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北欧、そして北方諸国模様

   氷河が溶けてきている。アイスランドで氷河トレッキングをして実感した(2018)。夏だからはげちょろけになっているだけではないそうだ。気候変動に関する運動の盛り上がりの中心に北欧出身の少女がいることは象徴的かも知れない。

©Anne KITAE

  ところで、彼(か)の国は、酒がやたらに高い。それは北欧全般に言えること。北欧は社会福祉が整っていて税金がバカ高いのは周知の事実。たがら、物価は総じてメチャ高なのだが、アルコールは傑出して高いと思う。そして決まった場所でしか買えないし、時間も決まっていたりする。
 アイスランドに限って言えば、置いている店(政府指定の専門店)も数えるくらいに限定されており、缶ビール1本500㎖で1,000円くらい(同時期のデンマークでも同じような感じだったと思うが)。おっそろしい話である。無論、酒税などのせい。どうしてそんなことになっているか? アルコールで身を持ち崩すことがあまりに多い土地柄のせいなのが大きいはず。北欧全体としてアルコール依存症の率は高い。寒いから酒でも飲んでないとやってられない! それは北の大国ロシアも。90年代の物不足の時、ウォッカの規制をしようとして政府は大反発を食らった。彼等にしてみれば、「命の水」なのだ。ほぼ北欧圏バルト3国のひとつ、リトアニアでも、私がお土産にスーパーでアルコールを買おうとしたら、昼日中だったため、「今は売れない」(と現地語で言ったと思う。アルコールの年齢制限に引っかかるお子しゃまには見えたはずはない)とレジで取り上げられた。アルコールに関して厳格なのだ。まったく日本なんて彼等にしてみれば夢の国だろう。自販機で買えるんだぞ!

 とにかく、寒冷地はアルコールの消費量が半端ないのと、依存症だけでなく速攻で命の危険が大きい。凍死だ。酔って零下20度の外で引っ繰り返れば、凍死する確率が高い。北欧ではなくかつてモスクワで見た光景だが、見ず知らずの男女3、4人が酔って路上に引っ繰り返っていた男を介護し、何とか起こそうとしていた。放置しておけば、死ぬかも知れない。互助の精神だろう。それくらいに情はある。
 理想国家に見られ、幸福度ランキングも高い北欧諸国だが、実は犯罪も多い。最近は北欧ミステリーが多く日本語にも翻訳されて、その実情(と言っても、フィクションなので、実社会を丸ごと反映しているものではないのは当たり前だが)も垣間見えるようになってきたが、よくDVがネタになっている。それもかなり陰惨な。男女同権が進んだ平等社会のはずが、男性による女性への暴力が横行している(逆もあろうが、暴力性は未だ、男性>女性の図式が典型。故に反撃して女性が加害者になる事件も)。暗く長い冬を家族という密室で過ごすうちに、情念が凝り固まってしまうのか……。

 社会福祉の発達の要素は、他にもある。土地や気候が遠因となる人体欠損、障害も多く、社会を保つために絶対必要であり、インクルーシブな共同体を作り上げるしか国家存続の道がないのだ。不毛の地を捨て、ヴァイキングのように七つの海に漕ぎ出し、別の世界を目指すのも選択肢で、この地域からの世界への移民は、国民の数より多いと言われるくらいだ。一方、今は難民受け入れの優等生になっているのも事実。国家には様々な側面がある。良いものも、悪いものも、レッテル貼りはよくないということだ。しかし、銃犯罪も多いのだぞ。狩猟もさかんなのでね。驚くような単独犯による大量殺人事件が起こったり(ex. ノルウェー、ウトヤ島事件、2011年)、軍事産業が盛んで、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドは世界武器輸出額ランキングで30位以内にいる(2020年度)。つまり結構兵器を作っていたりする。世界で一番壊れにくい自動車はスウェーデンのボルボ製だとか。ボルボ車兵器仕様説も。(ボルボは軍事産業会社でもある。でもそんなこと言ったら日本の三菱自動車だって同閥重工業に近いし、重工は戦時中も今も戦闘機作っているけどね。あ、だからパジェロみたいなごっついの、得意なのかな? でもなー、パジェロは製造終わったし、過酷なUAEの砂漠では、殆どがトヨタのランクルだったんですけど、サファリ・ツアー車。――いかん、余計な違う話だ……)

 幸福度ランキングの闇の顔を暴く、なんてことではないが、あんまり単純に憧れてもね、という話。それにしても幸福度ランキングは本人達への調査であるから、「住みたい街ランキング」とは違う。そういう後ろ暗い部分も含めて幸福だと言っているなら、何と成熟度が高いのだろう。ネオテニー国家と後ろ指指されがちな本邦、何を思う。
 そして北欧のバランス感覚が大変貌を遂げようとしてる。NATO、EUの形が変わるかも知れない。
 北が熱している。氷河が溶けるどころでは済まないのか――。

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