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日本企業の英語キャッチフレーズ vs  ヘンな日本語

For beautiful human life
Celebration of Individuality
Make it possible with Cannon
Be a driver
imagine. change.
Smile for all
The Power of Dreams
Light you up
Drive your Ambition
Beauty Innovations for a Better World

 これらは日本の大企業が掲げている英語のキャッチ・コピーである。トップに出したコピーは、ヘンだと言って物議を醸したものだ(だからか、もう使われていない)。それ以降、こういうキャッチには注目するようになった。何度も記事に書いているが、私は後天的に義務教育から始めた英語との付き合いのため、また、英語で教育を受けた経験もないため(高等教育における専門も英語ではない)、ネイティブ並みの語感はない。が、多少は英語に触れている時間が「一般的な日本人」(とは何を指す? と、噛み付かれるかな……)よりも長いと自認しているので(英語のニュースも聞くし、本も読むし、そこそこ書くし喋るが、それで飯を食えるレベルではない)、英語における気持ち悪さに働くアンテナは一応立っている。
 これって普通に使われる表現なの? 言いたいことは分かるけど。自動翻訳もかなり優秀になってきているけど、そこから引っ張っている、風な匂い――は分かる。歌詞でもやたら「らしい」横文字は並ぶが、ネイティブには違和感満載のことも多々ある。"Can you celebrate?" も俎上に上がったっけ。いくらだって、ネイティブ・チェックを掛ける機会はあるでしょうに。まあ、ネイティブもピンキリだけど。どういう人に訊くのか、それが問題。
 しかし大企業がどーん、とテレビCMやサイトに採用する。サイトなんて世界中におっ広がっている。いや、世界中に見て欲しいから英語でコピーなんか作るんでしょう? 日本的なアルファベット言語は、既に世界中から認知(嘲笑)されているだろうから、目くじら立てるなと開き直ればいいんだろう。確かに何言っているのか分からない日本語を使った海外発のブランド名が堂々と世界展開されているのを、日本人も笑って許してるんだか、馬鹿にしているんだか分からないが、まかり通っているのだ。「ヘンなの、上等!」かも。別に拾い上げた前出のコピー達は、本当にアトランダムに拾っただけなので(テレビで聞いて耳に残っていたものもある)、難癖をつける気はない。こういうフレーズ、いっぱいあるよね。それだけです。

©Anne KITAE

 嘗てポルトガルはリスボンの安ホテルに逗留中、レセプションデスクに日本語の案内のようなものが出ていた。自動翻訳だか何だか、不自然だった。「この日本語、ヘンだよ」と受付の兄ちゃんに言ったが、そんなこと言わなくて良かったのではないか。日本人が泊まっているから日本語で掲げようとしてくれた、そのことにもっと重きをおくべきで、えらそうに間違いを指摘すべきじゃなかったのだろう。(でも、そのホテル、設備もサービスも、あーあ、だったため、つい言ってしまった。うるさくて暑い部屋から途中で変えてもらったりしたし。)日本人だって同じことしているでしょうよ。へんちくりん英語とか、いい加減な韓国語、中国語とかで――。事実、お金を払って翻訳してもらった韓国語(お金を払ったのは私でははなく、私自身の用でもない)を、韓国人留学生に見せたら「文法的におかしい」と言われたことがあった。中国語の通訳を日本人がしているのを、中国人に聞かせたら「分かるけど」。その下の句は推して知るべし(ただ、この時に限れば、多少訛りを感じる、程度のことだった)。個人的には英語だと気付けるかも知れないが、その他の言語でどんなに妙ちきりんな翻訳をされても一向に気付けないのだもの。お互い様よねぇ。とは言え、「正しい」日本語を知って欲しいじゃない? でもないのか。

©Anne KITAE

 ただまあ、国家間同士で世紀の大誤訳など起ころうものなら、多くの生命に関わる事態にもなりかねないだろう。「正確」な意味・意図を見つけるプロ(特に政治・外交関係の通訳)は、いつも言葉を研いでいなければならない。誤謬を最小限にするために。けれども完璧な重なりは不可能と心得よう。発する方も、受け取る方も。
  言葉とは、そういうものだから。


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