蒲公英
「綿毛をせーので吹き飛ばしてさ、
どっちが遠くまで飛ばせるか勝負しよう?
で今度、芽吹いたたんぽぽを探しに来て答え合わせしようよ」
そんなの、どっちが飛ばした種か見分けられないし、ましてや、僕たちが吹いた分じゃないかもしれないし。
「じゃあ君は白いたんぽぽにして、
……勝敗は、花占いにする?」
もはや勝負ですらないじゃないか、と言おうとして思い留まる。これは理屈じゃないのだ。
せーの。
口をきゅっと尖らせて息を吐く
君の横顔はどうしようもなく綺麗で。
晴天の空に陽を受けた綿毛がきらきらと舞う光景を、
僕は未だに忘れられない。
あの時の種は僕にしっかりと根付いてしまっている。
君の勝ちだね、
僕はこれを抱えて何処までも行くから。
空洞の茎が支える切先には、真白な空っぽの先端が残った。
そのクレーターを何で満たそうか。
蒲公英(たんぽぽ)
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