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ブラウン管

ふと目覚めると消したはずのテレビが
狭い部屋を照らしていた。

薄型テレビが普及した今では珍しいブラウン管だ。

煌々と光るその箱からは、抑揚のない電子的な声で
まるで意味の無い言葉が永遠と流れている。

「……ーーー父親も母親も、醜悪な悪代官に操られているのだ。
土の中の螻蛄(オケラ)や蛙(カエル)こそ、この世の何にも代え難い偉大な存在である。彼らに清き一票を。清き一票を。」

…何一つわからない。
だが、はて、おかしなことにその液晶から目が逸らせない。到底理解のできない言葉の羅列を脳みそに書き込むことをやめられない。それら全てを遮断する、電源ボタンを押すことすらできない。


窓の外の植木鉢が浮いたようだ。
植木鉢とは浮くものだっただろうか。

どこからともなく祭囃子が聞こえる。
こんな深夜に祭りなどやっていただろうか。

ああ、うるさい。こんな時間に選挙カーが走り回るなんて。
選挙は先日終わったのではなかっただろうか。


そもそも自分の部屋にブラウン管テレビなどあっただろうか。
これは、なんだ。


いやいや、あったではないか。
最近リサイクルショップで買ったのだ。

ほんとうに?





は、と短い息を吐いた瞬間、
真っ黒な液晶に自分の顔が映っていた。
しかも最新の薄型テレビ。

昨日友人と大手家電量販店で買ったものだ。
なら、さっきまでのブラウン管テレビはどこに消えた?

指先が震えたが、頭だけは恐ろしい程に冷静である。

昔、祖父から聞いた話を唐突に思い出す。

「ブラウン管テレビの中身を知ってるか。
あの箱の中には真空と真鍮で作られた
無限の宇宙が広がっているから取り込まれたらお終いだ。」




そうか、あれが宇宙だったか。
いっそ取り込まれてお終いになりたかった、なんて頭の隅で思いつつ、数時間後の仕事のために布団にもぐり込んだ。

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微熱に魘されながらの頭に浮かんだストーリー?でした。
言葉の正しい意味とか使い方は置いておいて適当に書き出してみました。
なので適当に読んでください。深い意味はないです。

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