見出し画像

恋を自覚する瞬間。

知覚を考える。

そのリンゴの「赤色」は他人から見れば「青色」に見える可能性はあるだろうか?

たぶんない。

集合体を見て怖いと感じる人と、
何も感じない人の差はなんだろうか?

ジェットコースターが苦手という人と、大好きという人を分かつ脳の構造的なちがいはあるのか?


わからない。わからないけど、
たしかにちがいはありそう。
リンゴの話はヘンだけど。


要は「物事の知覚の仕方は、人それぞれで異なる可能性がある」ということを言いたい。



3月最後の夜、友人と3人で食事をした。

メンバーは私と、高校の同級生の男性と、社会に出てから出会った女性の友人。全員が既婚者で、私を除く2人は無類の読書好き。

この記事では、男性をチンペイ、女性をマリモという名前にしておこう。

この2人がどれだけ読書好きかというと、チンペイが少なくとも月に2冊の本を読み、マリモは月に10冊。

どうしようもなく文字が読みたいときにチンペイが読むのは"三島由紀夫"で、マリモが好きな作家はもうよーわからん。


こじゃれた大人が集まる居酒屋で、私たち3人が肩身のせまい思いで生ハムをつついていると、マリモがセクシーに言ってきた。


「ねぇ、友だちと恋人の違いって、なぁに?」

私とチンペイは「ふーむ」と考える。

10代後半で考えるようなことを
32歳の3人で考える。

なんだろうかねぇ。3人して静かに考える。店内には椎名林檎の丸の内サディスティックが流れている。コの字型の角の席にL字で座る私たち3人。


チンペイが言う。

「触りたくなったら、もう友だちじゃなくね?」

「なるほど、遠慮がないねぇ」と3人で笑う。

「マリモは?」と私が聞くと、
少し悩みながらセクシーに、


「朝、連絡したくなったらもう友だちじゃないよ」

おぉ~、ぽいねぇ、とこれまた笑う。
「その心は?」と聞くと、マリモはまた、

「夜の連絡って、心のスキマを埋めるため。けど、朝の連絡はスキマを埋める意図がないでしょ」

「文学じゃん、かっこつけやがって」とまた3人でニヤニヤ。

で、私の番。マリモが言う。

「どう? 友だちと恋人の違い」

私は答える。

「毎週会いたくなったら、もう友だちじゃなくね?」

あぁ~、と3人でまた静かに笑う。

で、私は言った。


「この好きって感情ってさ、みんな同じなのかね? たとえば、ここに赤いリンゴがあってさ……それで……」

「わかるわかる、みなまで言うな」

「好きの概念が人によって違う可能性ね」


こいつら、話が早くて助かるぜ。



さんざん生ハムだけで議論したけど、
この夜に答えは出なかった。


どうなったら、それが恋だと気づくのだろう?


<あとがき>
マリモに「どうしてそんなに本を読むの?」と聞いたら「だって、何かを感じた時に語彙がなくて表現できないのが悔しいから」と言っていたので、うわ、すげ、と思いました。語彙力崩壊です。とりあえず、恋をしましょう。最後までありがとうございました。

◾️いいから恋をしておきたまえ、的な記事

【明日夜9時!】stand.fmにバムさんが初登場や!

この記事が参加している募集

この経験に学べ

この街がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?