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【栄養士さんに聞いてみた! 〜栄養素編〜】第4回:脂質ってからだにいいの?

こんにちは。KIDS SNACK LABです。KIDS SNACK LABは、子どもの食生活のあり方について、日々研究を重ねています。本企画は、KIDS SNACK LABの研究員が、子どもに必要な栄養素について栄養士の渡辺友美子さんにお話をうかがい、子どもの健やかな食生活のヒントを得ていく連載です。第4回目では、栄養素としての脂質の役割、身体にいい脂質の種類、おすすめの摂り方などについて、お話を聞きました。

【プロフィール】栄養士 渡辺友美子さん
栄養士として病院や社員食堂で働いた後、フリーの栄養士として食や栄養に関する情報発信を続け、インスタグラムのほか、YouTubeチャンネルも開設。週末モデルとしても活動している。
Instagram:https://www.instagram.com/yutanpiyo/
TikTok:https://www.tiktok.com/@yutancooking

脂質ってなんだろう?


――今回は、脂質についてお話をお聞きできたらと思っています。まず脂質は、どんな栄養素なのでしょうか。

渡辺さん:炭水化物、タンパク質と並ぶ、三大栄養素のひとつです。1gあたり約9ckalあり、三大栄養素の中でも最も高いエネルギーを得ることができます。活動量が多い子どもにとっては、いちばん効率の良いエネルギー源といえます。でもその分、摂る量や、摂る種類について、気を配りたい栄養素ですね。

――活動的に過ごすには、重要な栄養素ということなんですね。例えば過度なダイエットなどで、子どもに脂質が不足すると、身体にどんな変化が起こりますか?

渡辺さん:脂質が不足すると、エネルギー不足によって体力が低下してしまったり、肌荒れ、便秘、また発育不全を引き起こすケースもあります。わたし個人の経験談ですが、高校生の時に過度なダイエットをした際には、生理が止まってしまったり、肌が荒れたり、どれだけ寝ても眠い感覚が続いていました。

――それはとても深刻な症状ですね。では一方で、肥満傾向にある子どもが脂質を摂りすぎてしまうと、どんな影響があるのでしょうか。

渡辺さん:文部科学省が発表した2021年度の学校保健統計調査によると、標準体重より20%以上重い肥満傾向の子どもの割合は、幼稚園児で3.66%、小学生で5%から10%台、中学性は9%から10%台、高校生は8%から9%とされています。そういった子どもは、脂質を摂りすぎるとメタボリックシンドロームや生活習慣病になってしまう可能性があります。また、子どもの頃の肥満が原因で、大人になってから大腸がん、乳がん、前立腺がん、冠動脈疾患などのリスクが高まってしまう側面もあるため、標準体重を大きく上回っている子どもは、普段の食事から脂質の摂りすぎないよう注意が必要です。

――具体的には、どのようなものを食べ続けてしまうと、「摂りすぎ」の状態になってしまうのでしょうか。

渡辺さん:ファストフードや油で揚げたスナックを頻繁に食べる食生活を続けていると、糖質の摂りすぎと同時に、脂質の摂りすぎを招きやすくなります。ただ、標準的な体重の子どもたちは、基本的にエネルギーをどんどん摂取した方が良いので、普段の食事からの摂取量を厳密にチェックする必要はないかなと思います。

脂質にも「摂りすぎ注意な脂質」と「積極的に摂るべき脂質」がある


――脂質にはどんな種類がありますか?

渡辺さん:脂質を構成している「脂肪酸」には2種類に分けられます。ひとつは飽和脂肪酸。固形で、お肉や乳製品、動物性のものに多く含まれているため、肥満気味の子どもは摂りすぎないよう注意が必要です。ただ、飽和脂肪酸の中にも消化吸収がよく、体に脂肪がつきにくい種類もあります。代表例としては、ココナッツオイル、パーム油、ヤシ油などですね。これらは「中鎖脂肪酸(MCT)」と呼ばれるもの。脂肪の蓄積を抑えてくれたり、運動能力を高める効果が期待できるんです。最近は「MCTオイル」という名称で販売されるようになってきていますね。

脂肪酸の種類

渡辺さん:もうひとつの不飽和脂肪酸は、常温で液体の植物油や魚に含まれていることが多いですね。不飽和脂肪酸には、DHA、EPA、オレイン酸など、健康的な生活を送るために必要な成分がたくさんあるんです。

――DHAは聞いたことがあります。

渡辺さん:DHAは、子どもの脳の発達に貢献し、記憶力、判断力、読解力の向上効果があります。いわし、さば、あじ、さんま、まぐろ、かつおなどの青魚や、うなぎ、なすからも摂ることができますよ。体内で作り出すことができず、食事からの摂取が必要なので、青魚は、お子さんにも積極的に摂ってほしい食材です。

――「魚は頭にいい」と言われるのは、脳の発達に影響を与えるからなのですね。EPAを摂ると、どんな効果が期待できますか?

渡辺さん:EPAも食事から摂取することで得られる脂肪酸で、アレルギー症状を緩和する効果や、感染症を予防する効果、精神を安定させる効果なども期待できます。EPAが含まれる食材もまた、いわし、さば、あじ、サンマ、マグロ、かつおといった青魚に多いですね。

――魚って体にいい脂質がたくさん含まれているんですね……! オレイン酸についてもぜひ教えてください。

渡辺さん:オレイン酸はDHAやEPAと違って、体内でも作り出すことができますが、腸を活性化させ、便秘予防になったり、悪玉コレステロールを減少させるなど、摂るとうれしい効果があります。オリーブオイルや、ココナッツオイル、米油、食材であればアボカドにも含まれていますよ。

子どもの発達に影響を及ぼす「トランス脂肪酸」には注意!


――では、不飽和脂肪酸を意識して摂るようにすればいいのですね。

渡辺さん:ただ、不飽和脂肪酸の中でも「トランス脂肪酸」にはちょっと気をつけてほしいです。マーガリンやショートニングの製造過程で、水素添加などの加工をすると、発生することが多い脂肪酸なのですが、子どもの発達や、脳機能に悪影響を及ぼすリスクが高いと言われていて……。近年は、トランス脂肪酸が発生しにくい手法で、マーガリンやショートニングを製造する技術が開発されているようなので、きちんと意識して選択をし、リスクを避けたいところですね。※

身体にやさしい油を使った、おうちでできるおやつも


――身体にいい油を意識的に摂れるようにするために、どんなおやつを選ぶとよいでしょうか?

渡辺さん:わたしも普段からおやつを食べるのですが、アーモンドやくるみ、ピーナッツなどのナッツ類を、てのひらに収まる分だけ食べるようにしています。身体にいい脂質も、摂りすぎてしまうとニキビができやすくなったりと、肌の油分が多くなってしまうので……。お子さんの場合でも、まだ身体がちいさいので、やはりてのひらに収まる分を「食べていいおやつの量」として基準に持つのがいいと思います。

――身体によくても、摂りすぎには注意した方がいいのですね。渡辺さんは普段どんな油を使っていますか?

渡辺さん:お料理などの日常使いには、米油を使うことが多いですね。味や香りが気にならず、どんなジャンルのお料理にもよく合います。お菓子作りに使うなら、ココナッツオイルが使いやすいですよ! たとえば、ココナッツオイルを引いたフライパンに、薄く切ったりんごを並べて焼き色をつけ、最後にメープルシロップとシナモンをかけるとアップルパイみたいなデザートになります。手軽にできるので、ぜひ作ってみてください!

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今回のお話から、脂質は身体のエネルギーを補うために必要な栄養素であること、積極的に摂りたい脂質と、摂りすぎを避けたい脂質があるということがわかりました。魚を一日のどこか一食に取り入れてみたり、日常的に使う油を、オレイン酸が摂れるオリーブオイルや、米油に変えてみるのもいいかもしれません。

次回は、ビタミンCが子どもにどんな影響を与えるか、日常的に摂る方法などについて、幼児食アドバイザーとしても活躍し、二児の母でもある栄養士の川田麻実さんにお話をうかがいます。


※編集部注:KIDS SNACK LABのお菓子では、使用するすべての油について、トランス脂肪酸が含まれている量を確認し、子どもに安心して与えられる油を選んでいます。


取材・文=ひらいめぐみ 編集=KIDS SNACK LAB編集部

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