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「呪い」と書いて、何と読む【呪術解説】

はじめに


みなさんは「呪い」という言葉を見たときに、ちょっとドキッとしませんか。
そういったときに頭の中で自動音声で流れているのは【ノロイ】というおどろおどろしい音だと思います。
しかしこの漢字、【ノロイ】と読む場合もあれば【マジナイ】と読む場合もあります。
こちらの場合は、少し毛色の異なる印象を受けます。
近場であれば、神社や占い。怪しい雰囲気は払拭できずとも、攻撃的なイメージが少しは減るのではないでしょうか。

それにしても、なぜ2通りの読みが存在し、それぞれに異なる印象を私たちは受けるのでしょうか?

めくるめくめぐるの世界にようこそ。書店員VTuberの諸星めぐるです。
今回の解説はそんな「呪詛」のお話
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呪詛(のろい)について

【のろい】は命令の動詞?

まずは、そもそもの【のろい】という言葉の語源からめぐっていきましょう。
漢字が当てられる前のやまとことばにおいて、【のろい】は、もともとは動詞だった可能性があるようです。

のろい
「怨ある人に禍(マガ)を負ふせむと、ふかく一向(ヒタスラ)に念ひつめてものする所為(ワザ)ときこゆ」

伴信友・方術源論より

つまり、人の身の上に不幸や災厄を招くように祈る。そのために呪的な方法を用いることをいう。という意味だとされています。


伴信友(ばん・のぶとも)は、江戸時代後期の国学者。

また、語源として命令、宣言を含意する「宣る」(ノル)や「詈る」(ののしる)に由来するとされています。

現代においての【のろい】
私怨や私利私欲で、密かに神仏あるいは霊の力を行使して他人あるいは他人の所属する集団に危害を加えようとすること、またはその実践のこと。

デジタル大辞泉

さらに、歴史上は怨霊の祟りを指すことも多く、日本三大怨霊はここに含まれます。

『北野天神縁起絵巻』に描かれた、清涼殿落雷事件は菅原道真公の祟りとされている


『古事記』では多彩な【のろい】の言葉


じつは、『古事記』にみえる【とこい】【かしり】など同義の古語があります。
それぞれの意味には諸説あるのですが、【のろい】と同じような意味で用いられていたことは確かなようです。
今回はそれぞれの一例を紹介します

「トコイ」→名詞

【とこい】とは、

言霊(ことだま)によって、「憎むかたきに禍(わざわい)あらしむとてその人を思いつめ、凶言(まがごと)して禍あらしむべく神に請うてする術」

伴信友・方術源論より

つまり、【とこい】も人をのろうために呪的な行為をすることをいいます。
さらに、自分の潔白をあかすために、神に対して自己詛盟(そめい)することもあり、人を呪詛(じゅそ)するときには「のろふ」自己詛盟的な意味をもつときには「とこふ」といった使い方もあるようです。


言霊といえば、イザナギ・イザナミよね

「カシリ」→名詞?

こちらも【トコイ】と同義ながら、「ことに稜厳(いつ)々々しき術」
とされるが、現在使われていない古語のため、詳細は不明。
神に祈って、人をのろうことをいうようです。


「蠱物」(マジモノ)→マジナイ

さいごに、【まじない】の語源も紹介します。
現在の「呪い」「呪詛」と同義ですが、邪悪な意図を含意することは時代が下るにつれて少なくなり、「呪い」(マジナイ)の語は所作や道具の使用による実践によって「福」をもたらす方面で使用されるようになったようです。
このことからも現代の印象がやわらかいものなのは、その意味の中に祈祷などが含まれているからのようです。

御祈祷用の神棚

いかがでしょうか。
今回はここまでとして、次回は【のろい】の歴史について解説します。
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