いことは同居しているので意味があることは無いことだし、意味のないことはあることなんです。そう先生が言うので。頷きました。生きることに意味があるなら、意味がないということなんですね。いえ違います。意味があることと意味がないことをそんなに大事にしないで下さい。本当に大事なのは、そこではないのです。

        • 固定された記事

        物語「祈りという約束」

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        記事

          詩「海と川」

          出会いは待つことで始まっている。無意識の中でも私たちは待っている。いつか来る出会いを。あなたを、私を。

          詩「海と川」

          詩「さようなら」

          言葉にしたら風になる。もう戻ってはこない。だからもう一度、出会いたくなる。

          詩「さようなら」

          一行詩「大粒の一片、」

          お前が傷みを知らぬまま、心を水にしてしまえば、あの花のように落ちることは叶わぬ。生きたのであれば美しく哭け。傷んだままの”殻だ”で。死ぬのであれば美しく哭け。透明なままの真意で。それが弔いになって遺された者たちが受け継ぐ。生きたのであれば美しく哭け。

          一行詩「大粒の一片、」

          一行詩「帰ろうか、」

          帰ろうとするときの音はどこか寂しいね。ふっと手を合わせたときの、体温も寂しい。目を合わせても。どこもかしこも寂しくて、それはそれまで一緒にいた相手が、景色が、日々が、大切だったからなんだろうな。風もなんだか寂しくなって、心の隙間に触れてくる。おかえり。そう言ってくれるかい。またの日に。

          一行詩「帰ろうか、」

          物語「孤独を泳ぐ」

          あれは孤独が詰まった海だった。 「特別という言葉が持つ孤独の深さを君は泳いだことはあるかい」  夜を海にして釣りをしているところ、隣で同じように釣りをしている男が話しかけてきた。 「特別? 特別なんてものはおいらにゃ関係ないね。そもそも特別だったらこんな釣りなどしていないよ」  そうか。肯定とも否定とも言えないような返事だった。  この釣りは金に困っているやつらの仕事だ。夜に泳ぐ雑念を釣って夜の景色を綺麗にする。でもこの仕事は危険なんだ。雑念に食われちまうこともある

          物語「孤独を泳ぐ」

          詩「人と色」

          詩「人と色」

          140字小説集「手にとる夜と欠片たち」

          通販サイトBOOTHで販売させていただいている140字小説集のnote版です。 すべてX(旧Twitter)に投稿した140字小説で180編あります。 紙でほしい方はこちらへどうぞ。 PDF版はこちら。 ※BOOTHで販売しているものから一部修正してあります。 ※あとがきは新しく書き直しました。 夜 「浅い夜はお好きですか」黒いハットを被った中年の男性が品のいい声で話しかけてきた。「今日の夜は浅いので、星がよく拾えますね」と、ポケットから小さいけれど光を煌めき放つ小石のよ

          ¥500

          140字小説集「手にとる夜と欠片たち」

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          一行詩「突き刺す、」

          それぞれがそれぞれの好きなものを愛したらいい。それだけのことがそれだけのことじゃないというのが生きるということなのか。他人と自分を一つの海のように境界のないものとして溶け合っている思考は、いつも苦痛を生む。あなたはあなただ。この言葉が線になったとき、生きるという心地が、至高になっていくのだろう。 あなたはあなただ。こんな曖昧な言葉がで的確に届くのは、なぜなのだろうという疑問も愛おしい。

          一行詩「突き刺す、」

          物語「忘れても忘れないもの」

          この猫の前世は本だった。 何でもない朝の日にコーヒーを入れて本を読む。 それが至高であると彼は知っていた。 だがそんな彼の日常を邪魔をする愛らしい小さな命がいる。 本を読んでいるとその本の上に乗ろうとするかわいらしい猫が一匹。 ノルウェージャンフォレストキャットという上品な長毛種だ。 その猫は小さな小さな手を彼が持っている本の上に乗せてぐっと押す。 彼はその行為に毎回困らされている。 構ってほしいのかと思って構ったり、ご飯が欲しいのかと思ってご飯をあげたりするのだけれどダメ

          物語「忘れても忘れないもの」

          一行詩「形、」

          視線で声を掬って、体温で言葉を拾って、感情で歌を流す。死んでいくような僕らだけど、意味を知らないまま生まれた僕らだけど、相対する気持ちが何か特別なものを作っていくんだ。青い月が昏い星が僕らの中で息をしている。暗闇の中で暗闇にならないまま、呼吸をやめないから。生きていく、生きていく。

          一行詩「形、」

          一行詩「切なさという魔法、」

          痛みなんて今までいくらでも食らってきたのに。優しさが鋭利になる時の痛みはどうしても慣れない。防ぎようがない。受け止める準備しかできていないからだ。あなたは優しいと知っているから。それを跳ねのけることなど、誰ができるのだろうか。誰が傷つかずに、受け止めずに、生きていけるのだろうか。

          一行詩「切なさという魔法、」

          詩「眠ろう」

          恋は足りない者たちの宴だ。いつだって記憶している、人生という欠陥を、埋めたくて埋めたくて異なる形を探し求める。でも僕らという私たちは、足りないのではなく足りないことに満ち足りた感情を持つべく生きていくのではないのかと思う。恋は足りない者たちの宴だ。宴が終わる頃、あなたはきっと幸福の居場所を自分の内側に見つけるだろう。

          詩「眠ろう」