JW45 変装大作戦
【神武東征編】EP45 変装大作戦
前回、変装をして天香久山(あまのかぐやま)の土を取って来るように命じられた椎根津彦(しいねつひこ)(以下、Seesaw)と弟猾(おとうかし)。
そのための作戦会議を、前回初登場した、椎根津彦の息子、志麻津見(しまつみ)と共におこなうのであった。
志麻津見(しまつみ)「ようやく台詞を言うことが出来るんやに! 嬉しいっちゃ!」
Seesaw「何を言っちょるんや! それよりも、うちらの心配をしろ!」
志麻津見(しまつみ)「も・・・申し訳ないっちゃ。」
弟猾(おとうかし)「しかし、今回の作戦は、本当に有効なんでしょうか?」
Seesaw「土を取ったからって、敵に勝てるとは思えんよな。」×2
志麻津見(しまつみ)「うちも、そう思うっちゃ。」
弟猾(おとうかし)「でも、天照大神(あまてらすおおみかみ)は天香久山の土が必要と言ってるんですよね? 神託が降りた以上、行かなきゃなりませんし・・・。」
Seesaw「そうなんや。信じられんが、そういうことみたいやな。」×2
志麻津見(しまつみ)「父上、ここは誓約(うけい)をおこなってみては?」
Seesaw「誓約?」×2
志麻津見(しまつみ)「今回の作戦を占いにするんや。」
弟猾(おとうかし)「なるほど。作戦そのものを誓約にして、勝敗の判断をしようってことだね。」
志麻津見(しまつみ)「そうやに!」
Seesaw「よしっ! じゃあ、誓約(うけい)してみるか。」×2
志麻津見(しまつみ)「頑張れ! 父上!」
Seesaw「では始めるっちゃ! 我が君が、本当に新しい国を造れるんなら、行く道が自然に通れるはずやに。もし、そうでないんやったら、賊軍に妨(さまた)げられるやろう・・・。」×2
弟猾(おとうかし)「大きく出ましたね。」
Seesaw「これくらいの覚悟が必要っちゃ! 行くぞっ!」×2
志麻津見(しまつみ)「父上! 弟猾殿! お気をつけて!」
こうして、爺ちゃんと婆ちゃんに化けた二人は、腰を曲げて、よろよろとした足取りで、敵陣に向かった。
賊兵たちは、二人を見て大笑い。
八十梟帥「大醜乎(あなみにく)、老父老嫗(おきなおうな)。」×多数
ここで、八十梟帥の一人が説明を始めた。
説明のお兄さん「これは、古代の言葉だよ。『あなみにく』とは、何て汚らしいって意味さ。直訳すれば、なんて汚らしい、じじいとばばあだ・・・って意味だよ。」
弟猾(おとうかし)「お兄さん・・・説明、ありがとうな。それじゃあ、わしらは山に向かうさかい、道を開けてくれへんか?」
説明のお兄さん「どうぞ、どうぞ。」
誰にも怪しまれず山に辿り着いた二人は、せっせと土を取り、持ち帰ったのであった。
狭野尊(さの・のみこと)(以下、サノ)が喜んだのは言うまでもない。
サノ「二人とも、よくやった。これで八百万の神を祀(まつ)ることができる。」
Seesaw「これで、我が君の大業(たいぎょう)が成ることもはっきりしたっちゃ。」×2
サノ「大業?」
志麻津見(しまつみ)「父上は、今回の作戦を通じて、誓約をおこなってたんやに!」
サノ「此度の策で、誓約を? それで、良い結果が出たというわけじゃな?」
弟猾(おとうかし)「その通りです。私たちは無事に敵陣を通過しました。新しき国が作られるのは間違いありません。」
サノ「そうか・・・。嬉しい報せが聞けて、我も満足じゃ。では早速、支度(したく)に取りかかろうぞ!」
天孫一行「御意!」×多数
サノの号令のもと、一行は土器作りを開始した。
80枚の平瓮(ひらか)と80枚の手抉(たくじり)、それから厳瓮(いつへ)を作ったのである。
ここで、サノの息子、手研耳命(たぎしみみ・のみこと)(以下、タギシ)が説明を始めた。
タギシ「平瓮は平らな皿、手抉は手で土をえぐって作った土器、厳瓮は神酒(みき)を入れる神聖な瓶ということじゃ。えっ? 手抉は、天照様が言及していなかったじゃないかって? そんなことは知らんっ。わしらは、台本通りに進めるだけじゃ!」
土器を用意した一行は、丹生(にう)の川上で、天神地祇(てんじちぎ)を祀(まつ)るための準備を始めた。
ここで、味日命(うましひ・のみこと)が、頼んでもいないのに語り出した。
味日(うましひ)「丹生の川上は、奈良県(ならけん)東吉野村(ひがしよしのむら)小(おむら)にある丹生川上神社中社(にうかわかみじんじゃ・なかしゃ)だと言われてるっちゃ。」
志麻津見(しまつみ)「すぐ傍には、三本の川が合流する夢淵(ゆめぶち)というのがあって、そこで誓約(うけい)をおこなったみたいやな。」
味日(うましひ)「じゃが(そうだ)。ちなみに川の名前は、高見川(たかみがわ)、日裏川(ひうらがわ)、四郷川(しごうがわ)の三本ですっ!」
サノ「中社とは、どういうことじゃ?」
味日(うましひ)「天武天皇(てんむてんのう)の頃に創建された神社なんですが、戦国時代の混乱を通じて、所在不明になったみたいっちゃ。」
サノ「言っている意味が、よく分からぬ。」
志麻津見(しまつみ)「詳細は、ならきっつぁんに説明してもらうっちゃ。」
サノ「ならき・・・?」
味日(うましひ)「では、時空を超えて、ならきっつぁん、どうぞ!」
唐突に現れた爺さん。
困惑するサノ。
丹生川上神社の説明は続くのであった。
つづく
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