![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64992020/rectangle_large_type_2_76354de65fd5907604b72c9ea52c04aa.png?width=800)
JW48 忍坂、血に染めて
【神武東征編】EP48 忍坂、血に染めて
八十梟帥(やそたける)の残党を討ち滅ぼせと言う狭野尊(さの・のみこと)(以下、サノ)に対し、道臣命(みちのおみ・のみこと)が尋ねた。
道臣(みちのおみ)「じゃっどん、どうやって討ち滅ぼすんです?」
サノ「屋敷を忍坂邑(おしさか・のむら)に作り、饗宴(きょうえん)に誘って謀殺(ぼうさつ)するのじゃっ。」
![忍坂邑](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64988872/picture_pc_958e2eefcce0177404416ebbd5d39dff.png?width=800)
ここで目の周りに入れ墨をした大久米命(おおくめ・のみこと)が質問してきた。
大久米(おおくめ)「えっ?! そんなことして、敵がやって来るんすか?」
サノ「来る! 台本通りに来るはずじゃ!」
道臣(みちのおみ)「台本通りって・・・。とりあえず、饗宴用の屋敷を作れってことっちゃね?」
サノ「じゃが(そうだ)。周りを塗り固めた部屋が良い。逃げられては、元も子もないからな。ついでに『記紀』には登場せぬが、息子の味日(うましひ)も参加せよっ。」
唐突に呼ばれ、慌てながら味日命(うましひ・のみこと)が返答した。
味日(うましひ)「わ・・・分かったじ!」
こうして、急遽、饗宴用の大きな部屋が、忍坂山(おしさかやま)の麓に作られた。
![忍坂山](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64989289/picture_pc_0f44569a29d2ac2dfe8753f20bf38af4.png?width=800)
塗り固めた壁に囲まれた部屋で、出入口が一か所しかない空間である。
道臣は、大久米たち久米部(くめべ)を集め、事前打ち合わせをおこなった。
道臣(みちのおみ)「まず、汝(いまし)らには、膳夫(かしわで)になってもらうっちゃ。」
味日(うましひ)「膳夫っちゅうんわ、給仕ってことやじ。」
道臣(みちのおみ)「八十梟帥(やそたける)の人数分、膳夫(かしわで)を付ける。剣を佩(は)いて、給仕するんやっ。」
久米部「御意!」×多数
道臣(みちのおみ)「そして、酒宴真っ盛りの時、おいが立ち上がって歌うっちゃ。汝(いまし)らは、その歌を合図に、一斉に八十梟帥を討ち取れっ。」
久米部「御意!」×多数
そして、予定通り、残党軍を宴に誘ったところ、サノの予言通りというか、台本通りというか・・・彼らは来たのであった。
![八十梟帥を招待](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64989518/picture_pc_47c7b2d388d933456964194f5a44dfb5.png?width=800)
残党軍は、謀略があることも知らず、油断して酔っぱらい、泥酔(でいすい)し、酩酊(めいてい)した。
道臣は、宴もたけなわと判断し、立ち上がって歌った。
道臣(みちのおみ)「ニューアルバムから一曲、歌わせてもらうっちゃ。聞いてくんない。」
忍坂(おさか)の 大室屋(おおむろや)に 人多(ひとさわ)に 入(い)り居(お)りとも 人多に 来(き)入り居りとも みつみつし 来目(くめ)の子等(こら)が 頭椎(くぶつつ)い 石椎(いしつつ)い持ち 撃ちてし止まむ みつみつし 来目の子等が 頭椎い 石椎い持ち 今撃たば善(よ)らし
大久米(おおくめ)「忍坂の大きい室屋に 人がたくさん入っているが 入っていても構わない 御稜威(みいつ)を背負った 来目の子らの 頭椎の剣、石椎の剣で 打ち負かしてしまおう 今だっ! 撃つべき時は・・・って意味っす!」
歌を合図に、久米部の強兵たちが動いた。
一斉に頭椎の剣を抜いて、賊兵を斬り殺したのである。
味日(うましひ)「頭椎の剣は『かぶつちのつるぎ』とも読むんやじ。柄頭(つかがしら)が、こぶし状にふくれてるのが特徴で、だいたい金属製っちゃ。銅に金箔を貼ったものとかが一般的やじ。石椎っちゅうのは、その部分が石製の剣ってことやじ。」
![頭椎大刀](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64989582/picture_pc_b38400cc3b7164ce04e715d16f304c32.png?width=800)
![頭椎の剣](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64989833/picture_pc_83c2f232e61da331c53b818d675fc0ab.png)
サノ「よくやったぞ! ところで、御稜威(みいつ)とは何じゃ?」
大久米(おおくめ)「さすがは我が君っ。読者のためっすね? 御稜威というのは、天皇の威光ってことっす。この場合、我が君の威光ってことっすね。」
サノ「わしの威光が、御稜威なのか・・・。よだきい(面倒くさい)言い方じゃな。」
大久米(おおくめ)「そんなこと言わないでくださいよ!」
こうして、残党軍は全滅したと「記紀」には記されているが・・・。
サノ「そうではないということか?」
ここで博学の天種子命(あまのたね・のみこと)が解説を始めた。
天種子(あまのたね)「そのようですなぁ。というのも、奈良県(ならけん)桜井市(さくらいし)忍阪(おっさか)に、神護石(じんごいし)というものが残っているそうにあらしゃいます。」
サノ「神護石?」
天種子(あまのたね)「伝承によると、この石に隠れ、石垣を巡らし、矢を持ち、楯とした・・・と語られているそうにあらしゃいます。」
サノ「矢の応酬があったということか?」
道臣(みちのおみ)「何名か、取り逃がしたのかも・・・。」
天種子(あまのたね)「ちなみに、地元では神護石が訛(なま)って『ちご石』と呼ばれているそうにあらしゃいます。」
サノ「どういう風に訛れば、そうなるのじゃ?!」
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64990137/picture_pc_d883b1fe670c7d6c31f6c0e049f324c4.png?width=800)
![画像7](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64990278/picture_pc_d95f2e5cf37dac6c7dbd89d8f00690ac.png?width=800)
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64990425/picture_pc_fa2d804270d27e0e760f28952f5d44ef.png?width=800)
![ちご石](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64990546/picture_pc_988837d527f8978cb27b393f0cf406af.png?width=800)
![ちご石2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64990557/picture_pc_dae3fec384e368d6214f524a50dae292.png?width=800)
味日(うましひ)「それから、周辺地域は大室町(おおむろちょう)って呼ばれちょるみたいやじ。高台で見晴らしもいいんで、人を呼び集めるには、ちょうどいい立地条件だったんやないですかね?」
サノ「じゃっどん、令和年間の地図に、大室町なる地名が見えぬが・・・。」
味日(うましひ)「地図には載ってないんですが、そう呼ばれちょるんやじ。それから、忍坂山は、今の外鎌山(とかまやま)のことっちゃが。」
![外鎌山](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64990788/picture_pc_beeba36b859e8b95c4c306f3e878581f.png?width=800)
サノ「とにもかくにも、八十梟帥の討滅に成功したわけじゃな。」
大久米(おおくめ)「あとは兄磯城(えしき)の軍勢だけっすね。」
![磐余の兄磯城](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64991372/picture_pc_9cd0fa09c0505752493e1edabc99093b.png?width=800)
サノ「じゃが(そうだ)。されど、その前に、此度の戦勝祝いとして宴をおこなおうぞ。」
天種子(あまのたね)「国中(くんなか)に入る前に、精気を養うのですな。」
味日(うましひ)「国中(くんなか)?」
天種子(あまのたね)「奈良盆地のことにあらしゃいます。二千年後の呼び方や。」
![国中](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64991734/picture_pc_d9896d8ad622823ff303c5873d7b0ab1.png?width=800)
こうして、兄磯城との戦の前に、宴をおこなうこととなったのであった。
つづく
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