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トモニイコウ。

毎年、毎月、毎週、僕の心を煩わせ、心を踊らせる存在がある。

皆さんにも応援している人やチームやグループがあるだろう。




僕のそれはヴィッセル神戸だ。


ヴィッセル神戸とは、現在J1リーグに所属している兵庫県神戸市をホームタウンとするプロサッカークラブである。

僕はヴィッセルを応援するようになって約15年ほどになる。

いわゆるサポーターであり、ファンであり、推しである。




1サッカーファンの1ヴィッセルファンである。



アイドルやバンドと違って、スポーツクラブのファンは少し異質である。
チームの勝敗があり、結果が伴うからである。

リーグ戦やカップ戦など、週に1〜2試合ある中で、チームが勝てば、その週の生活はどんなことがあろうと大抵乗り越えられる。たとえカツアゲに会おうと、親父狩りに会おうと、ボンタン狩りに会おうとも、「まあヴィッセル勝ったしいいや」となるだろう。日常の小さな幸せを見つけられるほどの余裕があるし、笑っていられる。次の試合が楽しみになり、どんなストレスも吹き飛ばしてくれる。チームが負ければ、一週間は寝込み、枕を濡らし、「試合なんて星の数だけあるよ」と励まされ、「髪の毛切ろうかな」なんて思う。人によっては応援しているにもかかわらず、そのチームが怒りの矛先となる。チームに対し希望を持ち、理想があり、期待している証である。でもまた、来る試合を楽しみに生活を送る。


チームや選手と共に苦しみ、共に喜びを分かち合う。チームを支えているつもりが、気づけばサポーター側が支えられている。チームとサポーターは相互に補完しあっている。
それはどの世界のファンも同じである。

だが、このことをついつい忘れてしまうこともある。



神戸で生まれ、神戸で育ち、神戸で学び、神戸を愛した僕は、神戸でサッカーを始めたために、オーロラ閲覧条件ばりの条件を満たして、ヴィッセルとは切っても切れない関係となった。

僕の生まれ育った地元のすぐ近くに練習場があるので、これまた切っても切れない関係となるのだ。物心ついた頃から身近にいる存在である。こいつとは腐れ縁ってやつだ。

僕の血はクリムゾンレッドに染まり、遺伝子は白黒で羅列している。

一人の男である前に、一人のヴィッセルサポーターなのだ。


この約20年、キングカズに憧れ、クニさんに男を学び、イルハンに裏切られ、嘉人に思いを馳せ、慶治朗の涙に震えた。

和多田のロングスローはいっぱい練習したし、ボッティの息子とも遊んだし、森岡に憧れて基礎を磨いて、レアンドロばりのシュートを習得しようと練習した。(ポジションどこやねん)


プレーを学んでいたつもりが、いつしかヴィッセルが好きになっていた。


なぜ好きかと問われると、一言では言い表せない。期待しては裏切られ、毎年夏場は試合を見るたびに凹むことが多い。ユニを着てると指をさされ笑われることもあった。毎年中位と下位を行ったり来たりで、「今年こそは」と毎年思えど連敗地獄がやってくる。それでも応援し続けるのは、様々な逆境を乗り越えて、地元を背負って戦ってくれているから。ノエスタやユニバーでいつも心を奮わしてくれるからである。


スタジアムに入るたびに、鳴り響く太鼓の音と声援には何度心が踊ったか。ピッチから香る芝の匂いはいつ嗅いでも心地いい。全女子があの匂いのシャンプーにしたらええのに。


勝利の港は街中で急に歌ってやろうかと幾度となく考えたし、ウォーミングアップが始まる際の選手登場で流れているチャーリーズエンジェルのテーマやレイジのゲリラレディオは友達との待ち合わせで流しながら登場してやりたい。スタメン発表時に流れるkissバージョンのdo you remember rock’n’roll radioでhandsをcrapし、選手入場時のパイレーツオブカリビアンの彼こそが海賊を聞けば、いつ誰が殴りかかってきても、全力で返り討ちにしてやろうと思ってしまうほど熱くなる。そして、神戸讃歌は永遠に僕のテーマソングだ。


 いつしか、ヴィッセルはJリーグでも一目置かれるチームとなった。「バルサ化」を掲げ、イニエスタなどの世界屈指のタレントを迎え、日本でも指折りの陣容を揃えたのだ。

あのイニエスタがビジャがポドルスキがフェルマーレンが神戸のユニ着るとは。三木谷様には一生頭が上がりません。同じ名字の人に出会ったら靴舐めてまいそう。いや舐めさせていただきます。




そんなチームの目標は、JリーグタイトルとアジアNo.1クラブになることだ。

数年前からは途方もなく遠い目標であった。だが、今は十分に狙えるチームになってきている。そうなれば、自ずとサポーターはより一層期待が膨らみ、他クラブのサポーターからは一目置かれるようになる。しかし毎年、なかなかリーグ戦では思うような結果が出ない。試合内容やチーム状況なんかは割愛するが、例年のごとく浮き沈みの激しいシーズンを送り、自分の中で「もう期待なんてしない」と何回も思った。


それでも今年の元日、ついにヴィッセルが歴史ある天皇杯を制し、クラブ創設から25年でようやくタイトルを獲得した。


今まで他クラブがトロフィーを掲げているのを見て、「いつか神戸が」とか「サポーター席あんな埋まるんかな」なんて思っていたことがついに叶った。長年の思いが実り、ヴィッセルに関わる全ての人たちが歓喜し涙した。その上で全俺も泣いた。苦しいシーズンを過ごしても、満員の新国立競技場で堂々と胸を張って闘う選手たちを見て、これからも陰ながら支えていこうと思った。どんなオーケストラやオペラ歌手の歌声も、新国立に響く神戸讃歌には敵わない。「もう期待なんてしないなんて言わないよ絶対」と誓った。

そして今年、天皇杯で優勝したことにより、アジアNo.1クラブを決めるアジアチャンピオンズリーグ(ACL)への挑戦権を得た。目標にまた一歩近づいたのだ。ACL初戦のジョホール戦で、ACLのアンセムが流れた時には「ここまできたのか」といろんな思いが込み上げた。

だがそれも一昔前のようで、コロナ禍で状況が変わった。

コロナの影響もあり、シーズン中断を挟み、今シーズンは過密日程となった。密集密閉密接過密の4密である。

今年も厳しいシーズンとなってしまった。例年のごとく浮き沈みの激しいリーグ戦となり、なかなか勝てないチームに「もう期待なんてしないなんて言わないなんて言わないよ絶対」とまで思った。

チームはリーグ戦で5連敗を喫した後に、カタールで集中開催となったACLに参戦。「こんなチーム状況じゃ勝てないよ絶対」なんて思った。


しかしチームはグループリーグを突破。初参戦のACLで一つチームの歴史を作った。アジアチャンピオンになるには、あと4つアジアの強豪を撃破しなければならない。


そんな中で、苦しいシーズンを送っていたチームが苦しみながらも勝ち上がり、アジアベスト4まで勝ち進んだのだ。


日本のクラブでもここまで勝ち進んだのは数クラブしかない。結果、ベスト4で延長戦の末、かつて神戸に在籍した金度勲率いる韓国のチームに惜しくも敗れてしまい、敗退となってしまった。この試合に思うことはあれど、あのヴィッセルがJリーグの全クラブ、そして日本サッカーを背負って堂々とアジアの舞台で戦う姿を見て、目頭が熱くなり、心を奮わさずにはいられなかった。



SNSでフィールドの外からいろんなことを言う人が増えているが、そんな奴らよりも僕はヴィッセルに「夢を見させてくれてありがとう」と伝えたい。目標に対して、どんなスピードでも、一致団結して進み続けるチームの選手やスタッフの戦う姿勢を見ていると、覚悟が伝わって、「俺も頑張ろう」と思えた。万年中位の、時にはJ2に落ちたこともあるチームが、沢山の方々に支えられ、一つ一つ大きな舞台に進み続け、大舞台で堂々と戦う姿が誇らしかった。僕たちサポーターに多くの夢を与えてくれている姿はカッコ良くて、いつまでも応援したいと思える。「スタイルがない」や、「土台がない」や、いろいろ言われた中でも、ACLでの戦いは間違いなく歴史が紡いだ戦いだったと思う。

だからこそ負けたのはやっぱり悔しい。

確かに早く結果が欲しい。タイトルが欲しい。でもまだ世界的に見ても、チーム、ひいては日本サッカーの歴史は浅い。バルサも歴史があるのだ。百年後もずっとヴィッセルの勝利への航海を支えていけたらいい。何年先も、ヴィッセルと共に歳を重ねていければいい。どれだけ挫けたとしても共に立ち上がればいい。土台も伝統もスタイルもだんだん築いていければいい。その先に、常に勝ち続けるようなチームになっていれば僕は嬉しい。またリーグで成績を残して、ACLに挑戦すればいい。チャンスなんて星の数だけある。チャレンジは一回きりではない。だからサッカーは面白い。ヴィッセルは僕たちの街の、そして僕たちの誇りだ。







僕はずっとずっと命ある限り、神戸を愛したい。





トモニイコウ。




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