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子どもの食物アレルギー【実践編】

今回は食物アレルギーのあるお子さんとそのご家族へ、私たちができることについて触れていきたいと思います✏️

食物アレルギー❎乳幼児精神保健

乳幼児精神保健は「乳幼児が安全で安定した人間と環境の関係性の中で生起する健康な社会・情緒的発達を意味し、広義には、乳幼児の健康な社会・情緒的発達を保持・促進するための活動を含む」ものとされています。

また、乳幼児期の親子の関係性を促進するために考案されたBarnard Modelというものがあります。
そこでは、子どもと養育者、環境が重なり合い、相互作用すると示されています。
乳幼児期の発達は著しく、身体的・心理的・社会的にも多様な成長をする時期であり、重要他者からの適切な養育を必要とする時期であるとされています。

Barnard子どもの健康に関するアセスメントモデル

『Barnard子どもの健康に関するアセスメントモデル』

ここでお伝えしたいのは、食物アレルギーのあるお子さんに限らず、子どもを取り巻く社会、地域も一緒になってお子さんと家族を支援していく必要があるよね、ということです🌱

さらに掘り下げていきます!

除去食と日常生活

前回も触れましたが、食物アレルギーの診断を受け、食物除去食が始まると、多くのママがお子さんの誤食の予防と緊急時の対応に迫られます。

毎日の食事にも、原因の食物を使わないメニューを考え、食材を調達したりといった生活になります。
また、混入を防ぐために他の家族の調理をする前にアレルギーのお子さんの食事を作り、その後に他の家族の食事を作るなど、1回の食事でも2段階以上の調理が必要になります。
さらに、食物アレルギーのお子さんの食事を準備する際には、調理器具や食器類を入念に洗浄したり、拭き取ってから調理をするなどといった負担もあります。
乳幼児は自分で自分の食事か、他の家族の食事か判断できないこともあるため、配膳時も誤ってお子さんが口にしてしまわないかなど、注意を払うタイミングも多くなってきます。
除去食による栄養面の充足のために、代替食品を用いたりといった工夫も求められます。

こうしてみると食物アレルギーのあるお子さんとご家族は、常に誤食によるアナフィラキシーへの不安や栄養の工夫の大変さとともに生活していることが想像できるのではないでしょうか?
食事やおやつなどの日常の楽しみだけでなく、外食も難しくなるため、レジャーや旅行に行きにくくなることにもつながる可能性があります。
また、同じ家庭で育つ他のきょうだいに対しても同じことが言え、家族全体の生活に大きく影響しています。

幼稚園や保育所、学校での対応

医師からの指示書や保護者からの申し出で除去食の対応をしている施設が多くなっています。代替え食についてはまだまだ実施できていない施設もあるようです。
また、遊びの場面でもアレルゲンと接触する可能性はあります。
小麦粉粘土や大豆の豆まき、牛乳パックを使用した制作活動なども、場合によってはアレルギーの危険が伴うことがあります。

養育者、特にママの中には、他のお子さんと異なるメニューを食べることや食器やトレーが異なること、同じ遊びに参加できないことに「かわいそう」と感じる方もいらっしゃるかと思います。同時にこのような経験が、遊びや他のお子さんとの相互交渉などの面、お泊まり会や調理実習などで、子どもの発達に影響するのではないかという懸念を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
どんなに誤食や誤接触の対策をしていても、集団の生活の中で完全に防ぐことは難しいため、予防策やどのような症状が出るのか、アレルギー反応が出現した時の対応について養育者となるご家族や施設側で共通認識を持てるよう、情報共有をしていく必要があります。
施設の状況によって対応できる範囲は異なるため、相談しながらできる範囲で互いに無理なくやっていけるといいですね。

食物アレルギー❎子どもの心理社会的発達

上記でも少し触れたように、養育者であるママたちにとって、食物アレルギーがあることによる、お子さんの成長発達への影響は気になるところではないでしょうか。

食物アレルギーのあるお子さんにとって、食べ物を介した他のお子さんとの相互交渉において配慮が必要になります。

例えば、他のお子さんや他のご家族に、あるお菓子を「どうそ!」と言われた時に食べられないことを理解してもらう必要があります。
しかし、お子さん自身が自ら伝えられるようになる前、特に言語の発達途上にあるお子さんは自身でうまく説明できないことがあります。
お子さんの認知的・言語的発達段階に合わせて、「アレルギーで食べられない食物や食品がある」ことを伝える方法を検討する必要があります。

食物アレルギーサインプレート
お子さん自身による説明を補助してくれるものに『食物アレルギーサインプレート』というものがあり、ワッペンのようにつけることができ、幼児期のお子さんでも使用でき、周りのお子さんにも理解しやすいツールとなっています。

乳幼児期の食物アレルギーは成長とともに耐性獲得され、食べられるようになることが多いです。
一方で、学童期以降にも乳幼児期とは異なる食物によってアレルギーが発症するケースもあります。中学生、高校生となっても配慮が必要なこともあるため、お子さん自身が自分の状況について理解し、対処できるように医療者やご家族、お子さん本人で一緒に考えていきましょう。

食物アレルギーのお子さんの養育者の心理

お子さんにアレルギー症状が出現した時は、場合によってはアナフィラキシーショックのように循環不全や意識の低下など緊急事態になることもあります。
そういった危険や不安と隣り合わせの生活の中で、周囲からの「食べさせた方が良くなる」「神経質だ」などといった誤解を受けることもあり、周囲の理解が得られずに社会的に孤立してしまうこともあります。

特に、これまでの研究でアナフィラキシーになったことがある場合や複数品目のアレルギーがあるがある場合はQOL(生活の質)を低下させるという報告があったり、アドレナリンの注射薬の処方をされている方がされていない方よりもQOLが低いことがわかっています。

乳幼児期の食物アレルギーは成長とともに原因食物への耐性が獲得されることが多い一方で、治療が長期化し、なかなか除去食解除とならない場合もあります。
その場合は、養育者の負担やストレスも持続することが予測されるため、鬱などの精神疾患や不適切な養育につながる可能性があるため、周囲の理解や協力が大切になります。

食物アレルギーはいずれ耐性獲得により、食べられるようになる可能性が高いですが、それまでの間、日々の配慮を継続しなければならない養育者や家族の負担はどうしても大きくなってしまいます。また、お友達や周囲の大人との関わりの中で、アレルギーを持つお子さん自身の心理社会的・身体的発達への影響も懸念されます。


社会的な理解や協力が、食物アレルギーのあるお子さんやご家族の支えとなるため、周囲の方々の思いやりが増えていくと嬉しいです🍀

長くなりましたがありがとうございました。

参照:
厚生労働科学研究班(海老澤元宏)(2014):食物アレルギーの診療の手引き2014
子どもの食と栄養ー健やかに発育する食生活をめざしてー 医歯薬出版
小児看護学概論・小児臨床看護総論 医学書院
弓気田美香(2017):食物アレルギー児の看護,小児看護40(1)pp112-115.へるす出版


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