見出し画像

企画の定義

企画とは何か?

ここ数年、企画について教える機会があり、年に1度くらいの頻度で企画の定義を明文化しているのだけど、ふと振り返ってみたらその表現が少しずつ変化していたので振り返ってみる。


定義(1)

たとえば、いまから2年と少し前は、次のように定義していた。

企画とは「課題を解決するためにおこなうこと」である。

この定義では、2つの要素を規定している。

まず、企画は「何らかの課題解決を目的としたものである」ということ。何の課題も解決しない企画というのは存在しない。別の言い方をすると、何の課題も解決しないものは企画とは認識されない。

2つ目の要素は、企画とは「おこなうものである」ということ。企画は、実行されて初めて意味がある。どんなに独創的で革新的な企画を考えたとしても、実行されなければ無意味だ。

いま見ると、これはこれでシンプルにまとまっていて、悪くない。
企画って何?と問われた際、瞬時に端的な回答をするとしたら、こう答えることにしようかな。


定義(2)

それから1年後の定義では、後半を少しアレンジしていた。

企画とは「課題を解決するための施策を考え、実現すること」である。

先ほどの定義の2つ目の要素を強調した書き方となっている。
おそらくこのときは「企画は、考えただけで実行されなければ無価値だ」ということを特に伝えたかったんだろう。

苦労して企画を考え、企画書を書き上げることで達成感を得られるのは確かだけど、それはそれ。その時点では価値は生み出せておらず、満足感はあっても評価は得られない。
また、企画を実行に移す際、どう具現化するかという部分のクオリティ次第でも結果に大きな差が生まれる。
実務ではそこが大事だよね、というような話。


定義(3)

そしてさらに1年後の現在は、このように定義してみた。

企画とは「現状を理想的な状態へ近づけるための一連の営みに関する計画」である。

定義(1)と定義(2)では、実現性の強調が加わっているだけで、本質的には変わっていなかったが、今回はガラリと変わっているように見える。

では、過去2年の定義と比較して変わったポイントを整理してみよう。
(なお、今年の定義を考えたタイミングで、過去2年分のものは参照していない。今年のものを書いた後に、ふと振り返ってみて、この変化に気づいた)


今年の定義における変更点

変更点は、次の3つとなっている。

【変化1】
「課題を解決するため」が、「現状を理想的な状態へ近づけるため」となっている。

【変化2】
「(おこなう)もの」や「施策」が、「一連の営み」となっている。

【変化3】
「考え、実現すること」が、「計画」となっている。

では順番に読み解いてみよう。


【変化1】

【変化1】
「課題解決」→「現状から理想的な状態への変化」

ここでは「課題とは何か」という考えが加わっている。

通常、現状と理想的な状態の間にはギャップがある。そのギャップを分析して、ギャップを生み出している要因(問題点)を特定し、取り除いていくことでギャップは埋まり、現状は理想に近づいていく。このとき取り除くべき要因というのが課題である。

もしかするとギャップが完全に埋まることはないのかもしれない。世の中にはどうしても解決できない問題も存在するだろう。解決できないことを気にしていても仕方がない。ならば限られたリソースを使って解決が可能であり、解決することでギャップを大きく埋めることのできる影響力の大きな問題を解決することに注力すればいい。

企画は課題を解決しなければならないが、その前に解決すべき課題が何かを特定するという行為も企画に含まれる重要なプロセスである。

というのは、まぁ何も新しい話ではないのだけど、【変化1】はこの点を取り入れて、課題というものをより正確に定義しようと意図したものである。


【変化2】

【変化2】
「施策」→「一連の営み」

このポイントでは「企画にはプロセスがある」ということが意識されている。

企画は、大きく分けて次の4つの段階から成る。

第1段階:設計
第2段階:提案
第3段階:具現化
第4段階:運用

また、各段階でおこなうことも、いくつかのプロセスに細分化できる。
具体的には、何に関する企画なのかによって変わるだろうが、たとえばこんな感じだ。

第1段階:設計
・ビジョン設定
・ギャップ分析
・ゴールと課題の設定
・課題の解決策の考案
・運用計画の設計
第2段階:提案
・企画書作成
・企画の提案
第3段階:具現化
・チーム編成
・制作ディレクション
第4段階:運用
・効果測定
・次の企画設計フェーズへ

個々のプロセスについて言及すると長くなるので、ここではおいておこう。

繰り返しになるが、やはり企画は考えるだけではだめで、提案して採用されなければならないし、考えたことは具現化できなければならないし、その結果どうなったのかを検証して、改善するなり次の企画へ移行するなりして、現状を理想的な状態に近づけなければならない。


【変化3】

【変化3】
「おこなうこと」「施策を考え、実現すること」→「一連の営みに関する計画」

最後のポイントは、微調整だ。

「施策を実現すること」から「一連の営みに関する計画」としたことで、一歩退いた印象があるかもしれない。
しかし大前提として「企画は実現して初めて意味を持つ」という思いは、まったく揺らぐものではない。実現しない企画は無価値だし、実現しない企画書は紙くずに過ぎない。
ただ、「企画する」ことと「企画を実行する」ことは分けておいた方が、一般的に話が通じやすいのではないかと思った。「企画する」と聞いたときに「実行する」ことまで含めて受け取る人はいないだろう。
それに、この方が定義としてもより正確だと思う。


まとめ

以上の要点をまとめると、こんな感じになる。

企画とは何か?

それは「課題を解決するためにおこなう一連の営みに関する計画」である。
ただしそれには、課題を設定することも含まれる。
課題とは、現状を理想的な状態に近づけるために解決すべき問題点である。

この3行をまとめると、次のような定義となる。
企画とは「現状を理想的な状態へ近づけるための一連の営みに関する計画」である。

また企画は、設計し、提案し、具現化し、運用するものである。
企画は、それを実行して課題を解決することで、初めて価値を生み出すことができる。


最後まで読んでいただきありがとうございます。 この記事が何かのお役に立てば幸いです。