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千利休だってコーヒー飲みたい

 今の時代、「お茶でもしない?」といって、茶室に入ってお抹茶をたてることは珍しく、大抵の場合は喫茶店に入ってコーヒーを飲むと思います。それ、茶じゃなくて茶色やん、とのツッコミが聞こえてきそうですよね。

 この現状を千利休が目の当たりにしたら。寂しがるかもしれないし、500年経ってもこうして色濃く残っていることを誇りに思うかもしれない。それか、室町時代はあんなに流行っていた茶よりも浸透しているコーヒーとは一体なんぞや、飲んでみたいわ!と思っているかもしれませんね。

茶道体験しました

 先週はじめて茶道を体験しました。茶室という異空間で、一つずつ丁寧に敬意を払いながらお茶を飲むと、お茶を飲むというありふれた行為がガラッと変わる。お茶ってこんな濁り方してるんだ、とか外を歩いてた時には気付かなかった小鳥の声が聞こえたり。とっても素敵な学びの多い経験でした。

 こんな素敵な文化を残してくれた千利休へ何かお返しがしたい。考えた結果、大変恐縮だが、このnote上で僕が大好きなコーヒーをお点前したいと思う。

千利休へコーヒーを伝える

 まず大前提として、
コーヒーを点てる=飲む人にそのコーヒーを「伝える」
この公式が成り立つ世界では、逆に言えば、
人に何かを伝える=その人にコーヒーを点てる
ことと同義。従って、何かを伝えるときのプロセスは、コーヒーを点てるときのプロセスと同じなのだ。
ぼくが大好きなちきりんさんは、伝えるプロセスを、

1.伝えたいメッセージが決まる(浮かぶ)
2.そのメッセージを伝えるための論理構成を決める(考える)
3.文章に必要な材料(情報)を集める
4.文章を書く

とおっしゃっている。これを見た時、あ!やっぱりコーヒー点てるときと一緒だ!とビビッときて、上記の公式に確信を持ちました。ということで、ちきりんさんの4ステップに沿って、僕なりのコーヒー抽出4ステップを紹介する。

1.どの味を抽出するか(何を伝えるか)

 まずは豆の特にどの部分をカップに落としたいか決める。この豆はピーチっぽいみずみずしい甘さが好きだな、とか、寒くなってきたから何となく冬っぽく、この豆のダークチョコっぽい香ばしさを重視したいな、とか。

 好きな曲をおすすめする場合は、その曲の歌詞が良いのか、ベースラインが心地よいのか、ライブverがいかしてるのか。

 ここは完全に直感。だから一番ワクワクするところ。

2.レシピをつくる(どうやって伝えるか)

もしかしたらコーヒー抽出は、熟練の職人芸と思われているかもしれないが、そんなことは全くない。レシピ。とにかくレシピ。ピピピなのである。

コーヒーのレシピを組み立てるときは主に3つの要素が関わってくる。

①粒度 (細かいほど、豆の多様なフレーバーが出てくる。一方、雑味も出やすい)

②湯の温度 (高いほど、成分を多く抽出できる。一方で雑味も)

③時間 (長いほど、酸味~苦味まで万遍なく出る。一方、後半は雑味も)

レシピは、このバランスが大事。どう組み立てれば出したい味がクリーンに出てきてくれるのか。

では、具体的にどうやってレシピを組み立てるか。

例えば、「松岡修三が、相対性理論についてこと細かく、めちゃくちゃ熱血に、5時間語る講演会」があったとする。恐らく聴講者は錦織くんだけだろう。言わずもがなバランスが悪い。バランスもくそもない。

松岡修三がお茶の間に刺さっている理由は、バランスが絶妙だからと思っている。彼は、自分が伝えたいメッセージを伝えるためには、

「シンプルに、パッションをもって、飽きられる2歩手前くらいの時間」

が最適なレシピだと考えているのだろう。つまり、粒度は粗く、湯温高めに、短めにコーヒーを点てる。トライ&エラーでこれらの要素をコントロールしながら、出したい味が最も顔を出すベストポイントを探る。これがレシピのつくりかた。

3.どの器具を使うか(何が必要か)

 次は、レシピを実現させるために必要な道具の選定。コーヒーの場合、粒度は細かくすると粉が詰まってお湯の抜けは悪くなり、レシピの時間よりも伸びがちになる。そこで抜けの良いドリッパーを使い、細かく挽いても時間を掛けすぎないよう調節する。

 松岡殿の場合どうだろう。言葉がシンプルな分、もしかしたら濃度がちょっと薄いかもしれない。そこで濃度感を足すために、テニスと関係なくてもラケットを持ってウェアを着て、コートに場所を移している様子が見られる。彼にとって、伝えいことをレシピ通り再現するためにはラケットが必要なのだろう。

4.コーヒーを点てる(アウトプットする)

 最後は1~3を踏まえて実際にコーヒーを点てる。2で何よりレシピと言ったが、仕上げの段階では道具を使いこなす技術もある程度必要。コーヒーでいうと、思い通りお湯をコントロールする技術とか。

修ちゃんの場合、パッションを活かすためのボディーランゲージの技術が巧み。大きくゆっくり。その熱さに、見ている人が置いてけぼりにならないように。ほんとに技術で伝えているなーと感じる。

以上、コーヒーを伝えるプロセスでした。

偉そうに伝えるプロセスなんか書いたが、気付いたら、元々伝える対象であった千利休が完全に退室し、松岡修造に主役がすり替わっていた。ブレブレの伝達となってしまいました。

でも、これはこれでいいんじゃないか。
頑張って「そこ」を目指しても意味が無い。
だって「そこ」なんて無いから。
あるのは今「ここ」だけ。

結構なお点前で。

………………終

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