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病気の子どものきょうだい支援②

前回は、「きょうだい」の存在についての紹介と、彼らが抱いているかもしれない感情はどんなだろうかという提起をしました。
今回は、実際にあったとされるエピソードから具体的に想像していこうと思います。

以下の内容は、私も学生時代に目にしたものです。
小児がんで入院した弟に付き添い、兄の誕生日にケーキを用意できなかった母親のお話です。
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お兄ちゃんの誕生日も弟の治療で夜8時まで病院に缶詰だった。朝から保育園に行き、夕方おばあちゃん家に引き取られたお兄ちゃんは、「ママが絶対ケーキを買ってきてくれるんだ」と嬉しそうに私の帰宅を待っていたのだという。でも、私はお兄ちゃんの誕生日を覚えてはいても、弟の病気への受け入れもまだできておらず、それどころではなかった。ましてや、寝かしつけるまでほぼ病院でつきっきりだった私にケーキを買う余裕はなかった。
「ただいま、保育園のお迎えありがとう・・・」とおばあちゃん家のドアを開けた私に抱きついてきたお兄ちゃん。
「ママどこに隠しているの?ねえねえ、ぼくの誕生日ケーキは??」
「こんな時間になったのにないよ。休みの日になったらみんなでお誕生日会をやろうね」と言う私にまだ
「うそでしょ。どこかに隠しているんでしょ?」とニコニコしながらまとわりついていたお兄ちゃんの顔がみるみる変わり、号泣し始めた。
幸いおばあちゃんがケーキを買ってくれていて、そのケーキでお祝いして、なんとかその場は収まった。弟の病気がわかって以来、お兄ちゃんの対応では色んな失敗をしてきたけれど、この日の失敗だけは一生忘れられない。
闘病生活のフォローも待ったなしだけど、普段、我慢ばかりしてもらっているきょうだいのイベントだけは、大事にしてあげなくてはならないことを思い知った。お兄ちゃんにとっては何でもよかったのだ。コンビニのケーキでも何でも。母を求めているその時期に「ちゃんと見ているよ。感謝しているよ。あなたのことも、かけがえのない存在なんだよ・・・」と一番伝えられるのが、お兄ちゃんにとっては誕生日だったのだ。つい、元気だから、あとでフォローできるからと、きょうだいを後回しばかりにしていると、とんでもないつけがやってくる。タイミングをつかむのはとても難しいけれど、それからは、お料理教室や日帰りスキーでお兄ちゃんとの時間も頑張ってとるようにしている。
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このようなエピソードはたくさんのママたちが経験すると思います。
一つ言いたいのは、ママたちが悪いんじゃないです。誰も悪くないんです。病気のお子さんのこともお家で待つきょうだいのことも、家事やお仕事も、手一杯になって当然です。
だからこそ、ママたちやお子さんたちの力になれることがないか、医療現場のスタッフは病棟では見えない家族の存在にも関心を持ち、その家族を含めての治療や生活であることを意識しなくてはなりません。
基本的には、患者さん中心のケアですが、きょうだいもその円の中心にいることを覚えておけるといいですね。
「どうしたらいいか」を一緒に考えていく姿勢がまずは求められています。

ネガティブな内容が多くなってしまいましたが、決してそんなことはありません。次は「きょうだい」への影響にはどんなものがあるのか、その後はどんな支援ができるのか、見ていけたらと思います😊

興味を持っていただけた方は雑誌「小児看護」2020年9月号に特集が組まれているので、よろしければご覧ください✨


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