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【エッセイ】こんなん思ったりも

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自分の中で上っては消えるよくわからないものって誰にもありますよね。取り出せば否応でもその姿形があらわになる。それが自分自身の足場になるやもです。
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2023年8月の記事一覧

ピンポン怖い。小2の夏。

ピンポン怖い。小2の夏。

 子どもにとってはコーフンの夏休み突入も、十日も過ぎれば満喫ぐあいも冷めてきて、ヒマを持て余しだします。

 あれはぼくが小2の頃、セミも鳴き疲れるそんな夏の午後のことでした。

 毎日のように通った小学校プール開放もその日は休み。
 昼にそうめんをすすり、「スイカは後で」とクギを刺されなどしながら、畳に後ろ手をついてひとり扇風機にあたっていました。
 それでもこめかみで汗のしずくが次々とこそばゆ

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「これで問題ないですか?」 彼はなおも無言でこちらを見つめるばかり。

「これで問題ないですか?」 彼はなおも無言でこちらを見つめるばかり。

 その家は石段を三十段ばかり登ったところにあったので、荷物が多い日は気合がいります。
その日も、両手に積み上げて抱えてきた荷物をひとまず足元に置いて、いつものように門柱の呼び鈴を押しました。
 門柱は古い石垣作り。隙間に積もったわずかな土から小輪が一つ覗いています。先週にはなかったのにと、はずんだ息をついでに吹きかけたりしていると、ふと視線を感じ、顔を上げました。

 踏み石が続いた先の

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