ブラジルのお盆(Dia de finados)
カトリック信者が国民の約半数ほどを占めるブラジルでは、諸聖人の日の翌日である11月2日を「Dia de finados 」(又はDia dos mortos)、死者の日と呼んでいる。日本のお盆に相当するこの日は、やはり祝日に制定されている。
メキシコでは盛大な祝祭が行われる死者の日ではあるが、ブラジル国民の過ごし方は至ってシンプル。
(お借りしたイメージ。ブラジルでは死者の日をこんなカラフルな飾りで祝う風習はない。)
家族で集い故人に想いを馳せ、お墓参りをするくらい。死者の日の前日だった今日、我が家もサンパウロ市内にある三ヶ所のお墓にお参りに出かけることにした。
最後にお墓参りをしたのは一体いつだったか。カーニバルの休みの頃?それなら2月だったか。
サンパウロはここ数日冷たい雨が降り続いていて、今朝も生憎の雨模様。気温は17℃と肌寒く、間も無く夏になるとは思えないほどの気候だった。
先ずは夫の父方の伯母夫婦の眠る墓地へ。自宅から車で30分ほどのところにある公園墓地。到着すると墓地内にある花屋さんでお供え用の鉢植えを購入。
お盆ということもあり、いつもより花の種類も豊富で選ぶにも迷ってしまう。なんとかこれから巡る三ヶ所分の鉢植えを購入した。
悪天候にもかかわらず、すでにたくさんの鉢植えが供えられている。遠方で普段はなかなかお墓参りが出来ない人々も、この日ばかりは都合をつけて墓前で祈りを捧げる。
数年前までの義母も例外では無かった。最初の移住先で亡くなった両親のお墓参りのため、夜行バスで一晩かけパラナ州のロンドリーナにまで行っていたが、今はそれも叶わない。
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次の訪問地である、夫の母方の伯母の眠る墓地はこんな感じ。やはり緑が多い景観で、伯母のお墓のそばには一本のライムの木があり実がたわわに実っていたのが印象的だった。
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最後はいよいよ夫の祖父母、父の眠る墓地へ。
こちらも公園墓地。ブラジルの新しいタイプの墓地は明るく、気味の悪い感じが全くしない。墓石はなく、マンホールの蓋状のプレートに故人の名前、生年月日、死亡年月日が刻まれている。
開放的な公園墓地を巡っていたら、数年前に訪れた隣国アルゼンチン、ブエノスアイレスのレコレータ墓地のことをふと思い出した。
貧しい家庭の出身でありながら、大統領夫人にまで上りつめたエビータ(Eva Perón)の眠る墓地は、ブエノスアイレスの観光名所である。迷子になりそうなくらい広く、迷路のような墓地内をガイドさんが案内してくれる。
格式のある由緒ある古い墓地で、歴代の大統領や貴族、実業家などの有名人が眠っているそう。お墓の一つ一つがとにかく立派。
エビータが眠るドゥアルテ家のお墓はこちら。
ミニツアーに参加すればアルゼンチンのちょっとした歴史を学ぶことが出来る。最後の写真は自分と同じ名前の偉人さんのお墓の前ではしゃぐ息子。。
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義父や義祖父母の眠るこのモルンビー墓地にも国民的アイドルが眠っている。アイルトン・セナ。言わずと知れたF1レーサー。
セナは1994年5月、レース中の事故で34歳の短い生涯を閉じた。私がサンパウロに移住する二週間前の出来事だった。
セナのお墓には特別に木が植樹されているので、遠目に見ても分かりやすい。
この木の下にセナはひっそりと眠っている。
Ayrton Senna da Silva
⭐️21-03-1960
✝️01-05-1994
今年還暦を迎えるはずだったアイルトン・セナ。事故に遭わなかったら今頃どのような人生を送っているのだろうか。
プレートに刻まれた
Nada pode me separar do amor de Deus
(何者も私を神の愛から引き離す事は出来ない)
という言葉が心に響く。
有名人のお墓ではあるが、エビータのお墓と比較してとてもシンプル。安らかでありますように、と日本式に手を合わせる。
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公園墓地がある辺りは、いずれも新しく切り拓かれた場所。高級住宅地や近代的なオフィス街がある一方で、「ファベーラ」と呼ばれる貧民街が隣り合わせで存在するところが、この国の貧富の差を物語る。
今回のCOVIDの騒動で、ファベーラで爆発的に感染が拡がり多くの方々が亡くなった。人々が密集して暮らしていること、無料である公立の病院に患者が殺到、医療崩壊が起き充分な治療が受けられなかったこともその原因なのだろうか。
ブラジルの感染、死亡者数はここのところ落ち着いて来たが、世界の状況からまだまだ油断は出来ないと改めて気を引き締める。
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お墓参りの最後の辿り着いた先は...東洋人街のラーメン屋さん。
驚いたことに、地下鉄出口前の広場にはもう屋台が出ていて激混み。義務なので皆マスクこそしているが、Social Distanceが保たれているとはとても言いがたい。
このラーメン屋さんの営業は平日は11時から15時半まで。土日、祝祭日は11時から19時までの短縮営業で頑張っている。キャパは60%に抑えられているので、店の前の行列に20分ほど並んで入店。
パンデミック以来の外食。今日のように肌寒い日に最高のご馳走となった。
とりあえずサンパウロも、以前の暮らしが少しずつ戻っていると実感した半日だった。
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