見出し画像

カンヌライオンズ・チタニウムグランプリの歴史(3)

ユニクロ「UNIQLOCK」

2008年のチタニウムグランプリはユニクロの「UNIQLOCK」が受賞した。

「UNIQLOCK」は、4人の女性がユニクロの服を着て踊るプロモーションビデオなのだが、その名の通り時計にもなっている。これをWEBサイトで公開したほか、スクリーンセーバーとしてダウンロードできるようにし、さらにブログパーツとしてブログに貼り付けられるようにするという企画だった。

2007年6月に公開された「UNIQLOCK」のWEBサイトは、2008年10月までに1億7000万PVを獲得。ブログパーツは87か国のブログに設置され、5万2000個以上が稼働していたという
2009年8月には、シリーズ第6弾となる「UNIQLOCK~パリ編~」が公開された。これは秋冬のコレクションを紹介するとともに、同年10月パリに旗艦店をオープンすることを告知するものだった。
「UNIQLOCK」は約10年間稼働し、2017年1月にサービスを終了した。

画像1


メディアの使い方も、コンテンツの在り方も画期的だった「UNIQLOCK」

ブログパーツは1度設置されれば、そのブログの所有者や閲覧者との接点として継続的に機能するメディアとなる。
「UNIQLOCK」は、トリプルメディア論でいうところのアーンドメディアであるはずのブログをオウンドメディア化することに高い次元で成功した企画だった。
しかも、トリプルメディア論がアメリカで提唱されるより2年も前に実現されている。

また、「BMW FILMS」は「ブランデッド・エンターテイメント」という概念を広めたが、この「UNIQLOCK」は「ブランデッド・ユーティリティ」という概念を広めたのではないかと思う。
ユーティリティとは「役に立つもの」という意味であり、すなわちブランデッド・ユーティリティとは「広告としての機能を備えた役に立つもの」という意味だ。
「UNIQLOCK」はブログ読者にとっては時計というユーティリティであり、ブログオーナーにとってはブログの飾りというユーティリティであった。

ただし「UNIQLOCK」がブランデッド・ユーティリティの発祥というわけではない。
名入れをしたボールペンや、チラシ入りのポケットティッシュなどもブランデッド・ユーティリティであり、これらは昔からある手法だ。

だが「UNIQLOCK」によってブランデッド・ユーティリティという考え方が注目されるようになったことで、ブランデッド・エンターテイメントやブランデッド・ユーティリティを包括した「ブランデッド・コンテンツ」という概念が注目されるようになったように思う。

「UNIQLOCK」は、カンヌではチタニウムライオンのほかにサイバーライオンでもグランプリを獲得している。また、カンヌと並んで世界三大広告賞とされる「CLIO Awards」と「One Show」においてもそれぞれのインタラクティブ部門でグランプリを獲得し、世界三大広告賞を制覇した。さらに当時、三大広告賞と並び存在感を増しつつあった「D&AD」でも最高賞である「BLACK PENCIL」を獲得するなど、まさに当時の広告賞を総なめした企画となった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。 この記事が何かのお役に立てば幸いです。