おにぎりを食べた時みたいにおなかの中からあたたかくなる 『かもめ食堂』を観た
主人公のサチエ(小林聡美)は背筋が凛と伸びている。
彼女は毎日、なかなか客の来ない店で丁寧にグラスを磨き、
夕方にはプールへ行き、
夜寝る前に合気道の膝行をする。
なぜ彼女がそこでフィンランドのヘルシンキで食堂を開くことになったのか、明確な答えはわからない。
けれど、
「素朴だけどおいしいものって、ここの人ならちゃんとわかってもらえるような気がするんです。」
「いいわね、やりたいことをやっていらして。」
「やりたくないことはやらないだけなんです。」
こんなふうに答える彼女になんだかすんなりと納得させられる。
あまりにもお客さんが来なくて、
このままではいけないとガイドブックに載せる提案をされた時、彼女は言う。
「そういうのはなんか、この店の匂いとは違うと思います。
レストランじゃなくて、食堂です。もっと身近な感じっていうか。
店の前を通りかかった人がふらっと気軽に入ってきてくれるような。」
こういう彼女の正直さがきっと背筋を凛と伸ばしてみせるのだろう。
ガッチャマンの歌を正確に全部歌えるミドリさん、無くした荷物がいつまでも見つからないマサコさん、日本かぶれのフィンランドの青年、とてつもなくおいしいコーヒーを淹れる謎のおじさん。
チャーミングな人々がかもめ食堂に集まり、
おいしいご飯を食べて、コーヒーを飲んで、
あたたかくなっていく。
びりっとはしないけれど、
おなかの底からほんのりあたたかくなるような
優しい映画でした。
おいしいコーヒーとシナモンロールを食べながら、
そして観終わった後にきっと誰かとおにぎりを食べたくなる。
また何度も観ると思います。
それにしても、もたいまさこさんの思わずクスリとしてしまう表情や、絶妙な間、行間に、何度もやられました。
『プール』や『めがね』も観たいなあ。
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