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写真と民俗【犬神憑き】

※この記事は約6分で読めます

どうもメダカです
初めましての方は初めまして
金田一耕助シリーズで有名な【犬神家の一族】がYouTubeにて期間限定で無料配信中ですね。
ところで犬神家犬神(狗神)ってなにか知ってますか?
今日はそんな犬神とはなに?についてと、犬神ゆかりの地について記事を書きました。
最後までお読みいただければ幸いです。

【犬神家の一族】
配信期間:11月10日(金)~11月23日(木)


※蠱毒の解説にて
動物への残酷な描写説明と虫のイラストが出てきます。苦手な方はご注意ください。
苦情は一切受け付けません。

犬神ってなに?

まず犬神とはなにか?
いくつか説があり一番有名なのが蠱毒(こどく)によって創られた妖怪説。
他にも平安京の妖怪・鵺(ぬえ)が源頼政より退治され四散した体が四国に逃げて生まれた妖怪説。
または弘法大師が山で修行する際にイノシシ除けに描いた犬の絵に弘法大師の霊力が宿り犬神に変化した説など数々の説があります。
特に有名なのが蠱毒説鵺説で、伝承や妖怪などが好きな方なら一度は聞いたことがあると思います。

北斎季親 化物尽絵巻【犬神】

蟲毒説

蠱毒(こどく)とは本来は複数の虫を一つのツボに閉じ込めて、共食いをさせ最後に生き残った一匹を呪詛の道具に使う呪術の一種です。

時代と共に蠱毒は進化をしていき、虫だけでなく蛇や犬などを使う方法もうまれ、犬を使った蠱毒の場合共食いをさせるだけでなく、
首から下を土に埋め餓死寸前にまで追い込んだ犬の前に餌を置き、餌を必死に食べようとする犬の首を切り落とすという方法があります。

このように残酷な方法で殺された犬は強い怨念を持ち犬神になると信じられており、
こうして人の手によって創られた犬神は作り主とその子孫に取り憑ついて、一族に繁栄をもたらすと言います。

漫画や小説によく出て来る
メジャーな呪いの一つですね

鵺説

蠱毒と同じくらい有名なのが鵺説ですね。
鵺とは平安時代、夜な夜な黒い雲と共に天皇の御所に現れ、不気味な鳴き声で鳴き恐怖と心労で天皇が病に伏したと言われる伝説の妖怪です。

その妖怪を退治したのが源頼政。
頼政が黒い雲に向けて矢を放ったところ、悲鳴と共に頭は猿・胴は狸・四肢は虎・尾は蛇という奇妙な化物が地面に落ちてきました。
その化物を頼政の部下・猪早田がとどめを刺し退治したと言われています。

退治された鵺の体は四散し大阪湾を超え四国にたどり着き、
頭は讃岐の国で猿神・尾は伊予の国で蛇神・四肢は土佐の国と阿波の国で犬神に変化しこれが犬神の起源と言われています。
犬神と言えば四国となるのはこれが起源ですね。

歌川国芳【源三位頼政 鵺退治の図】

犬神憑きとは?

この犬神に憑かれた一族は【犬神憑き】【犬神持ち】【犬神筋】と呼ばれます。

一族に繁栄をもたらすいい神様?

犬神は家に富をもたらし一族を繁栄させると言われています。
「それっていい神様じゃん」と感じると思いますが、もちろんそんな事はありません。

犬神に憑かれた一族は気性が荒い性質になり、犬神は低俗妖怪の部類に入り頭も良くないので見境がありません。
例えば犬神憑きの人間が「隣の家は良い物を食べている、羨ましい」と考えただけで、犬神は隣の家に行きその食べ物を犬神憑きの家に差し出すまで隣の家族を苦しめます。

このような理由から「犬神憑きの家とは関わるな、婚姻などもってのほか」という風潮が村に根付き差別の対象となります。

邪悪な方法で作られた妖怪が
福の神のわけがありません

嫉妬心から生まれた妖怪?

もちろん現代社会においては、犬神が憑いた家は繁栄し隣近所の富を奪うなんて話は迷信である事は言うまでもありません。
ではなぜこのような迷信が生まれたのかを考えてみましょう。

※ここからは僕の憶測です。

ある日あなたの近所に住む家族が何かのきっかけでお金持ちになったとします、仲が良ければお祝いする気持ちになるかもしれませんが、
そこまで親しくない家族だった場合まずは【嫉妬】の感情が生まれる可能性はありませんか?
噂好きの近所のおばちゃんは「あの家はきっと悪いことをして、金を稼いでるに違いない」と言うかもしれません。
あるいは「あの家が富を独占してるから、我々庶民はいつまでも貧しいんだ」と言い出す人がいても不思議じゃありません。
成功者に向けられる感情は尊敬より【嫉妬】です。

そんな根拠のない差別に正当性を持たせるために考えられたのが犬神憑きではないのでしょうか?
「あの家は犬神という邪悪な呪術を使って成功したんだ」「我々が成功できないのは犬神憑きのあの家に富を奪われてるからだ」「そういえばあの家の人間は気性が荒い、きっと犬神憑きに決まってる」

このように嫉妬する感情が先にあったにも関わらず、「悪いのは犬神を使うあの家であり、嫉妬してるのは向こうで我々は被害者。犬神憑きの家が差別されるのは、それ相応の理由がある」という理屈を後付けで作り、【嫉妬】する醜い感情に都合のよい言い訳を作ったのではないかと考えます。

※ここまで僕の憶測でした。

般若の面は人の嫉妬と恨みを現す面です
嫉妬と恨みは人の心に鬼を作ります

犬神祓いの神社

成功者への差別に正当性を持たせるために都合よく作られたと思われる犬神伝説ですが、もちろん実在すると考えられる事象もあります。
原因は不明だけど、謎の体調不良や夜中に奇行を行う病などなど、
犬神に憑かれているのが原因と思われる自称は現代でもあり、
犬神憑きの本場と言われる四国には犬神祓いで有名な神社もあるくらいです。

徳島県三好市にある賢見神社(けんみじんじゃ)は犬神払いで有名な神社で、自分に憑いた何かをお祓いをしてもらう為に、日本中から参拝者が来ることで有名です。

そんなわけでもちろん行ってきました賢見神社
徳島県と愛媛県の県境にあり、わりとガチな秘境です。
カーナビ通りに行けば行き止まりに合い、周辺の小さな立て看板を頼りに、「こんなところ入って平気なのか」と不安になる道を信じて進んで行った先にあります。

※行かれる方はある程度迷うのを前提に行かれた方が良いかと思います。

どのくらい山奥かと言えば
このくらい山奥です
賢見神社本殿
山奥ですが結構立派な神社です
休憩室には賢見神社を紹介する
新聞の切り抜きもありました
ここから奥社へ下っていきます
ここから永遠と下っていきます
体力に自信の無い方は杖を用意しましょう
下りきった先にあるのが奥社入り口
賢見神社奥社
雰囲気満点です

※個人的にはいわゆる悪魔祓いなどのお祓いは精神的な問題に対して、
神秘的な存在に答えを求める人がプラシーボ効果によって、回復しているのではないかと思っていますが、こんな事言ったら怒られちゃいますね。

まとめ

いかがだったでしょうか?
成功者は妬まれる
(身元不明でありながら一代で成功する犬神 佐兵衛)
自分達が成功できないのは誰かが我々から富を奪っている
(後から現れてすべてを奪い去る野々宮 珠世とそれに嫉妬する三姉妹)

犬神憑きが嫌われる根拠と、犬神家の成り立ちや人間関係が似ている感じがするのは僕だけでしょうか?

【嫉妬・妬み・怨み】によって行動する物語の登場人物達に犬神という名前はピッタリなのかもしれませんね。

とにかく無料公開中なので見た事無い人はぜひ一度見てください、
約50年前の映画ですが間違いなく名作です。

ここまでお読みいただきありがとうございます。
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犬神を作る蠱毒に限らず、呪いって何?って方にはこちらの記事がおすすめです。

参考文献


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