報道がおかしい?それとも私の理解力不足?~児童手当、変更の事実は?

たまたま読んだ記事のうち、わからないと思った児童手当の記事(↓)を紹介します。

間違えてほしくないのは、今回紹介する産経新聞が悪いとか中傷したいというわけではないということです。ただ、私がこの記事を読んだ時に事実がわからなかったから紹介するだけです。このような記事がフェイクニュースの拡散につながる可能性があるので、今後同じようなことが減ればいいなぁという思いで述べていきます。

それからこの記事は、政府の決定について私自身の賛否を表明するものではありませんのでご理解ください。

いろいろな報道機関の記事を読んで、私が理解した今回の事実を最初にまとめておきます

現在の児童手当の受給額:「世帯の中で一番収入が高い人の年収が960万円未満」であれば、年齢に応じて子ども1人当たり月1万円~1万5000円を受け取れる。また、「世帯の中で一番収入が高い人の年収が960万円以上」の場合、“特例給付”という名において1人当たり月5000円を受け取れる。
今回、政府・与党が合意した案:「世帯の中で一番収入が高い人の年収が960万円未満」であれば、年齢に応じて子ども1人当たり月1万円~1万5000円を受け取れる(=変更なし)。1200万円に新たにラインを設定し、「世帯の中で一番収入が高い人の年収が960万円以上1200万円未満」の場合は“特例給付”という名において1人当たり月5000円を受け取れる。一方、「世帯の中で一番収入が高い人の年収が1200万円以上」の場合、受給されなくなる。

図でまとめると以下のようになります。

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この案が最終決定すれば、変更されるのは年収1200万円以上の世帯のみ。つまり、世帯の中で一番収入が高い人の年収が1200万円以上で中学生以下の子どもを持つ世帯は、児童手当が受け取れなくなるということになります。

前提:私の「読者」としての立場

そもそも、児童手当を受け取っている人と受け取っていない人とでは、この記事の理解度が変わってくると思います。まず、私の立ち位置を述べておきます。

児童手当について、①利用するか利用しないか(対象となる子どもがいるかいないか)、②制度について詳細を知っているか知らないか、の2つの観点で場合分けをすると、大きく4つのカテゴリーに分類できます。

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1 :児童手当の詳細を知っていて、かつ児童手当の受給者である。
2 :児童手当の詳細は知らないが、児童手当の受給者である。
   (受け取れるから言われた通りに手続した、など)
3 :児童手当の詳細を知らないし、児童手当の受給者でもない。
4 :児童手当の詳細は知っているが、児童手当の受給者ではない。  
   (例:学者、子どもが高校生以上、など)

この分類を用いれば、私は「3」の立場(=児童手当の詳細を知らないし、児童手当の受給者でもない)です。

産経新聞の記事でわからないところの詳細

私がわからないと思ったのは、「今回の変更で、児童手当を誰がどれだけの額を受けとることになるのか?」という点です。まずは冒頭を引用します。

 政府・与党は10日、中学生以下の子供がいる世帯に支給している児童手当の「特例給付」について、子供1人当たり月額5千円を支給する所得制限の基準を現在の960万円以上から引き上げ、1200万円以上とすることを決めた。令和4年10月支給分からの実施に向け、来年1月召集の次期通常国会に関連法案を提出する。制度の見直しで浮いた財源を待機児童解消に向け、今後4年間で計14万人分の保育施設確保に充てる。

最初の一文を読んだ時、「児童手当って所得によって受け取る額が変わるんだ」「変更によって、(世帯で最も稼ぎが多い人の年収が)1200万円以上の人は月5千円になる。児童手当で“所得制限”ということは、960万円以上1200万円未満の人は5千円より上になるんだな」と思いました。 そう思って読み進めると、最後の一文を読んだところで「今回の制度見直しで、なぜ財源が浮くんだろう?」と疑問に思いました。もっと詳しく書いてあるだろうと思い、その続きを読み続けました。すると、3段落目に現行(変更前)の制度について書かれていました。その部分を引用します。

 現行の児童手当は、年齢に応じて子供1人当たり月1万~1万5千円を支給する。世帯主の年収が960万円以上だと所得制限対象となり、「特例給付」として同5千円が支給されている。

この文章を読んだ時、「現制度は、子ども1人当たり月1万円~1万5千円がもらえるんだ。でも、世帯主(世帯で最も稼ぎが多い人)の年収が960万円以上だと所得制限の対象者となり、月5千円しかもらえなくなるんだ」と思いました。
そこで疑問がわきます。「ちょっと待てよ、月5千円しかもらえない対象が年収960万円以上から年収1200万円以上になる。じゃあ、冒頭の“制度の見直しで浮いた財源”というのはおかしいのではないか。だって、(冒頭の記述より)年収960万円以上1200万円未満は月5千円から月1万円~1万5000円になり、より多くの財源が必要になるのだから」

では、実際財源が浮くのでしょうか? それとも、年収960万円以上1200万円未満の子どもを持つ世帯主に、児童手当として今よりも多くの額を支給するのでしょうか?

他のメディア(ネット記事)にあたってみた

では、他の報道機関はどう報じているのでしょうか?

まずは、日本経済新聞の記事を見ました。記事の一部を引用します。

政府・与党は10日、中学生以下の子どもがいる世帯に給付する児童手当の対象を2022年10月支給分から狭めると確認した。世帯主の年収が1200万円以上の場合は支給をやめる。政府は浮いた財源を待機児童解消に向けた保育所整備に充てる。(中略)今回の合意によると、世帯主の年収が960万円~1200万円未満なら手当が続く。1200万円以上なら支給を止める。手当がでなくなる子どもの数は約61万人で公費からの拠出額は年間で約370億円になる。

「なるほど、世帯主の年収が1200万円以上の場合は支給しないんだ。浮いた年間約370億円を待機児童解消に充てるのは具体的でわかりやすい」と思いました。

でも「産経新聞の記事の内容と違う」ということで、次に東京新聞の記事を見ました。記事の一部を引用します。

高所得世帯向けの月5000円の給付対象は現在、配偶者と子ども2人が扶養に入る4人世帯の場合、夫婦の「収入の高い方」の年収が960万円以上。新たな仕組みでは、この線引きを維持する一方、夫婦のうちのどちらかが年収1200万円以上になれば支給を打ち切る。受給対象から外れる子どもの数は約61万人と見込まれる。960万~1200万円未満は引き続き、5000円が給付される。

この記事からも「収入が高い人の年収が1200万円になれば支給されないんだ」ということがわかります。なにより、図が載っていて、私が抱いた疑問を解決できました。

その他、読売新聞・時事通信・朝日新聞の記事でも確認しましたが、実際に財源が浮き待機児童対策に充てられるのは事実のようです。
ただし、読売新聞オンライン2段落目、「所得制限(夫婦と子ども2人の場合、年収960万円未満)を超えても」の「未満」を消してもいいのではないか?というのが私の意見です。

回のまとめ

内容を理解している人が書いている場合、「わからない人にとってわかる内容になっているのか」を判断することは難しいと思います。だからといって、その判断を放棄している風潮が広がると、フェイクニュースが広がる土壌ができてしまいます。それを防ぐ取り組みをしたいです。

今回この記事を書く過程において、報道機関(記者・筆者)によって注目点が異なっていることがわかりました。時間的制約などで読み比べるのは大変ですが、わかりにくい記事であれば、他の報道機関の報道に接することも大事だと思いました。

初回投稿記事の冒頭にある通り私には相談する仲間がいませんので、私一人で調査しました。万が一、私の解釈などが間違っていれば、コメントいただければ幸いです。

今回の決定について、ほかにわかったこと

最後に、他に報じられたことをまとめます。

・「世帯合算」は見送り。今まで通り、世帯の中で一番収入が多い人の年収によって決まる。
・政府はもともと、「世帯の中で一番収入が多い人の年収1100万円以上」の世帯への給付をやめるよう計画していた。
・1万円~1万5000円の意味:0~2歳の子どもがいる場合に1万5000円、3歳以上中学生以下の子どもがいる場合は1万円を受け取れる。ただし、第3子以降は3歳を過ぎても小学生までは1万5000円を受け取れる。
ただ1つの疑問点:「所得制限」ではなく「収入制限」なのではないか?「所得」よりも「収入」で決まっているみたいなので「所得制限」と名付けられた理由がよくわからない。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

参考文献(2020年12月15日参照)

・産経新聞

・東京新聞

・日本経済新聞

・読売新聞

・時事通信

・朝日新聞デジタル


※ 執筆(2020年12月15日)時点の内容です。


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