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エッセイ/ただ歳を重ねているだけじゃない

ある日のこと。
自宅の水道が水漏れして、蛇口から水が出なくなった。原因は水道管付近に生えている大きな木の根っこが水道管を圧迫し、管をつなぐ部品が外れて水漏れしたことらしい。水がない生活は、一時でも大変不便だった。

その時、あさイチで自宅に来てくれた水道工事業者さんは、もうすぐ80歳になるという男性だった。現役でこの仕事を続けている。

「すごい元気ですね」

私は業者さんの年齢を聞いて驚きの声をあげた。
「私の父は75歳で他界しました」
というと、業者さんは、
「わたしも娘を亡くしました。まだ49歳だった…」
と、さびしそうに語りだした。
そんな話の展開は予測しておらず、それにも驚いた。

歳を重ねるということは、喜怒哀楽の経験をたくさん積んでいるということなんだな、としみじみ思った。

そうやって、生きている間にたくさん傷ついて、人の心に寄り添える人間に成長していくのかな。
ただ歳を重ねているだけじゃないんだな。

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