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【書評】こんなんいかが?

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忘れた頃になんども読み返す愛すべき紙の束。カバーについた手指の脂、紙の匂いと手触り。それはともに過ごした時間の記憶。本はもはや生きもの。
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#ファンタジー

「装いせよ。我が魂よ」果敢にしてオトコマエな小川洋子と山田詠美。魂が美しくあるには、装いこそ必要。

「装いせよ。我が魂よ」果敢にしてオトコマエな小川洋子と山田詠美。魂が美しくあるには、装いこそ必要。

「文学は懐が深い。テーマにならないものはない」
 作家の小川洋子さんはそう言い切る。それでも自身、苦手な分野があるといいます。
 それが「性・官能」をモチーフとする分野。
 
 なるほど、上品なイメージがある彼女の作品。でもそれとは裏腹に、弟の肉体を密かに慕う姉だったり、妊娠した姉に殺意を抱く妹だったりと、書くテーマは禁断領域に軽々と踏み込んでいます。
 透明感をまとった穏やかな言葉遣いに身を任せ

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異世界に行きつ戻りつして織り上げる。怪談ノンフィクション・ファンタジー。

異世界に行きつ戻りつして織り上げる。怪談ノンフィクション・ファンタジー。

■「もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら」工藤美代子/角川文庫

 工藤美代子さんは、吉田茂、笹川良一、昔のラフカディオ・ハーンなどを独特の視点で取り上げてきたノンフィクション作家。

 この方の書く文章ってほんと、ほれぼれして憧れてしまう。

 ストレートでリズミカル。
 あがいた後をみじんも見せない意気のよさ。
 読者に甘えるかのような行間のない整った調べは、数式のもつ美しさにも通じ

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