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JW43 八十梟帥の軍勢
【神武東征編】EP43 八十梟帥の軍勢
吉野地方を巡幸(じゅんこう)した狭野尊(さの・のみこと)(以下、サノ)一行は、三人の一風変わった人たちに遭遇した。
そして、最後の一人、魚を獲る人こと、苞苴担(にえもつ)との会話は続くのであった
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ここで博学の天種子命(あまのたね・のみこと)が苞苴担に尋ねた。
天種子(あまのたね)「苞苴担殿。五條市の原町(はらちょう)に、阿陀比売神社(あだひめじんじゃ)があらしゃいますが、汝(いまし)と関わり合いがありますのんか?」
![阿田と原町](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64422984/picture_pc_40af323c0446f54b098c627e906efdbf.png?width=800)
![阿陀比売神社外観](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64423052/picture_pc_59d18d41bbd3b4685f93beb2e0eb5394.png?width=800)
![阿陀比売神社2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64423039/picture_pc_d717315525431f8ebe67ee2e0f334665.png?width=800)
苞苴担(にえもつ)「祭神は阿陀比売(あだひめ)ですが、この神様が、なんと、木花開耶姫(このはなのさくやひめ)とも言われてるんですなあ。」
サノ「なっ?! ひいひいばあさま!?」
苞苴担(にえもつ)「息子の山幸彦(やまさちびこ)も祀られてますよ。サノ様のひいじいちゃんですな。その兄の海幸彦(うみさちびこ)も・・・。隼人(はやと)の阿多君(あた・のきみ)の祖と言われてる人物ですな。隼人は薩摩(さつま)の人のことですよ。」
サノ「なるほど、阿多と阿陀・・・。何か関連がありそうじゃな・・・。」
苞苴担(にえもつ)「天武天皇(てんむてんのう)の時代に、南九州から近畿への移住が始まったと考えられてるんで、それが伝承に反映されてるんじゃないかと・・・。」
サノ「様々な時代のことがつながっておるのじゃな。」
こうして、サノ一行は、吉野の三人と邂逅(かいこう)を果たし、地元の協力を得ることに成功したのであった。
地理不案内な状況から抜け出したのである。
そして、紀元前663年9月5日、サノは菟田(うだ)の高倉山(たかくらやま)に登った。
高倉山は、現在の奈良県(ならけん)宇陀市(うだし)大宇陀守道(おおうだもち)の高角神社(たかつのじんじゃ)付近か、大宇陀春日(おおうだかすが)の宇陀松山城(うだまつやまじょう)があった古城山(しろやま)と考えられている。
![高倉山(高角神社)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64423148/picture_pc_76ded892366b22061975c0edf80d404d.png?width=800)
![高角神社鳥居](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64423685/picture_pc_e4e2708248e5ac71a2b066bbaa85e846.png)
![高角神社拝殿](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64423694/picture_pc_8e338089cacdc74850f5cea180537ae1.png?width=800)
![高倉山(古城山)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64423164/picture_pc_fbf569d258aeeea9913d94f31eaaccdb.png)
ここで、筋肉隆々の道臣命(みちのおみ・のみこと)が疑問を呈してきた。
道臣(みちのおみ)「我が君、なして山に登っちょるんや?」
サノ「山に登ってやることといえば?」
主君の質問に対し、五十手美(いそてみ)(以下、イソ)が答える。
イソ「周りを眺望し、これからどう進むか検討するのですな。」
サノ「その通りじゃ!」
山頂に辿り着くと、サノは周辺を眺め廻した。
その時、異様なものが目に飛び込んできた。
西の方角に、恐ろしい光景が広がっていたのである。
サノ「な・・・なんじゃっ! あれは!?」
天種子(あまのたね)「如何(いかが)なされました?」
サノ「だ・・・大軍勢が・・・集結しておる・・・。」
天種子(あまのたね)「なっ?!」
驚く天種子の傍で、弟猾(おとうかし)が吼える。
弟猾(おとうかし)「国見丘(くにみのおか)に軍勢が集まってますっ! それに、あの坂には、女軍(めいくさ)。あっちの坂には、男軍(おいくさ)もいますよっ!」
サノ「な・・・なんじゃ? 女軍? 男軍?」
弟猾(おとうかし)「まあ、別動隊ってとこですね。」
天種子(あまのたね)「国見丘は、現在の経(きょう)ヶ塚山(つかやま)といわれております。標高889メートルにあらしゃいますなあ。」
![経ヶ塚山](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64423273/picture_pc_10420c921510d7862c3f98e6491731cc.png?width=800)
つづけて、剣根(つるぎね)が説明を始めた。
剣根(つるぎね)「このことにより、女軍がいる坂は女坂(めさか)と、男軍がいる坂は男坂(おさか)と呼ばれるようになるのじゃ。」
天種子(あまのたね)「女坂が、現在の女寄峠(みよりとうげ)で、男坂が小峠(ことうげ)にあらしゃいます。」
![女坂・男坂](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64423328/picture_pc_15c174d4303e4ce3e2145edeb5ca83e9.png?width=800)
サノ「そんなことは、あとでやってくんないっ。」
その時、夜麻都俾(やまとべ)(以下、ヤマト)が北の方を指差した。
ヤマト「我が君っ! あちらにも、何か面妖(めんよう)なものがっ。」
サノ「な・・・なんじゃっ?! 炭火を起こし、道を塞(ふさ)いでおるぞ!」
ここで、再び天種子命が説明を始めた。
天種子(あまのたね)「炭を置いていたんで、墨坂(すみさか)と呼ばれるようになったそうにあらしゃいます。ちなみに、現在の西峠(にしとうげ)といわれております。宇陀市の榛原萩原(はいばらはぎはら)にある墨坂神社(すみさかじんじゃ)の近くですなあ。」
![墨坂](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64423374/picture_pc_ad14193a5939e0e7b7bff313065604a5.png?width=800)
![墨坂神社](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64423387/picture_pc_1f889f2f7fcc97880840d5914c646791.png?width=800)
![墨坂神社1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64423407/picture_pc_a8d8ccd3d3465d25b021181ed4e9ce6e.png?width=800)
サノ「説明、大儀(たいぎ)! じゃっどん、あの者らは何者なのじゃ?」
そこへ、八咫烏(やたがらす)(以下、三本足)がやって来た。
三本足「あいつらは地元の豪族連合軍だっ。ちなみに、あいつらのこと、八十梟帥(やそたける)って呼んでくれよなっ。たくさんの猛者(もさ)って意味だっ。」
サノ「呼ぶも何も、我らの時代の呼び方じゃ!」
道臣(みちのおみ)「ところで、三本足よ。あの平地で、うようよしている軍勢はなんや? あれも八十梟帥か?」
三本足「ああ、あれは兄磯城(えしき)の軍勢だ。磐余邑(いわれ・のむら)に陣取ってんだっ。」
![磐余](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64423807/picture_pc_c17e9d05dde681b41a13f860d2dfe7d2.png?width=800)
サノ「なっ?! 八十梟帥とは別物なのか?!」
三本足「ああ、そうだな。ちなみに、磐余っちゅうのは、今の桜井市(さくらいし)中部から橿原市(かしはらし)南東部にかけての古い地名だ。」
サノ「汝(いまし)らの説明で、緊張感が台無しじゃ。じゃっどん、どんげかせんといかんっ。」
イソ「ど・・・どう致しまする?」
天種子(あまのたね)「どうしはります?」
サノ「よしっ! 神々に祈って、寝る!」
ヤマト「ね・・・寝るのですか?」
サノ「そうじゃ。天照大神(あまてらすおおみかみ)に、夢を通じて助言をもらうほかない。」
道臣(みちのおみ)「かっこよく言っちょりますが、神頼みっちゅうことっちゃね。」
サノ「それは言わんでくんない・・・。」
こうして、サノは身を清め、心を休め、神々に祈りを捧げ・・・寝たのであった。
つづく
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